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2023年8月

2023年8月31日 (木)

『ウクライナ戦争はなぜ終わらないのか』

トッド・池上対談がもの足りなかったので違った視点のものを、と買ってみました。できるだけ新しいもので星の数の多いものを目安に考えました。

理論的にきちっとしていて、なるほどと説得力のあるものでしたので、台湾海峡にふれてるところでは、怖くなりました。 

ウクライナ戦争はなぜ終わらないのか』デジタル時代の総力戦 高橋杉郎編著 文春新書

  23082301     
小さく書かれていますが、高橋氏は防衛省防衛研究所の方で、専門は現代軍事戦略論、日米関係論だそうです。
日本にも軍需戦略論、などという怖そうなことを研究していらっしゃる方がいるのですね。お顔はテレビで拝見したことがあるような。
私はあまりにもものを知らなさすぎで防衛省の仕事って考えたことはこれまでありませんでした。なんとなく自衛隊の事務部門程度にしか思っていなかったと思います。
でも考えてみると、人員がどれだけ必要か、潜水艦を作らせたり戦闘機を買い入れたりするのに、なぜ、何を想定して買い入れるのかなど筋の通った考え、理論が必要だったのですね。 

怖い世界、読んでいて鳥肌がたって、冷房を止めてここは紅茶ではなく熱いコーヒーをいれなくては、という状態で読みました。怖い、というのはいまだ紛争はおきていないが南シナ海、台湾海峡、東シナ海、朝鮮半島のような武力紛争にエスカレートしかねない要因を持つ地域おいて中国の軍事バランスは米国をうわまわっているという事実があるというからです。

第1章 ロシア・ウクライナ戦争はなぜ始まったのか

ロシアがウクライナに侵攻したことから始まった今回の戦争であるが、ウクライナを支援するのはアメリカやヨーロッパ諸国。つまりロシアと米欧の大国間の対立という形になっている。
冷戦終結後、東欧諸国はヨーロッパの一部となることを選択した。米欧はロシアを組み込んだ形での「協調的安全保障」の枠組みを作ることを考えていた。
しかし、ロシアはエネルギー資源の開発による経済の安定化に伴い、政治面の独立性を強めていくようになった。独自の「極」を形成する大国であるというアイデンティティを持つことになり、そのアイデンティティが故にNATO拡大が脅威とみなされるようになった。

一方ウクライナも「ロシアの一部」となる選択肢はあったが、親ロ派のヤヌコビッチ政権が倒されたあと、ロシアがクリミアを併合し、ドンバス地方でも戦闘を開始、結果的には親露派住民をウクライナの政策決定から切り離してしまうことにもなった。
ウクライナはロシアの一部ではなくヨーロッパの一部となることを望むようになった。

ロシアが「旧ソ連的な勢力圏」の再構築を目指し、それを抑止できたであろうアメリカ、の主要課題は中国の抑止であったためロシアに対して軍事的抑止の行動をとらなかったことから結果的にこの時に侵攻を許すことになった。

 

第2章 ロシア・ウクライナ戦争 その抑止の破綻から台湾海峡有事に何を学べるか

抑止破綻から導かれる八つの知見
①ロシアによるウクライナ侵攻は「力に基づく」一方的な現状変革
②ロシアの政治体制(競争的権威主義)(競争的、というのは一応選挙はするから)がプーチンの個人意思をロシアをの国家意思として体現した。
③侵攻前にロシアは全般的な国際関係が現状変革に有利と認識していた。(イラク戦争後アメリカの優位が大きくゆらいだ。中国の台頭で米欧が対中およびインド太平洋重視に傾斜したことなど)
④侵攻前に核を含む戦略兵器のバランスも現状変革に有利と認識された。(新START条約により、米国の戦略核戦力に上限を設けるとともに、条約制限の範囲内でロシアが米国にキャッチアップするための時間稼ぎに有効だった)
⑤侵攻前に現地の軍事バランスもロシアに有利と認識された
⑥現状維持側の「探知による抑止」は有効でなかった。(偵察衛星や通信傍受などでロシア軍の行動や意図を把握し、それを公表することが奇襲効果を失なわせしめ「現状変革糸」を挫くのに有効とされるはずだったが、確信的な現状変革の意図を持った相手には通用しなかった。しかしウクライナ軍への情報提供やロシア軍の虚偽を暴くことにも有効であった)
⑦経済制裁の脅しによる「領域横断的抑止」は有効でなかった。(経済制裁はその中身において不十分であった。日本もサハリン2の権益を維持している)
⑧「戦争の終わらせ方」を巡っても現状維持側に混乱がある。
*2022年2月24日以前の状態に復帰させる(事実上の領土放棄ではウクライナは拒否するであろう) 
*2014年2月以前の状態に戻す(ロシアの徹底抗戦を招き場合によっては核エスカレーションも覚悟する必要があろう)  
*ウクライナの領土を取り戻すだけでなく再度の侵攻が不可能なまでにロシアの弱体化目指す。戦後のウクライナの安全確保には究極的にはこれが必要だが明らかに「第三次世界大戦」のリスクを覚悟しなければならない。
→この戦争の終わらせ方についての確たるビジョンは持てない。

