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« 本を二冊『道行や』 『朝鮮半島と日本の未来』 | トップページ | ロンドン・ナショナル・ギャラリー展 »

2020年7月 8日 (水)

『オルガ』 と 『しずかなみずうみ』

又おすすめしたくなるいい本を読みました。

ほかにも二冊読みはじめていたのですが、次に何を?とクレストブックスをしらべていて新刊の『オルガ』に気が付きました。書評は?と朝日デジタルを見ました。デジタル新聞の便利な点は簡単に検索ができるというところです。でもまだこの本の書評は出ていないようです。ところが土曜日の書評欄に出ていたのです。よさそう、さっそくポチリました。ところがアマ〇ンさんはご親切にも、これを買った人はこういうのも読んでいますよ、といくつもでてくるのですよねえ。そこに『しずかなみずうみ』が出ていました。絵本、ということには察しがつきます。でもなぜ?分からないながらもタイトルに惹かれてついポチってしまいました。

日曜日には二冊とも届きました。

まず絵本『しずかなみずうみ』山崎優子 絵と文 至光社

          20070701

25㎝×25㎝の大型絵本です。(びっくりするほど大きな段ボールで届きました)

山崎優子さんのサイトをみつけました。http://ehon-yokocho.com/
ここでこの本の絵が何枚か見られます。http://ehon-yokocho.com/portfolio/lake-skrbt

でも実際の絵本でみたほうがもっとすてきです。
広げてそばにおいておくだけで満ち足りた気分になります。

読みかけの本をおいて届いた方をすぐに読み始めました。

オルガ』ベルンハルト・シュリンク著 新潮クレストブックス

              20070702

ベルンハルト・シュリンクの作品は『朗読者』や『ゼルプの裁き』などのゼルプシリーズ他何冊か読みましたが、最近は読んでいなかったのでとびついたのです。期待は裏切られませんでした。

ポーランドのブレスラウの貧しい家に生まれたポーランド系ドイツ人のオルガの物語です。  

感想を書くためには小説のアウトラインを書く必要があるので書きます。細部がいいのと、本当の意味でのネタバレは書いていませんので、これからお読みになる方の妨げにはならないとは思いますが 先入観なしに楽しまれたい方は以下をお読みにならないでください。        

オルガは両親が病死したので、ポンメルン地方の祖母の家に引き取られます。そこで村の大農場主の息子ヘルベルトと恋に落ちるのです。しっかり者のオルガは教師を目指して勉強して師範学校へ、走るの大好きなヘルベルトは近衛連隊に入隊します。  

裏表紙

           20070703

ビスマルクが1884年南西アフリカ(現ナムビア)のドイツ人入植地をドイツ領に組み込だのだが、ヘルベルトはそこの防衛部隊に志願。そこではヘレロ族が蜂起しているので 鎮圧におもむいたのだがオルガは反対しました。

<兵士が祖国のために戦い、場合によっては命を落とすこもあるのは仕方がないと思った。然しアフリカは祖国ではない。そこで何を失ったというのか?ヘレロ族の一部が彼に何をしたというのか?> 

アフリカから戻ったヘルベルトは両親に結婚の許可をもとめるのですが、反対されアルゼンチンへ、戻ってくるとカレリアへ、シベリアへと 広大な世界へ旅を続けます。時折帰ってくるヘルベルトを待つオルガは隣村の農場の末っ子アイクを可愛がっています。

最後にヘルベルトは北極行を企て(1914年のことです)、帰ってこなかったのです。

ヘルベルトが遭難してもう帰ってこないことが確実と思われるようになってもオルガは教師をつづけアイクをかわいがり、ヘルベルトのことを話して聞かせます。<自分を過大評価して凍死した若者としてではなく、遠くて広大な場所に憧れた冒険家、決して諦めず、大変な辛苦に耐え抜き、非常に危険な旅を成し遂げた人物として。、、、アイクに対してはヘルベルトが自分をそうみなしていたように、あるいはそう見られたがっているように、伝えたいと思っているかのようだった。>

