ライヒェナウ派写本
気が付くと 一か月ブログをお休みしてしまいました。なまけ癖がついてしまったようです。
この暑さ、体調のこともあり、病院以外お出かけ無し、といった寂しい状態です。
西ドイツロマネスク旅のホームページ作りはゆっくりですが、進めております。英語の資料もありますが、ドイツ語もあって大変。調べもの好きですので、辞書や家にある美術全集、関連書籍を総動員して楽しみながら作成中、といってもまだ旅行3日目ですが。
これといった話題もありませんので、作成中に発見した(大袈裟です。関心をお持ちの方は すでにご存じで、関心のない方はこれの何が面白い?といったことですが)ことを書いておきます。
ライヒェナウ島というのはドイツ、スイス、オーストリアの国境に位置するボーデン湖に浮かぶ島です。ツアーでは湖畔のコンスタンツという町に泊まりました。この町はイタリアはとドイツをつなぐルート上にある交通の要地です。その近くにありながら湖の小島ということで舟でしか渡ることのできない(現在は土手道がある)不便な場所、ということで修道院を建てるには都合がよかったのでしょうか?(私の推測)
島は温暖で作物の栽培にも適しています。
修道院はカロリング、オットー朝の王たちの庇護のもと発展。修道院では写本作りも盛んで ライヒェナウ派とよばれる素晴らしい写本が数多く作られました。
写本、というとケルト写本やスペインのベアトゥス本が有名で他のものにあまり注意をはらっていませんでしたが、今回ライヒェナウ派のものをとくと眺めてみて面白い発見(私にとって)がありました。
オットー3世の福音書 (ライヒェナウで100年頃作られた)
注目したのは柱頭の色です。 ロマネスクの教会は石の柱がたっていて柱頭ももちろん石でできています。石の色のままですが、時にはかすかに着色されていた痕跡が見られます。退色した青や赤。それで昔はこうだったと派手に着色されているものもあります。
これまで私はそこにうっすら残っている色からだけ想像したのだとおもっていましたが、写本に描かれた柱頭をみているうちに、実際このように柱頭が着色されいたからこう描かれて、これが参考にされたのではないかとおもったのです。
皇帝だから教会ではない? ↓これはライヒェナウではなくマインツ(?)の典礼本(11世紀 第2四半期)福音書記者マルコです。
面白くなってカロリング期のものもみてみました。
アダの福音書 トリーア 800年頃
ついでにカロリング朝とオットー朝の画風の違いも分かって面白いです。
れらの写真は 新潮社の 『人類の美術』シリーズから拝借、 このシリーズ、40年以上も前に出版されたもので、当然絶版。古本で見つけ次第、買いです。小学館より詳しいです。
買ってきた小冊子をみて面白いと思ったのはバンベルク黙示録 (1020年頃ライヒェナウで制作)から
下にあるのはマンディリオンでは?キリストの顔を写したものです。西側ですとこれは ヴェロニカの聖骸布になります。(ゴルゴダの丘へ歩くキリストの顔をぬぐったとされる布に顔が写ったとされて、茨の冠をかぶった図になりヴェロニカが拡げて持っている絵があります)
三月にビザンティン美術の旅に行ったせいか、ビザンティン起源では? と思われるものに敏感になっています。カロリング朝もオットー朝もビザンティン美術への憧憬があったとされています。
これもそうです。
聖母マリアの死の場面(1000ないし1020年にライヒェナウで描かれた)ヴォリュフェンビュッテルのエファンゲリスタール)
キリストが子供の姿をしたマリアの魂を天にあげようとしています。ビザンティンではポピュラーです。
こういうのもありました。
メダイヨン半身像が天にあげられています。(ハインリッヒ2世のペリコーペ写本 1012/1013年ライヒェナウ)
『ドイツ中世美術』 (300ページ)では
<かかるビュザンツ系図像を元にすれど、決定的なる革新を為せるものが、↑図で「マリアの魂」を抱きとるキリストの代わりに、マエスタ・ドミニを置き、マリア永眠にマリア被昇天のイメージを加味し、「大人」の姿の「マリアの魂」を2人の天使が天へと導くこととしている。この図柄が西方では徐々に主流となる。>とありました。
ここまでくるとマケドニア、スタロ・ナゴリチャネやバニャーニ村で見た「聖母のお眠り」と「被昇天」が同一画面に描かれている絵には一直線。
http://ykharuka.s113.xrea.com/2018biza/b2018top.html 9日目
西方で空に浮かんだような、被昇天のマリアの図が現れるのは13世紀末以降です。
興味はつきません。
こんなことに楽しみをみいだし過ごしております。あっ、ミステリ―も読んでいます。
« 『マチネの終わりに』 平野啓一郎著 | トップページ | 逗子へ(お墓参りとラ・マーレ・ド・チャヤのランチ) »
「文化・芸術」カテゴリの記事
- 世田谷美術館へ 倉俣史郎展(2023.12.19)
- 山種美術館へ(2023.11.10)
- 奥志賀へ 1 長野県立美術館(東山魁夷館)(2023.09.30)
- 根津美術館と国立近代美術館(2023.04.29)
- 舞台「アンナ・カレーニナ」(2023.03.05)
コメント