台湾海峡有事への含意
台湾海峡についても上記八つの項目をあてはめて考えることができることを示したうえで、ウクライナでの抑止破綻の事例を教訓に現状維持勢力としての抑止の強化に努めるほかないであろう。
*全般的な国際関係が中国に有利でないと中国に認識させること
*(米国の核エスカレーション上の優位維持を通じて)戦略核兵器のバランスが現状変革に有利でないことを中国に認識させること。
*(米国と同盟国、友好国との協調を含めた域内での通常戦力の強化を通じて)現地の軍事バランスが現状変革に有利でないと中国に認識させること、 などが抑止のカギ。探知による抑止や経済政策は役にたたない。
確信的な現状変革の意図を持つ相手に対しては、矢張り物理的手段での対抗措置を採るほかないであろう

  軍備強化の必要性を説いている! 友好国とは日本も入るのですよね、鳥肌が立ちました。

この戦争が デジタル時代の総力戦であることが
第3章 宇宙領域からみたロシア・ウクライナ戦争
  ロシアとウクライナ双方の宇宙利用について、特に商業用宇宙利用(イーロン・マスクのスターリンクなど)の支援を受けることで、独自の宇宙作戦能力を持たないウクライナが、有効な形で宇宙空間を利用していること


第4章 新領域における戦い方の将来像 ーー ロシア・ウクラウナ戦争から見るハイブリッド戦争の新局面
  この戦争におけるサイバー空間のかかわりについて、マルウェアによるサイバー攻撃だけではなく、フェイクニュースを流すなどのの情報戦などを利用したハイブリッド戦争 
 などが具体的に詳しく説明されているのですが、詳細を書くには本の丸写しをしなければならないので、省略
このようなロシア
(中国も同様)に対してアメリカでは統合抑止によってこれをうち破ることを考えている。
安全保障政策の執行にあたり外交(Diplomacy)のD,情報(Information)のI、軍事(Military)のM、経済(Economy)のEという、DIMEをすべて動員しての真剣勝負をしようというものである。従来の外交と軍事に偏った安全保障から情報と経済を加えたすべての手段を使った安全保障に代わりつつある。日本でもDIMEによるwhole of  governmentアプローチを採用した安全保障観が必要。

第5章 ロシア・ウクライナ戦争の終わらせ方

この戦争は「旧ソ連的な勢力圏」を再構築するためにウクライナを「ロシアの一部」にすることが目的だとすれば、ウクライナが大勝利をおさめ侵攻軍がウクライナから排除されてもそれ自体は戦争をやめることにはならない。

戦争を終わらせるシナリオをあえて考えるとすると
①軍事的現実の政治的固定化 合意成立時点でのロシア占領地をロシア領とする一方、ロシアがウクライナに対する軍事行動を停止するという形での終戦。
難点、 停戦合意がそのまま遵守されるかどうかの保証がない。ブチャの虐殺のように、ロシア側に取り込まれたウクライナ人への人権侵害の懸念もある。このシナリオは激しい消耗戦が続いたのちのことであろう。
②軍事と政治にまたがるバーゲニング 一方が軍事面において譲歩し一方が政治面において譲歩する。(ウクライナが領土の一部奪回をあきらめるかわりにウクライナが「ヨーロッパの一部」になることを認める。)→ロシアが「旧ソ連的な勢力圏」の構築をあきらめるとは考えられない。
③ワイルドカードイベントの発生
*プーチン政権の転覆などモスクワでの政変→その後の政権が穏健な政策を鶏とは限らない
*ベラルーシにおける政変 親露姿勢を撮り続けたルカシェンコ体制が崩壊し、親米的な民主化体制が成立すればロシア・ウクライナ戦争の前提にある地政戦略的構造が一変することになる。ウクライナを撤収してでも事態収束に向かうであろう。ルカシェンコ大統領の体調はよくないらしい。
とはいえ現実的ではない、が、政変は何の前触れもなく起こるものである。文字通りのワイルドカードである。

戦争が長く続かず終わるとしたら③だが現実の可能性として議論するものではない。

ロシアの目的が「旧ソ連的な勢力圏」の構築であるかぎり、戦争終結を見通すことは難しい。一ロシア占領地に取り残されたウクライナ人に対する人権侵害は許容されるものではない。ウクライナが占領地をすべて奪回すればさらなる人権侵害のような事態は避けられる。
だとすれば、戦争を終わらせるために国際社会がなすべきことは、ウクライナが占領地をすべて奪回できるように支援していいくことであろう。それが実現すれば、少なくともウクライナの側には戦争を終結させる理由が生まれるからである。もちろんそれでも戦争の終結は難しいであろう。しかし双方に戦争を継続させる理由があるときよりも、少なくとも片方が戦争を終結させたいと考えているときの方が、戦争終結の可能性は高くなる。
と結んでいます。
双方ボロボロになるまで戦争をつづけるだろうという予測です。なんとか早く終わらせて、これ以上、人を死なせたり、国土を荒廃させないようはかればいいのに、と思うのですが。

