『低地』 ジュンパ・ラヒリ 著、 『灰色の輝ける贈り物』 アリステア・マクラウド著
実は21日~ 26日まで また入院していました。 21日夜 急激な腹痛。 この前の盲腸よりももっと激烈でどうしようもなく主人があわてて救急車をよんで この前の病院へ。
丁度5時間後に痛みは治まり(その間強力な痛み止めを二本)。 腸を休ませるということで、三日間絶食、点滴。 血液検査も異常なし。CT, 心電図、レントゲン、造影剤いりCt、胃カメラ兎も角すべて異常は認められず 入院後も痛みは出なかったので退院した、という次第です。人間ドックに入ったと思うことにしました。
そういうわけで痛みがなかったので本は読めました。絶食なので、食事どころか、お茶も飲めない状態(不思議とおなかはすきませんでした。むしろ胃腸が空っぽ、というのはとても快適でした)で、本がなければ時間のうめようがない数日間でした。
丁度前日買っておいた『低地』 を持ってきてもらって読み始めました。(読みでのある分厚いもので良かった!!)
『低地』 ジュンパ・ラヒリ著 新潮社クレスト・ブックス

著者はベンガル人を両親に持ち、 ロンドンで生まれたが幼少時アメリカに移住、この小説のアメリカ側の舞台ともなる ロードアイランド州に住んでいたそうです。
クレスト・ブックス は 表紙がいい、帯を外すと

著者の両親の出身地であるカルカッタがインド側の舞台です。
カルカッタ郊外に住む仲の良い兄弟。 兄はじっくり考えて無茶はしないが弟はすぐに行動にうつすタイプ。裕福ではないが、 勉強することに意義を見出す家庭で二人とも優秀。 弟の方は社会の矛盾に目覚め革命運動に身を投じる。 兄の方はアメリカに留学。弟は反政府運動家として射殺されるが、この時すでに結婚しており、身重の妻が残される。弟の死の知らせで家に帰った兄スパシュは弟の妻に会うが、家風に合わぬ嫁であることを知る。このままこの家においておいくわけにはいかない、とアメリカに連れ帰り、この弟の妻と結婚。 妻は弟との間にできた娘を出産。 娘は実の父親と思って育つ。 しかし、妻は喪失感から逃れられないのであろう。大学院を出てカリフォルニアに職を得て家を出てしまう。 残された父と娘、 娘の選んだ道、父の新たな出会い。ここは いかにもアメリカ的といえようか。
インドとアメリカ舞台は行き来します。 前半は主に カルカッタの状況が描かれ後半はアメリカでの生活が描かれます。妻ガウリにスパシュと娘は翻弄されます。娘をおいて予告もなく家をでてしまうなんて許されないことですが、思索的で自分一人の時間がどうしてもほしいという気持ちが分からないでもありません。愛する人を死なせてその兄とぬくぬく安楽な家庭生活に浸るということは考えられない、それどころか、余計に亡き人を思い出してしまうのでしょう。二人から離れることしか 解決法はみつけられなかったのでしょう。でもそれは残された家族には非常に酷なことでした。 そういう状況の中で 娘なりに真摯な生き方を見つけていきます。重苦しい過去を背負った三人の生き方が丁寧に書かれていて、非常に読み応えのある一冊でした。
もう一冊読んだのは
『灰色の輝ける贈り物』 アリステア・マクラウド 著 新潮社 クレスト・ブックス

だいぶん前に、たしか 『彼方なる歌に耳を澄ませよ』を読んだあと買っておいた本です。 いつか 楽しみに読もうととっておいたような気がするのですが、読み始めて、ちょっと合わないと思って積読状態だったのかな、と思いました。
スコットランドからの移民の島 カナダのケープ・ブレトン島を舞台とする短編が八つ載せられているのですが、この地の男の仕事は鉱山の工夫か、漁師。どちらも体が資本の仕事です。 そういう粗っぽい仕事をする人々が描かれているからでしょうか、表現にというか使われている単語などに女性には抵抗のある言葉が使われているところが あって、途中でなげだしたくもなりましたが、他に読むものもない、ということもあって最後まで読みました。 読み通させる力のある作品であることは勿論なのです。
最初の一篇 『船』 と後半は上記のような点からすると抵抗なく読めました。
『船』
スコットランドからの移住当初は 漁業や工夫の仕事ばかりだったかもしれませんが世代が新しくなってくると子どもたちに教育を受けさせたいと考える人も多くなり、また都会への憧れも生まれてきます。
そういう最近の世相についていけない母リン、漁師でありながら本好きで息子には是非とも勉強をさせたい父、娘たちは都会に出てしまっている、そういう一家の話。
息子は一時は父の手伝いをして漁師の道を歩むつもりだったが、父の死後、学問の道を歩むことになり、中西部の大学講師をしている。
もしかしたら、作者はこの人物に自分を託すところが多少はあったのかもしれません。漁業を継ぐ息子も婿もいないまま島から出ようとせず、海を眺めて過ごす母を想い、父の最後につらい思いをいだく、語り手たる息子に。
ここに島の暮らしへのさまざまな想いが集約されていて、全体のプロローグにもなっているように思われました。
気に入ったものをあげると
『秋に』
しっかりものの母は、老いて役に立たず、飼料代がかかるだけの馬を売ろうとする。 馬への思いが断ち切れない父の抵抗、しかし現実的に考えれば妻の意に従うほかはない、馬も気配をさっしている。悲痛な別れ。
一番好きだったのは
『失われた血の塩の贈り物』
失われたロマンス、 少年ジョンを愛おしむ祖父母と島の情景、
読み終えると 薄墨色の海辺の景色が浮かんでくるような、 静かな作品。
『ランキンズ岬への道』 これもよかったです。
26歳の青年が故郷に戻ってきていて、 岬の先の崖の上にある祖母の家へと向かっている。
この崖の上にもはや ほかの人は住んでいない。 家族もなんとか麓の村へおりてきてほしがっているが、祖先が住んできた家をはなれようとしないのだ。そこで語られる 夫(青年の祖父)の死の状況、 祖母の三人の兄弟の死の状況、 それたとは全く異なった死に方をした(現代人的な)三人の息子の死の状況、も語られる。
この孫を愛する祖母は一緒に住んでくれるよう頼む。 しかし青年は病のため数か月の命、それを知った祖母、、、
私が好きだと思ったのはどちらかというと 少しセンチメンタルなところのある作品だと思います。
そういう作品にも、また個々のあげなかった他の作品の方により直接的に表れているのは、この島の人々の生き方、人と人が、人と自然が正面から向き合って、生きている。 特に何か意味を求めて、というわけではなく情況を受け入れるべく受け入れて全力で挑んでいる姿です。自然によって、 嵐や吹雪、鉱山事故、など不慮の事故によって 亡くなった人のことが多く語られます。 だからといって、都会で亡くなった家族の死より よりぞっとするか、などは言えないのです。
島に住む人たちの生活を淡々と描いているのですが、人が生きることの根源に迫る感動的な作品でした。









公の後継者で 740年に修道請願をたてたHildeligo Dagileopa の名が 上に刻まれています。





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