愛するヘルベルトという人物をアイクに教えておきたがっているようです。

才能のあるアイクはベルリン工科大学にはいって建築家になります。イタリアではたらくようになり、オルガもイタリア旅行をしたりします。ところが1936年の夏イタリアから帰ったアイクはナチの親衛隊にはいったのです。彼はドイツの生存圏をメーメル川からウラル山脈まで拡げることを夢想しているのです。オルガは言葉をつくして考えをかえさせようとしますが、アイクはききません。

その夏、オルガは発熱、そのために聴覚を失ってしまいます。53歳になっていました。教職は解雇されます。時代の考え方にあわなくなっていたので、当然だとは思ってはいたのですが。ブレスラウにいい聾学校があることをきいて、そこで勉強して読唇術を身につけ、得意だった裁縫の腕を生かして生計をたてることになります。新しい生活に順応していたのですが、1945年には彼女の住むシュレジア地方にまで戦争が達してきたので、この地を去ることにします。西へ西へ、エルベ川をわたりマイン川をわたり、ネッカー川のところまでやってきてそこに落ち着くのです。難民局から部屋をあてがわれて、そこでまた縫物仕事を始めます。(ふとゼルプの舞台マンハイムを思いました。後で分かるのですが、やはりマンハイムの隣町でした)

ここまで三人称で書かれていて最後に筆者フェルディンンドが顔を出します。

第二部はフェルディナンドが1人称で書くオルガとの交流です。フェルディナンドに過去を語りながら、オルガの後半生が綴られます。

オルガの愛した二人の男性、ヘルベルトとアイク。愛しながらも二人の生き方はオルガには納得できないものでした。
オルガは聡明で努力家で教師としての仕事をしながらも家庭の仕事(裁縫をし、ジャム造りなどもする)もきちんとする、地に足のついたしっかり者です。ところが二人の男性は広い世界を目指すのです。

<彼(ビスマルク)がドイツという国を御しきれない大きな馬の背に載せてしまった。それ以来、ドイツ人もあらゆることに偉大さを求めるようになった。、、、(中略)、、、。彼女はヘルベルトが胸に抱いていた植民地建設の夢に対しても、ビスマルクに責任があると感じた。北極についてのバカな思いつきや、生存圏についてのアイクの妄想や、二度の大戦も彼のせいだ。戦後の復興や奇跡の経済発展さえ、彼女はあまりにも大規模になりすぎたととらえていた。> 

<大きすぎる目標ーこれこそが、ヘルベルトやアイクがそのために破滅した原因だとオルガがみなしていることであり、ビスマルクに責任があると感じ、、、(中略)、、ぼくはオルガが、小さなこと、どうでもいいことや小市民的なことを賛美していると非難した。大きな理念の中には正しいものと、間違ったもの、いいものと悪いものがあり、彼女はその区別ができていないのだ、と。しかし、ぼくには彼女を納得させることはできなかった。>

オルガが高齢で事故死した後、フェルディナンド(当時は大学生)はオルガの遺品を引き継ぎます。後年フェルディナンドが退職し、妻を亡くしてから、オルガの思い出をたどるうちにノルウエーのトロムソに局留めでオルガがヘルベルトに送った手紙があるのではないかとトロムソまで出向き、手紙をてにいれます。またオルガの消息をもとめて訪ねてきた女性ジャーナリストとの話からも、分からなかったオルガの姿が浮かび上がってきます。第三部はオルガのヘルベルトあての手紙集です。
そこで全ての謎があきらかになるのです。新しい愛の物語も予感されます。

最後まで読者の気をそらせません。一気読み必須の小説でした。

オルガの考え方はシュリンクの考え方でもあるのでしょうか?

今グローバリズムの限界も云々されています。EU の行方も気になります。.