終章 日本人が考えるべきこと

台湾海峡有事が懸念されている。「中華人民共和国とは分かれている」現状の継続を望む台湾と「中華人民共和国に台湾を名実ともに組み込む」ことを狙う中国とのアイデンティティを巡る戦争になってしまう。そういうこともあり、台湾海峡有事は一度始まってしまうと、おそらく「終わらない戦争」になってしまう。

そう考えると大切なのは「戦争を始めさせない」ことである。そのために不可欠なのが、軍事的な抑止力の強化である。DIMEにおける軍事力遺骸の主ds段も重要な役割。特に外交は重要。しかし外交は「落としどころ」がある状況で機能する。アイデンティティを巡る対立のように「落としどころ」がない状況では話し合いによる妥協は成立しない。重要になってくるのは自らのパートナーを増やし抑止力を強化したり、万一抑止が破れて紛争になってしまっても自らが有利な位置にいられるような形で世界各国との関係を構築しておくことである。

現在中国の戦闘機や水上艦艇の数はアメリカの7割。米軍全体の半分がアジアに展開しているとすれば 米対中は 5対7になる。日本が2ないし3の力を持つことが出来れば7対7あるいは8対7となり、抑止が成功する可能性が高くなる。

具体的な数字まででてきてしまって、怖くなります。

防衛省の方だから当然なのかもしれません。今日のニュースをみていても防衛費の大幅増額要求が報じられていました。

こういう考えを防衛省は政府に提出しているのでしょうね。

具体的に説明して諄々と説かれているとそれ以外に手はない、という気がしてしまいますが、落ち着きません。
自分の言葉では書きにくくて引用が多くなりました。

一読にするに値する本だとは思います。

2023年8月20日 (日)

『オロチの郷 奥出雲』 高田崇文著

先日読んだ『鬼棲む国 出雲』の続編を読みました。

出雲市、松江市周辺の神社を廻っていた橘樹雅は准教授の御子神に、「それでは素戔嗚尊にしても櫛にしても本質にたどり着けない、それではお嬢様旅行だ」といわれて奥出雲にでかけるところで『鬼棲む国 出雲』は終わっていました(出雲は踏鞴製鉄の本場、そうして奥出雲は素戔嗚尊の八岐大蛇退治の里だと気付いたからです)

旅の先達kikuko様は奥出雲の蹈鉄師御三家の内、桜井家と絲原家を訪ねていらっしゃいます。そのこともあって興味をもって読み始めましたが、これらの住宅や庭園は訪ねていないのでちょっとがっかり(絲原家で資料を入手しただけ)。

相変わらず、神やものの名の漢字から、あれこれ推測する(逆でそういう意味をこめてその名になったということなのでしょうが)ウンチクを傾けています。

前の本のおわりの方で案山子をみながら素戔嗚尊が根の国(黄泉の国)に送り出された時の恰好が(青草を束結いて、笠蓑と)としていたことを思い出し、「案山子」に「素戔嗚尊」がなぞらえられているのではないか?案山子が一本足であるのは製鉄民の職業病からくる「片足」も当然、などと考えています。

オロチの郷、奥出雲』 高田崇文 講談社文庫

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なんだか恥ずかしくなるような表紙絵です)

帯の 出雲は大国主命の国じゃない?ですが(出雲といえば 因幡の白兎と大国主命ですよね)省略しましたが、雅は出雲大社に行ったとき、奥の素鵞社に行きます。祭神が素戔嗚尊でした

私は素戔嗚尊の八岐大蛇退治はなんとなく知っている程度です。出雲は鉄の産地、そうらしい、という程度で予備知識ゼロです(江戸時代、鉄の30%は出雲でつくられていたそうです)。前の巻と同じく、読みにくい漢字の神々が沢山出てきます。

雅が泊まった宿の主人、源太は雅が近隣の素戔嗚尊関連の神社をたずねてまわっていることを知って、彼自身も何年か前に某大学教授の関連講演を聴いたことがあることから関心を持っていて、翌日車で彼女を神社巡りに付き合ってくれることになります。このあたり、バスを待っていたら一体いくつまわれるか?だし、タクシーともなると費用の問題もあるし、で好意に甘えて源太の運転でいくつもの神社を廻ります。素戔嗚尊と櫛に関する問題を解き明かすために。

神社だけでなく「奥出雲たたらと刀剣館」や「絲原記念館」も予定に組み込みます。(前日、安来の和鋼博物館に雅は行っていますが、こちらの方が見ごたえがあったようです)

『出雲国風土記』や神社縁起を読み、あれこれ御推測しながら廻ります。(出雲国風土記では素戔嗚尊にふれられていないのを不思議におもいながら)
金屋子神社、金屋子神話民族館、伊賀多気神社、鬼神神社、稲田神社、奥出雲たたらと刀剣館、絲原記念館、三澤神社、八重垣神社、斐伊神社、八本杉,河邉神社、三屋神社、八口神社 とものすごい数の神社に行きました。

