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2012年6月11日 (月)

異国での親切

今、ずっと昔に行ったスイスの旅のホームページを書いているところです。三週間の旅もやっと17日目までこぎつけました。

この17日目には トゥーン湖に面した イーニゲンという村の教会を訪ねたのですが、教会の 場所が分からなかったところ、土地の方が車で連れて行ってくださったことを書きました。

そこで今日はもう一つ、 とっておきの嬉しい親切 を書こうと思います。

94年の北欧の旅、デンマークでのことです。

デンマークの生んだ思想家に ゼーレン・キェルケゴールいう人がいます。このひとの著書に 『人生行路の諸段階』 というのがあります。それに 八道の隅 というのが出てきます。森の中の八本の道が交わるところです。写真も載っていました。 コペンハーゲンから北上して、フレデリクスボー城という有名なお城のある ヘレロズまで 国電で行き そこで のりかえて、幾つ目かの駅がその森の中にあるのです。

日本のスカンディナビア観光局に行って、その駅には件の 八道の隅 に行く地図もあることを確かめました。

コペンハーゲンで一日フリーの日、朝早く 意気揚々と出かけました。国電に乗ります。ヒレロズで乗り換えて、念のため前に座っている 女子大生とおぼしき人に 「この電車は ○○、、に行きますか?」 その人は「? 聞いてあげましょう」 と丁度回ってきた車掌に聞いています。その車掌は

「あなたは本当に○○、、に行きたいのか」 私「イエス」

何やら言っていますが、私はうなづきながら、イエス、イエス。車掌はニコニコして大きくうなずきます。

件の駅について降りました。 電車がいってしまったところで見まわすと 無人駅 !!駅員はいません。 案内図があるはず、と思って掲示板をみると、なんと無残にも破られていて端っこが残っているだけ。 困った、戻ろう、そう思って ホームの壁の時刻表をみると、朝と夕方以外この駅に停まる電車はない。すべて通過するのです。

ハッと思い出しました。 停まります、ではなく 停めてあげよう と言っていたことを。 そうして 「ノーマンなんたらかんたら、、」と云っていた。 

つまり 「無人駅で本当は停まらないのだけれど停めてあげる、それでもいいか」と云っていたのです。

英語くらいと気軽に考えて、ただ 行きたい、見たいだけで来てしまった自分がバカだった。 この年の北欧は暑くて35度もある毎日でした。もう私はこの森で 日干しになって 死んでしまうのだ、 と泣きたい気持ちでしたが、 泣いても どうなるわけでもなし。 

車が一台通りすぎていきました。でも 森の中、 ヒッチハイクなんてダメ!

うろうろしていると、 線路沿いの道を 女の子と男の子と犬を連れた女性がやってきました。ずいぶん時間がたった気がしていましたが、 降りてから10分もたっていなかったでしょう。(下の写真は この時ではなく あとで 撮ったもの)

Grisb01_2

急いで駆け寄って、このあたりに電話はないか? とききました。 タクシーをよんでほしかったのです。 「ここには電話はない。家にいらっしゃい」「あなたは どこへいきたいの?」「八本の道の交わるところ」「お休みの日は人が来るけれど平日は殆ど人はいないのよ」「昔行ったけれどそこには石がある」のよ。この石、という言葉 シュテーレン私が首をかしげると、道の小石を拾って投げあげて見せる。お互い英語はあまり上手ではないものの、何とか会話を成り立たせながらついていきました。

よく耳をすますと 車の行きかう音が聞こえます。 線路をわたってしばらく行くと幅の広い 自動車道路があったのです。 そこを越えていくと 森の中に点在する(別荘地なのでしょうか、このお子さんたちも 夏休みなのでおじいちゃまのおうちに遊びにきているのだそうです) 何軒かの家があります。

道路を渡ってすぐ近くの家に入って行きました。 まあまあと招じ入れられ、出ていらした おじい様と彼女は話をしています。 私はもう森は見たのだから、そこまで行くのはあきらめてもいい、と考えていたのですが、地図をみせられ、「途中まで送りましょう」とおっしゃって下さいました。

日が 高くなって ジリジリ照りつける中、 おじい様と坊やとワンちゃんが 駅をとおりすぎて 500m?いや、 もっと?(いい加減です)ほど行った曲がり角までおくってくださいました。 「この道をまっすぐいけば、八本の道が交わるあります」

 その地点までの距離が あいまいなのです。4キロとか云っていました。 1時間? 行くのをやめたくなりましたが、 せっかく送ってくださったのだから、 と走るように歩きました。 途中ですれ違ったのは 乗馬姿の二人連れだけ。ニコニコ、ハロー。ともかく 4キロは 大変といそぎます。途中に、道しるべ。Grisb02_2
元気づけられなおも急ぎます。Grisb03
おお、見えました。私の読んだ本の写真には この石は ありません。 この旅行の時の30年近く前に読んだので変わってはいるのです。
Grisb07_2