オルガの生きた時代は日本で言うと日清戦争から第二次大戦の終わり、明治半ばから昭和半ばです。
日本も膨張主義にはしり、失敗をした時代に重なります。そうして奇跡の復興を遂げたドイツが戦後日本の目標でした。

姜尚中の朝鮮半島は日本の膨張主義の犠牲となったとする本を読んだばかりですので、ついついこの時代の日本を含む東南アジアを思ってしまいました。朝鮮半島の人々を犠牲にしただけではなく日本人も犠牲になったことにもあらためて気づかされました。 

 

 

      


       

 

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コメント

Ayakoさま
おしらせありがとうございました。
 『階段を降りる女』早速注文しました。読むのが楽しみです。

『階段を下りる女』もとても面白かったです。緑の風さんがブログにアップされる日を楽しみにしております。今回は、ある文章(P22の13行目からの女性の言葉)が、腹にストンと落ちました。

Ayako様
アイクは もしや、とおもっていましたが、やはりそうでしたね。
最後のオルガの行動、地に足の着いた思慮深い行動をするオルガとしては意外でしたよね。 
でも自分から最愛のものを奪っていったのは ビスマルク、という思いはずっと消えることがなかったということなのでしょう。
フェルディナンドに大事にされながらも、思いは過去をさまよっていたのかと思うと、、、、。 
まあ、ここは シュリンクの歴史観もあるのでしょうか。

良かったです。
ヘルベルトやアイクは、読み進めながら、なんとなくそうなんだろうと想像していました。
愛情とは考えれば考えるほどよくわかりませんね。
オルガの最後の事故はオルガの選択らしくないように思いました。


aiai様
シュリンクは少し前には何冊か読みましたが、『階段をおりる女』は まだ読んでいないはずです。今度よむつもりです。『プラヴィエクとそのほかの時代』は読もうとおもって書評の切り抜きはしてありましたが、そのままになっていたので、今日注文、あわせて『戦場のアリス』もポチリました。読みかけの本が三冊もあってちょっと大変ですが、本をいろいろ教えていただけるのはとても嬉しいです。ありがとうございました。
ポーランドではなくロシアの作家リュドミラ・ウリツカヤの書いた『通訳ダニエルシュタイン』はポーランドのユダヤ人の話でしたね。
『粛清』ソフィア・オクサネン著 はエストニアの話。小国であるゆえにソヴィエト、ドイツに翻弄された人の話でした。
アイルランドですと『フールズ・オブ・フォーチュン』これはカソリックとプロテスタントとの争いのために狂わされた一家の話です。
『オルガ』は困難な状況でも理性的にしっかり生き抜いた女性の話です。
困難な状況の受け止め方はろいろ。やはり』小説は面白い!  
  

Ayako様
『朗読者』 もよかったですけれど、これもとてもよかったです。第一次大戦、 第二次大戦という大変な時代に消えた恋人を思いながら、しっかり 聡明に生き抜いた女性の話ですが、ヘルベルトと恋に落ちる夏の話など、いいです。
同じような読書傾向の方がいらっしゃると思うととても嬉しいです。

オルガ、気になっていました。シュリンクの「朗読者」は昔によんでいました。「階段を下りる女」も読んだ記憶があります。オルガは、ポーランド人とのことで、俄然興味が湧きました。つい先日ノーベル賞作家のトカルチェクの「プラヴィエクとそのほかの時代」を読んだばかりです。この本は、ポーランド南西部の架空の村の日常が不思議な雰囲気で描かれていました。ドイツとロシアに挟まれたポーランドの置かれた地理的な悲劇が伝わってきました。アイルランドとかポーランドのように他国の理不尽な圧迫を受けた国に惹かれます。「オルガ」早速ポチッと致します。昨夜読了した「戦場のアリス」は、第一次大戦で実在したアリスを題材とした小説です。エンタテイメントとしてもかなり面白く読めました。題材が実話なので、嘘っぽくないところも良かったです。(関係ない本なのにすみません)

こんばんは。いつも楽しく拝読しております。
オルガ、是非読んでみます。朗読者も、良い本でしたよね。
緑の風さん、また様々紹介してくださいませ。

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