八岐大蛇退治

八重垣神社は手摩乳(てなずち)、足摩乳(あしなずち)夫婦の神が娘たちと住んでいた屋敷跡。素戔嗚尊が奇稲田姫(クシイナダヒメ、クシナダヒメとも)が結ばれた場所です。
素戔嗚命がここに来ると老夫婦が泣いています。聞くと娘が八人いたが、毎年八岐大蛇がやってきて娘たちを食べてしまい、ついにこの娘ひとりになってしまった。そろそろ大蛇がやってくる時期でこの娘も食べられてしまうと泣いているのです。そこで素戔嗚尊は娘の奇稲田姫を妻とする許可を得て、大蛇退治をします。その時姫を湯津爪櫛にかえて自分のみずら(髪)にさします。そうして酒に酔わせて退治するわけです。(日本版ゲオルギウスのドラゴン退治!ゲオルギウスはカッパドキアのお姫様を助けます)大蛇の尾から出てきたのが草薙の大刀で天照大神に献上、これが皇室の三種の神器の一つ草薙剣なのだそうです。

奥出雲、鳥取県と広島県に近いところから蛇行しながら宍道湖に流れ込む斐伊川という川があります。
斐伊川は昔、砂鉄が取れたことで有名で、そのため、八岐大蛇を形容する「悉に常に血に爛れたり」という描写は斐伊川の赤さを表しているのだともいう。また「サ」「ヒ」は鉄の古語でもあるそうです。

この川のそばの木次という町に斐伊神社と八本杉はあります。
八本杉:八岐大蛇の八つの蛇頭を埋めて記念に八本の杉を植えたので八本杉の名がのこっています。

この地域は素戔嗚尊だらけ。昨日行った熊野大社も素戔嗚尊を祀っている。新嘗祭に際して杵築大社(出雲大社、大国主命は 主祭神)と熊野大社の間には「亀太夫神事」というのがあり、熊野大社の方が社格が上であることを強調するような儀式があるそうです。

雅はすでに水野教授の講義で
素戔嗚尊は朱砂王から来ている、という説がある。朱砂(すさ)つまり水銀の王だったであろう。
青丹よし奈良の都は咲く花の匂ふがごとく今盛りなり(万葉集)
青は鉄、丹は水銀、咲く花は踏鞴場で鉄を鍛えるときに飛び散る花火のようなもの、つまり鉄。それらをすべてとりいれて 奈良は今盛りなり。 
鉄といえば当時は出雲,吉備、丹といえば伊勢、つまり朝廷は出雲や吉備、伊勢も手にれたことを表している。
その結果として朱砂王は素戔嗚尊になった。「素」は白で、白く輝くもの、つまり鉄を表す。「戔」は失う、損なう、「鳴く」はむせび泣く、嘆くで「朱砂王」は 白く輝く鉄を失いて嘆く 素戔嗚になった、 
という説を聞いています・

一応まわり終わったところで見逃しがあるといけないと思い、大学の御子神准教授に電話をします。

そこで八本杉の話をしますと八頭とはなにか?と聞かれます。それは「やと」つまり谷。谷神、これはじくじくした湿地を司る神、あるいはそういうところにおいやられてしまった禍々しき神。それは同時に「夜刀神」ともなる、それは得たいのしれぬ蛇神。この夜刀神と遭遇して、害をうけないように逃げて行く時に、もしも一人でも振り返って見たりしたら、一家一門は全滅し、子孫も断絶するだろうという言い伝えのある神。
ここで、准教授は「どうして『八岐大蛇』と『人間』を区別するのだ」といいます。時代が下って、玉鋼がもっぱら刀剣のみに使用されるようになると、刀鍛冶たちは日本各地に出かけた先の宿で「手前はどこどこのオロチでございます」といったそうだオロチを蹈鞴にかかわる人間と考えていたということになる。「稲荷」神も稲、つまり植物の神とされるようだがそうで
はなく稲荷は鋳成で 鉄の神 なのです。

つまり 素戔嗚尊の大蛇退治は産鉄民を平定した、ということになるようです。

八だが、八の大字は捌、捌の意味は さばく、わける、などでばらばらにするということ。そういう意味で斐伊川が八岐大蛇という見立ても、あながち間違いとは言い切れない。一本の大きな川ではなく、あちこちに分かれ、しかもしばしば氾濫をおこして人々をバラバラにするから。

また神の名前に櫛が使われているものが多いがこの櫛は何を意味するか、について

ここではふれませんでしたが、雅はここでも殺人事件とかかわりを持ち、そこで櫛が謎解きのポイントになっています。この殺人事件は「四柱推命」とか「九星気学」とかまたわけのわからないことを学ぶgroupでの出来事。これにふれていると収集がつかなくなるのでやめにします。

櫛、比櫛あるいは櫛比は目の細かい 梳き櫛 のこと。竹でつくられる。遥か昔の櫛は魚の骨のように両側に櫛の歯がついていた。そこで斐伊川の斐という文字が櫛と関係しているのかと考え、研究室に電話を入れます。そこで「斐」についてきくと、斐、は美しい、明らか、なびく麗しい だが発音を表しているのは上部の「非」でこの文字はそれだけで「梳き櫛」を表しているそれは 櫛の歯が魚の骨のように左右に並んでいる形で、古くは「非余」といった。この「非」は「背く・悪い・あらず」 そして「正常ならざるもの」