近寄ってみます。Grisb04_2

嬉しくなってセルフターマーで記念撮影したら、、。 切り取ったのではないのです。 足しか写ってなかったのですが、 これでも 証拠写真です。恥ずかしいですけれど、、。一度自転車に乗った少年がやってきてこちらを不思議そうにみて、回りを二周程して、 森の奥へと消えていっただけ。 他にだれも来ません。(シャッターを押してもらえる人がいなかったのです)

Grisb05
こうして本を読んでから29年目にして念願の地に足を運ぶことが出来ました。 

さて、帰ろうとして ??? 嬉しがってぐるぐるまわっていたので どの道から来たのか分からなくなってきました。これ、と思う道を 行って石を見ると 最初に目にしたのと、位置がずれているのに気づいて、戻って別の道を行きました。 

行きにお別れしたところから 時間をはかっていました。 4キロはなかったようで丁度20分でした。 それでずんずん行くと、上写真の道のところで、みると、道は30度くらいの開きで二股にわかれているのです。 どっちを行こう。ここまでで、10分、 あと10分こちらを行ってダメなら戻ろう、と急ぐと、遠くに列車の走る音。そうして 送ってくださった道にぶつかるところに出ることができました。丁度そこではひと組のカップルが ピクニックテーブルを広げ始めたところです。もう安心。手を振って道を曲がり、線路、道路 を横切り、来る前に教えていただいた、例の方の家の近くのバス停到着。 

で 時刻表をみていると、待ち構えたように、あのおじい様が走ってきました。ともかく家にいらっしゃい、 というわけです。 おばあさまがお客様をなさるとかで テーブルの上には 焼いたばかりのホールケーキがいくつも 。飲み物もいろいろ、 さあ召し上がれ、 というわけです。でも お客様用ですから、遠慮してジュースだけいただきました。 そうして 「ゲストブックに何か書いて」 です。 私にとってはまさに 天の助けだったのですが、 彼らにとっても 日本人は珍しくて ビッグニュースになるのかもしれません。 住所も交換しました。 お庭で写真も撮りました。(最初の写真は このときに撮ったもの)

おばあさまも出ていらしてGrisb06

お土産にケーキを何切れか頂いて、ご厚意に甘えてヒレロズの駅まで車で送っていただきました。

駅でお別れして切符を買って時刻表を見るとなんと二時間待ち。 それで タクシーで 海辺のフレムベックまで 行き、 スロッテン・クロ(クロはイギリスでいうとインみたいな宿や兼レストラン)で昼食 ルイジアナ美術館、 さらには クロンボー城へ と 行ったのです。

日本に帰って もちろんお礼状を書いて 折り紙や剣玉など思いつくものをいくつかお送りしました。 お返事に≪あのあと、電車がないのに、気付いてフレデリスクボー城を案内しようと戻ったら、あなたはもういなかった≫とありました。

思い出話で退屈されたとおもいますが、 どこかに記録として残しておきたかったのです。

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コメント

kikuko様
ロマネスクの教会は 辺鄙な場所にあるので、車に乗せていただけると本当に助かりますよね。 バスに乗っても 乗客が教会への行き方をワイワイ教えてくださったり、 こういうことが旅を心豊かにしてくれます。 デンマークの方とは しばらくは クリスマスカードを交換したりしていましたが、いつの間にか途絶えてしまいました。 あのお子様たちきっと立派な社会人になられたことでしょう。

素敵なお話ですね。私はイタリアばかりですけど、あちこちで車で送っていただいて、胸を熱くいたしました。最初はポンポーザの修道院、それからカステルフランコ・ヴェネト(ジョルジョーネの絵を見にいったとき)、ナポリ郊外のカセルタ・ヴェッキア、ミラノ郊外のアリアーテ、オルタ湖、最後はaliceさんとご一緒したパロンバーラ・サビーナ。イタリアの方のご親切に感動し、そのときのことは終生忘れることはないでしょう。

お嬢様がおっしゃるようにキリスト教徒のホスピタリティ精神はとても暖かいと思います。こういういいお話をうかがうと心が洗われますね。ありがとうございました。

Maria Clara 様
小柄な東洋人女性ということもあるのかもしれませんけれど、海外で親切にしていただいた経験はよくあります。 四つ角で、ちょっとお散歩どちらに行こうかな?と思案している時ですら、「Can I help you」と声がかかったこともあります。 家にあげ、ふるまったりするのは、キリスト教国ではホスピタリティ精神が根付いているから、 と娘は言っています。
 

異国で途方に暮れた気持ちを思い、胸がつまりましたが、ご親切な方にお会いできた喜びは何にも代えがたいですね!!「八道の隅」に行くことができて、また無事に帰ってくることができて本当によかったですね。

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