パラジャーノフ作品「ざくろの色」
知識豊富で啓発されることの多いkikuko様のブログにパラジャーノフという映画監督の作品をの感想が書かれていました。
寡聞にして知らない監督でしたが、素晴らしい映画のようで、観たい!とおもいましたが、吉祥寺は遠すぎです。たとえ近くてもこのご時世、映画館はどうも、、、。本当は映画館ではおしゃべりをしないから大丈夫なはずですが、心配性で、待合室の暗いのも苦手です。
そのうちユーネクストにあがったら、、とおもっていましたら、この映画館はネット配信もしている、ということでそのホームぺージを教えてくださいました。
https://www.uplink.co.jp/cloud/ 映画館は吉祥寺アップリンクです。
早速 4本パック購入しました。4本で5時間31分ですから、どれも2時間たらず、家庭でも集中しやすい長さです。
セルゲイ・パラジャーノフ(1924~1990年)はグルジア生まれのアルメニア人。ソヴィエト時代には反政府的言動ということで逮捕、投獄され重労働もさせられたが、当時すでに著名な映画監督として認められていたので西側の監督たちの抗議声明などもあって釈放されたいう経歴あもあります。
4作品のうち私はアルメニアに関心があるので、まず「ざくろの色」を観ました。
アルメニアに関する映画としては、アルメニア人を両親に持つアトム・エゴヤン監督の「アララトの聖母」をみたことがあるだけです。トルコによるアルメニア人虐殺を扱った作品で、事件のことをよくしらなかったので非常に衝撃をうけたました。
「ざくろの色」
18世紀の宮廷詩人サヤト・ノヴァの生涯をえがいたもので、パラジャーノフの傑作といわれているそうです。
1969年完成、上映されたが難解、退廃的と批判され、1971年には短縮版として再上映、しかし検閲によっていくつものシーンが削除されたそうです。
我が生と魂は苦悩のうちにある、というテロップが流れ 白い雪?の上に置かれた三つのザクロから赤い色がしたたり、次もナイフから赤い色がにじみ、同じメッセージが流れる。まずこの最初の映像からして意表をつくものです。
会話は殆どなく、時折下にメッセージが流れるだけです。そうして人の動きがギクシャクしているところが多いのです。活人画というか、人形劇のような感じもします。
赤、黒、白、青、くっきりした色合いで、もう素晴らしい映像美!最初からとりこになってしまいました。
(王妃はレースを編み、詩人は楽器を奏でます。お互いをみているようでまなざしを交わす、ということはありませ。 ただ奥の鏡?にキューピッドがくるくる回っているのが暗示的でした)
二人のいなくなった部屋、構成がいい!キューピッドは回転をとめている。
特に宮廷詩人となった場面は、詩人と王妃の顔のクローズアップが多いので気がついたのですが、この映画では目に表情が全くないのです。何も見ていない?それとも永遠を見ている?不思議な世界です。
これを最初に見ようと思ったのは教会が見られそうだからです。行きたいと思いつつ行ってない、もう行ける望みもないアルメニア。未練がましく、また旅行会社のパンフレットでアルメニア教会巡りのページをひとしきり眺めました。
アルメニアはローマ帝国より先にキリスト教が国教となりました。アルメニア正教と呼ばれるのですが、教義のことはさておき、教会建築、彫刻などが独特なのです。ハチュカルとよばれる十字架石も観たいものの一つです。
映画の後半では、詩人は修道院に入るのですが、修道院と修道院を出でてからの場面で教会や壁画などが観られるのです。もう嬉しくてぞくぞくしました。
ここは多分サナヒン修道院(10世紀)だと思います。
ハチュカル
フレスコ画
これは 「セバステの40人の殉教者」だと思います。検索の結果 アフタラ(Akhtala )城塞の アストヴァツァツィン(聖母)教会 と判明しました。
その他、アルメニアらしい聖書の写本の一ページ面出てきました。きっとマテナダランで、こういうのが見られるのだろうな、と旅への思いを掻き立てられました。
寓意的なところがあり、きちんと理解できていませんが、映像美が素晴らしいだけでなく、アルメニア教会もみられて、古い教会ファン必見と思いました。
おしえてくださったkikuko様に大感謝です。
ざくろ について
ザクロは中に粒粒が多いことから豊穣・多産のシンボルということはしっておりましたが、もう少し詳しくと思い、
『キリスト教シンボル図典』中森義宗著 東信堂 を開いてみました。
以下に引用させていただきます。
一つの実の中に無数の種が収められていることから、一般に教会を暗示する。
異教神話では、農業の女神プロセルピーナのアトリビュートであり、彼女が定期的に春になると地上に戻ってくることのシンボルとなる。春の開基と大地の回復ということの異教のシンボル的意義から、キリスト教美術における第2の意義、すなわち不死、そして復活のシンボルと解された。その実は豊かな果液を含み、香り高く、聖母子図では幼子の手に握られ、受難のキリストの横におかれる。また雅歌の「ベールの陰のこめかみはざくろの花」に基づき、その花が聖母とその純潔のシンボルとなることがある。またその無数のタネによって多産のシンボルとされる。
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素晴らしい映画をご紹介くださってありがとうございました。
特にこの 「ざくろの色」 が映像美といい、背景の教会といい、最高のすばらしさでした。
昨日、今日と残りの2本をみましたが、特にスラム砦の方はお手上げ状態、あらためて kikuko様のブログをよませていただきました、
これから映画をもう一度見直すところです。
パラジャーノフって本当にすごい監督さんですね。
投稿: yk | 2020年7月25日 (土) 23時07分
ykさま
わくわくしながら拝読しました。万人向きではないと思っていましたが、YKさまこそ最上の観客です。しかも豊富な知見と調査能力で、ちょっと探して諦めてしまった映像を加えた内容に感嘆しきりです。もう50年も前の作品に出会え、共感しあえることに喜んでいます。
アップリンクのクラウドで、最初は60本見放題というのをレンタルし、外出自粛の無聊を慰めておりましたが、こういう作品に出出会えて幸せでした。今日・明日は、最後の一本を見て過ごします。いつも出てくるザクロと羊、「スラム砦の伝説」のロシア語活弁がザクロをグラナーテと言っていたのが印象的でした。
投稿: kikuko | 2020年7月25日 (土) 09時50分