つまり櫛=非 だった、と気付くのです。素戔嗚尊の別名は櫛御気野命(くしみけぬ),奇稲田姫(櫛名田比売)、天照国照彦天火明櫛玉饒速日命(大物主神)、など名に櫛が入っているのは、全員が朝廷に背く悪神だった。

もう疲れて頭がパンクしそうですから、このあたりでやめます。学説としてどこまで認められているのか知りませんが、面白かったです。

出雲には行きたいとおもうのですが、こういう本を読むと一体何日旅すればいいのか?考えただけでもうぐったりです。  

 

2023年8月17日 (木)

『金庫破り ときどきスパイ』

気分転換に楽しいミステリーを読みました。

いわゆるコージーミステリー、死体も出現しますが、怖くないのです。

金庫破り ときどきスパイ』アシュリー・ウィーヴァー著 創元推理文庫

 23081702
1940年 第二次世界大戦のさなかのロンドン。ロンドンも爆撃されるかもしれないと、多くの人が逃げ出し、灯火管制下、夜の町は真っ暗。

アイルランド美人のエリー、24歳は幼い頃両親をなくして伯父の家で育ちます。伯父ミックは腕のいい錠前師。生活の必要から時々金庫破りをします。二人の息子も金庫破りを手伝うのですが、今二人とも兵隊にとられて家にいません。エリーは幼い頃から伯父に仕事をみているので金庫破りもうまいのです。

その夜も伯父とともに「仕事」に行きました。順調すぎるほど順調に進んでダイヤモンドやルビーなどの宝石を手に入れます。これまで捕まったことはありません。 
ところがこの夜、捕まってしまったのです!
でも連れていかれた所は 警察署らしくありません。立派なお屋敷のようです。

捕まえたのは陸軍のラムゼイ少佐。背が高くがっしりした体格、ハンサムです。

警察には突き出さないから協力してほしいと申し入れられます。ある金庫にはいっている機密書類を盗み出してほしい、というのです。ドイツの手に渡るとまずいからです。お国のためなら、とOKします。そうしてある屋敷にしのびこみ、、、。 

ミステリーですからストーリー紹介はここまでです。

お決まりのロマンスめいたところもあり、楽しいお話でした。

イギリスです。当然紅茶を飲む場面がしょっちゅう出てきます。したがって、紅茶を飲みたくなります。

紅茶をいれてクッキーをつまみながら読むミステリーです。こういう時はティーバッグではなく、リーフティをポットで入れて。

我が家のお気に入りは横浜元町のラ・ティエールのものです。ダージリン(セカンドフラッシュですけれど)とハーブティの元町デュエット。どちらも美味しいのです。
ニューグランドホテルにお食事に行くと帰りによるのですが、ホテルにはほんのたまにしか行きませんから、主人が買いだしに行きます。

ニューグランドと山下公園の間の道を、海を左に見ながら進んで高速の下をぬけたところにあるとても小さなお店です。間口が一間あるかないか。奥に細長いお店です。以前 ドイツのロンネフェルトの紅茶がほしくてネット検索で見つけたお店ですが、ロンネフェルトでなくこのお店のブレンドを買うようになりました。コロナで二年くらい行けなくて心配でしたが、健在でした。

別に頼まれたわけではないですが、小さなお店なので応援したくて書きました。 

 

 

2023年8月11日 (金)

『問題はロシアよりむしろアメリカだ』第三次世界大戦に突入した世界

『ウクライナ戦争の嘘』を買おうとしてアマゾンを開いたとき(ご親切にも)セットで紹介されていたので、一緒に買ってしまった本です。もちろん、読みたいからですが。
23年6月30日発行ですが、あとがきの日付は4月19日、最後につけられたウクライナ戦争関連のニュースは5月20日までです。ほぼ『ウクライナ戦争の嘘』の時期と重なります。

問題はロシアよりむしろアメリカだ』第三次世界大戦に突入した世界 エマニュエル・トッド 池上彰 朝日新書

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両氏の対談というよりオンラインで池上氏の質問にトッド氏が答えるというスタイルです。

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(以下特に断っていない限り、トッド氏の答えです。)

第1章 ウクライナ戦争の原因とジャーナリストの責任

ミンスク合意の前の時点で西側が「ウクライナは中立であるべきだ」ということを理解していたならば(アメリカはウクライナがNATOに加盟することにたいしてオープンだと言っていた)この戦争は起こらなかったであろう。
軍事支援を通じてウクライナを事実上の加盟国にして今も武器を提供しつづけているアメリカとNATOに戦争へと仕向けた直接的な責任がある。アメリカはロシアとの代理戦争をウクライナにやらせている。最大の被害者はウクライナ国民。
どうしても戦争をするのなら直接戦うべきで第三国を介して戦うのは道徳的ではない。

