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2021年9月13日 (月)

映画「ある画家の数奇な運命」

しばらく前にユーネクストに入った映画「ある画家の数奇な運命」を見ました。
「善き人のためのソナタ」を作ったドナースマルク監督の作品なのでマイリストにいれておいたものです。

主演女優は「水を抱く女」に出ていたパウラ・ベーアです。「善き人の、、、」では劇作家の役だったセバスチャン・コッホがべーアの父親役で出ていました。 

ある画家の数奇な運命」  

映画『ある画家の数奇な運命』公式サイト (neverlookaway-movie.jp)

   21091201
日本語のタイトルよくないのが多いですね。「水を抱く女」も「ウンディーネ」のままの方がいいと思いましたが、まだ許せます。でもこの「数奇な運命」はまあ、数奇な運命ではあるのですが、陳腐な感じがして作品の質を下げているような気がします。
原題は「Werk ohne Autor/never look away」作者なき作品 /決して目をそらすな。
このままでは意味が分かりにくいから変えたのだとおもいますが、観終わるともともとのタイトルの方がいいことは分かります。個展を開いた後、解説者の言葉からとられているのです。

私はお恥ずかしいことに知らなかったのですが、ゲルハルト・リヒターという現代美術界の巨匠と目されている人をモデルにしたものだそうです。

上記ホームぺージの解説から

ナチ政権下のドイツ。少年クルトは叔母の影響から、芸術に親しむ日々を送っていた。ところが、精神のバランスを崩した叔母は強制入院の果て、安楽死政策によって命を奪われる。終戦後、クルトは東ドイツの美術学校に進学し、そこで出会ったエリーと恋におちる。元ナチ高官の彼女の父親こそが叔母を死へと追い込んだ張本人なのだが、誰もその残酷な運命に気づかぬまま二人は結婚する。やがて、東のアート界に疑問を抱いたクルトは、ベルリンの壁が築かれる直前に、エリーと西ドイツへと逃亡し、創作に没頭する。美術学校の教授から作品を全否定され、もがき苦しみながらも、魂に刻む叔母の言葉「真実はすべて美しい」を信じ続けるクルトだったが―。

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1947年クルトは5歳くらいでしょうか。ナチスが勢いを増し入党を拒んだ父親は家も教師の職も失い、ドレスデンから45キロくらい田舎の親類の家に住んでいます。

ある日、美しい叔母とドレスデンの美術館に出かけます。美術館の解説者の言葉に当時の名地の絵画観がしめされていておもしろかったです。モンドリアンやミロ等に対しては当然否定的です。

でも叔母はこういう絵が好きなようです。

「目をそらさないで、真実は全て美しいの」never look awayです。

叔母は時々常軌を逸した行動をとります。ナチスドイツでは断種法が施行されていて、また精神障碍者に対する安楽死(ガス室送り)もおこなわれていました。統合失調症と診断された叔母もガス室送りとなってしまいます。
「こういう劣等人種に対するお金や空間はない」と傲然と言い切るゼーパント教授は若い二人のらないまま後にクルトの義父となります。

成長してクルトはドレスデンの美術学校に入ります。

旧東独時代です。労働者を讃えるような絵を描かされます。絵のうまいクルトは教師にも目をかけられ、壁画制作も依頼されます。しかし党のプロパガンダ壁画を描くことに疑問を感じ、恋人のエリーとともに西側に出ることにします。
1961年、壁が築かれる直前、西に行きます。(ちょっとハラハラしました)

現代美術で知られたデュッセルドルフの美術学校に入ります。

ここの学内見学場面が非常におもしろかったです。現代アートの展示会?皆思いつく限りの作品をつくっているのです。実際に学生に創作させたのかしら?なんて思いました。 

ここで「絵画は死んだ、ほかのことをやれ」と友達になった学生は言います。しかしクルトは絵を描くことを選びます。

ここで、いかにも現代アートらしいものを描くのですが、教授に否定されます。自分の絵ではない、というのです。 
そうして教授の体験を語ります。自分の原風景ともいうべきものを。(教授がクルトのこれまでの作品をみることなく入学を許可したのも、クルトの過去に重いものがある、描くべきものを持っている、と感じたからであろう、と推測しました)

そうしてクルトは描けなくなってしまうのです。悩みに悩んだ末「障碍者に安楽死を執行した人間が捕まった」という新聞から、描くべきことがひらめくのです。 

写真をもとにした絵、自分の存在を消す手法で描かれた作品を発表することになるのです。Werk ohne Autor!

2時半ごろから見始めていつの間にか外が暗くなっていました。3時間以上ある長尺ものだったのです。でも時間のたつのを忘れるほどの面白さでした。邦題のように数奇な運命が語られています。

とくに前半、ドレスデンが面白かったかな?

ただ、リヒター(したがってクルトも)は成功者。そのせいか「善き人のためのソナタ」のような余韻はなかったです。

なお、検索してみますと、最初は映画製作に協力的だったリヒターは作品をみて激怒したそうです。家族の触れられたくない事柄が公にされるわけですから、トラブルは予想されたとは思います。
存命中の人物をモデルにするのは難しいですね。

ナチス時代や社会主義体制下の芸術観、ナチスの優生政策などにもふれられていて、1930年後半から70年代にかけてのドイツ社会の様子が分かったのもよかったです。
ドイツという国は繰り返し、繰り返し過去を振り返るのですね。 
never look away!
目をそらさないで、は絵の対象からだけではないのではないかとも思いました。

去年10月の封切りですから既にご覧になられた方も多いかと思いますが、まだでしたらおすすめです。

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