この戦争はまずロシアがウクライナに入った。しかし最大の責任はアメリカ 
どうしてアメリカが戦争にむかわせたのか?
これを理解するためには社会的なダイナミズムを考えてみることが大事。
**ロシアは2000年にプーチン政権になってから非常に安定した社会をとりもどしつつあった。トッド氏はプーチン政権は崩壊しないとみている。
*ウクライナは社会的なダイナミズムから行くと1000万~1500万人ほどの人々が国外に流出していたといわれ「崩壊」が始まっていた国。 
*アメリカも安定していない。
*バルト三国からポーランドを通ってウクライナまで非常にに不安定な地域圏。このあたりはユダヤ人が多かった地域。つまり中間層がいたが、殺戮されてその中流階級がいなくなってしまった。中間層がいないと社会は成り立たない。

欧米がロシア嫌いであるということの背景には「メディアがロシア嫌いだ」ということがある。
この問題の根本には「報道の自由」というようなものもある。
ロシアでは報道の自由が抑圧されている。
それよりもロシアはそもそもジャーナリストとという職業をまじめにとらえていない、ということにたいして西側のジャーナリストは怒っている。

第2章 終わらない戦争
トッド氏は軍事の専門家でないことを断ったうえで、ウクライナを支えるアメリカが軍需品の供給が困難になっているとみている。グローバリゼーションによってあまりにも大規模に産業基盤の移転をすすめてしまったがゆえに兵器の生産力、工業力というものが落ちている。(これは日本にも言えることで、主人は安い労働力をもとめて中国などに生産拠点を移してしまったことは問題だ。失った技術力を取り戻すには10年はかかる、と口癖のように申しております)

一方ロシアの経済力は意外にも安定している。
経済のグローバリゼーションが進んでいく中で「生産するよりも消費する国=貿易赤字の国」と「消費よりも生産する国=貿易黒字国」との分岐がますます進んでいる。ロシアはインドや中国とともに後者の代表で、天然ガスや安くて高性能な兵器、原発や農産物を世界市場に供給する「産業大国」であり続けている。
前者の貿易赤字の国とはアメリカ、イギリス、フランスなど。つまり互いに科している経済制裁は消費に特化したこれらの国の方にマイナスに働く。

もう第3次世界大戦は始まっている。 

アメリカを中心とする西側世界とロシアの間で展開されている世界戦争に入った、とみている。
ウクライナで市民の多くが殺されていることはまさに戦争だが、ロシアを経済的につぶすという経済制裁もまた戦争の一端。
この制裁にロシアは耐えている。後ろには中国やインド、もしかしたらサウジアラビアもいる。
アメリカは今生産力の点で非常に弱体化している。長期化した時ウクライナへの軍需品の供給が続けられるか?
経済問題は西ヨーロッパでもその影響が非常に感じられるようになっている。

ウクライナは破綻国家だったがこの戦争で逆に民族意識が高まってきた。

ポーランドにはロシアに対する強い憎しみがある。

ドイツは戦車の供与に最初は慎重な姿勢。
アメリカの裏の目的はノルドストリームを壊すことであって、ドイツとロシアの決別を決定的なものにすることであった。
ドイツがこれからどうでてくるか。行きつく先としてNATOやEUがばらばらになっていくこともありえる

あくまでも仮説として
中国は、ロシアが負けてしまえばアメリカはつぎに中国を攻撃するだろう、ということがわかっていてロシアを支えていた。*ロシアがつぶれてしまったら とばっちりを受けるから。
最初はロシアを支えるような立場だったが、この戦争は台湾までは来ないだろうということが分かってきて、仲介案をだすことによって*世界的なアクター(役者)としてアメリカにとってかわろうとしているのではないか。(
あれは真の和平案ではない。ロシアと中国の目的はNATOをつぶすこと)

アメリカは非常に軍事主義的な国。それは自国が戦火にあっていないから。
日本、中国、フランスなど西欧諸国など戦争により自国民を非常に多くなくしてしまった国には戦争に対する強い嫌悪感がある。アメリカにはない。

しかし、中国もロシアも世界制覇は狙っていない。それぞれの国家の主権を守ろうというものになっていくはずだ。

中国の非常に低い出生率や大量の海外流出など、人口の動態面からみると、中国の世界制覇はありえない。

中国とロシアは今この戦争をやめることに対してまったく利益がない。続けることにこそ意義がある。 
逆にアメリカは自分のしかけた罠にはまったような状態にいる。ロシア経済がもちこたえてしまったということと、アメリカの〈新自由主義思想〉が自分自身の工業的な弱さという問題がまったく見えていなかったことによる。

ロシアの人口ピラミッドを見ると5年後に人口が減る時期が来る。中国は10年後には労働人口の30%が縮小するといわれている。
よってアメリカのヘゲモニーを崩壊させるチャンスは今、ということになる。
アメリカにとってはこの戦争が長期戦になることは全くいいことではないのだ。

停戦は成立するか?アメリカは負けをみとめないだろうし、ロシアも自分が勝ったといえる状況ではないので停戦はあり得ないとみている。NATOが全面的に支援しているということは、少なくとも10年戦争は覚悟しているのだろうと思う。

第3章 無意識化の対立と「無」への恐怖
池上「今回のウクライナ戦争をみていると「文化的な闘争」という色彩がみえてくる。23年2月21日の議会演説で反LGBT的な発言をした。これについてどうおもうか?

しかし世界ではLGBTについて保守的な傾向が強い。自然を超えたい西洋とそうでないロシアという対立がみられる。
しかしこの反LGBT発言はトランプなどアメリカの保守層の共感を得ている。
しかし戦争がはじまり「現実」に直面するとLGBTよりも大砲がどれだけ作れるか、ということが問題になってくる。つまりウクライナ戦争は 「リアリティに西側を引き戻している」という状況にある。

戦争を見ていくうえで重要な人類学的側面
*アングロサクソンの国々やフランス、スカンジナビアは子供が結婚後独立した世帯を持つ核家族
*ロシア、中国、イラン、アラブ諸国、セルビアなどは父系制で、共同体家族の構造がある→共産主義などが生まれる。

個人の解放や個人主義につながる核家族構造というのは、民主主義の台頭には欠かせない要素の扶突えあることや、父系制や共同体家族構造の地域では共同体システムが政治システムを生み出す傾向にある。
今、西側で問題になっているのは民主主義の形が衰え、不平等や寡頭制の台頭。一部のエリートが富や政治力を独占する「リベラル寡頭制」これがアメリカでも顕著。

ウクライナは核家族構造があって、リベラルな傾向がある。しかし核家族構造だけでは民主主義は成立しない。「国家」が必要。国家がないと無政府状態にしかならない。ウクライナはさまざまなクーデターなどがあったラテンアメリカにより近いものがあるように思う。(何度もデータが非常に少ないことを断っている)

第4章 アメリカの没落

アメリカはこれまでやってきたのと同じようなことを、ロシアに対してひはんしている。
イラクが大量破壊兵器をもっているといって国際的合意のないまま、アメリカとイギリスがイラクを攻撃した。アメリカはイラク戦争もそうだが、ベトナム戦争やその後も色々な戦争で多くの死者をだす戦争をしてきた。そのアメリカが海外で死者を出すだけではなくて、また国内でも死者を出しているといえる。中等教育しか受けていない人々の間では平均寿命が低下している。そんなアメリカはリベラル民主主義ではない。
アメリカは世界の人々の労働で生きている。人種差別もいまだにある。
→「この世界からアメリカという勢力がなくなれば、より美しいより平和な世界が現れるだろう」→トッド氏は自称アメリカフォビアで反米主義者ではない(アメリカの文化的側面は愛している)といっている。

NATOの兵器供与が戦争を長引かせているのか
アメリカの外交政策の特徴の一つとして「同盟国を見放す」という点がある。→台湾で対中国戦争があったして、アメリカが介入してきたとしても、もし西側が
敗けそうなら簡単にアメリカは見放すだろう。
ウクライナでも同様なことが起こるだろう。ウクライナを支援し続けるのもウクライナが負けてしまったら、自分たちの勢力としての面目がつぶされてしまうからで「道徳的によいことをしなければ」というのではない。

今度の大統領選挙でトランプアあるいはフロリダのロン・デサンティス州知事が勝ったとしたら変わるか?
→当選する大統領とは無関係なロジックがある風に見える。大統領選よりむしろ、CIAとかNSA(国家安全保障局)、金融システム、それから無責任なエリートとかそれら全体についてのほうが注目すべき。

ウクライナ戦争の五つのファクター
*ロシア 合計特殊出生率が1.5
にとどまり、5年後に人口ピラミッドも大きなくぼみが生じる。(5年以内に米、NATO諸国に勝利する必要がある。
*中国 この戦争はアジアで起きたかもしれない戦争が避けられて、ウクライナで起きている。アジアの人々にとってもこの戦争は良い機会。想像もしていなかった遠いところでアメリカと中国との対立がおこなわれている。
*アメリカ ロシアが侵攻することによりウクライナがつぶれてアメリカが支配できれば、ロシア経済の崩壊、を考えていたのが、自分たちも長期戦に巻き込まれてしまって、アメリカという一種帝国が崩壊してしまう危険な立場にいる。
*ポーランド 歴史的な背景を考えても対ロシア戦争を必要としている国
*ドイツ ウクライナ戦争におけるアメリカのそもそもの目的はトッド氏からすると「ロシアとドイツを引き離すこと」
ここまではドイツはアメリカに従順だったけれど、アメリカの工業面での弱さが表れてきたときドイツがどういう行動にでるか?予測レベルの仮説だがウクライナ戦争から「抜け出す」ドイツというものも想像することはできる。

アメリカはドイツにも戦争をしかけている
ドイツ経済を完全に破壊させるのではなく、アメリカ、西側
のためのものとしてドイツ経済を保ちたい。(ノルドストリーム、単にバルブを閉めればいいだけなのに、破壊した。)ドイツはロシアとの補完的なものになってはならない。
ドイツ自身が何を考えているのかは全く分からない。

岸田首相のキーウ訪問に疑問

キーウはナチス・ドイツ占領下に大規模なホロコーストが起きた地域(バービ・ヤールの大虐殺。私は映画「ドストエフスキーと愛に生きる」でこの事件を知りました)。ヨーロッパの戦争はこういう背景を持つことが多い。そういうところにユダヤ人やホロコーストにまったく無縁な人がやってくるのが不思議。
キーウのようにナチス・ドイツによるユダヤ人大虐殺があった地域にドイツが戦車を送るということは、非常に複雑なこと。

ヨーロッパ人は現実を直視していない 
今ヨーロッパではインフレがあり、生活運もだんだんさがってきている。しかし指導層はこれを直視しているようにはみえない。
ヨーロッパは核家族構造でこれは世界の25%。世界の大半は父系制社会で権威主義的な家族構造。ヨーロッパの孤立というものが浮かび上がってくる。→植民地時代から続いていた西側世界の世界支配の終焉
植民地の崩壊というのは実はソ連の勢力によるところが大きかった。ソ連が終焉を迎えると、新たな植民地主義的思想がうまれた。「経済のグローバル化」だ。1991年から2022年のウクライナ戦争が始まるまで世界の一極化が進みアメリカの支配というものがあった。そういった流れがウクライナ戦争につながっている。

池上: アメリカ一強となり、それに対するロシアあるいは中国の異議申し立てが現在こういう状態になっている。中国が大変な大国になってアメリカと対等にむきあうことになったら、きわめて皮肉なことだが世界は安定するかもしれない。しかしそこに行くまでの過程であちこちで紛争が起きうる。
多様化して世界が安定するかもしれないがそこに至るまでの間、非常に不安定な状態がこれからしばらく続くのではないか

第6章 多様化していく世界と我々

トッド氏の理論 ロシアという国は権威主義であるけれども、目指す世界としてはそれぞれの「特殊性」を尊重し、時刻の価値を他の国には押し付けない「すみ分け」のビジョンがある。
多方、アメリカはアメリカ的な民主主義をいろんな国に押し付けようとしている。ロシアは内部ではひじょうに権威主義的だが外部ではそうではない。
日本はアメリカ・イギリスのように核家族構造で個人主義、とロシアのような共同体家族構造の中間に位置する。

日本がロシアに寄っていくことは考えられない。しかしアメリカの崩壊ということが考えられるとしたら日本の彌い位置は?アジアのなかでの日本ということをもう一度考えるべき。

アメリカが崩壊したら日本はどうすべきか
アメリカにたよりきるのではなく核武装すること
*中立国として宣言すること
*こどもをつくること
ここで さすがに池上氏はすぐ日本は核武装はできないと思うと反応している。
少子化を食い止める、ということは経済的合理主義からいったん脱する必要がある、ということ

グローバルサウスはむしろロシアに近い、ということはさらにアメリカが没落していくということ

みんなが負ける負け戦が続く

今の人類が直面している問題は二つある。 地球温暖化とアメリカ

池上 実はロシアはこの戦争の前から、とにかくアメリカが唯一の大国であってはいけない。多様な世界でなければいけないと思っていたので。ウクライナ戦争をきっかけに、結果的に世界が分断し多様になっていくというとロシアの世界戦略が成功するということになってしまうかもしれない。

トッド ただこの分断した世界が不安定だといいきってしまうのは間違い。

::

このウクライナ戦争というのは、私が住む私の大陸、ヨーロッパ大陸で戦争が起こったわけです。アメリカが責任者として、その責任をひきおこしているわけですけれども、これはひじょうに許せないことでした。またアメリカのトランプ政権の失敗や、バイデン政権のひじょうに好戦的な態度などが、私にアメリカに対する希望というものをうしなわせてしまったわけです。

以上、不完全ながら要約めいたメモを書きました。理解できていないところもありますし、話が多岐に渡るので重要なところも逃しているとは思います。

エマニュエル・トッドは『シャルリとは誰か?』で話題になり、家族形態をもとに進める理論を面白く読みましたが、今回ははっきり言って失望しました。
この本の前に『ウクライナ戦争の嘘』というデータ、ソースをもとに進める議論を読んだあとでは、論を振りかざすだけ(ご本人は軍事の専門家でないと何度も断っていますが)で どこからそういう話が出てくるのかをはっきり知りたいのに、と思う所がありました。

軍事専門家ではなくヨーロッパの知識人の一人としてこの戦争をどう感じているかを表した本でした。

ドイツについて言及しているところ、経済のグローバリゼーション、人口動態に注目しているところなどは興味深く読みました。
それにしても トッド氏だけかもしれませんが、日本人のアメリカ、ウクライナ戦争観とトッド氏のようにヨーロッパのフランスの人としての感じ方の違いに驚きました。

そうして実はいやな感じも持ってしまいました。

アメリカがイラクやベトナムだけでなく、今回はこのヨーロッパにまでやってきた!という感じ方。よっぽどアメリカが嫌いなのでしょう。色々な現実をみてのお話だとはおもうのですが、どこか「アメリカ何するものぞ」的なにおいを感じてしまいました。(私の考えすぎだとは思いますが)フランス人一般の感覚なのでしょうか?

それにしてもウクライナ、最後の一兵まで戦い続けるのでしょうか。
メンツなどはすてて何とか妥協できるぎりぎりのところでともかく戦いをやめる方策を考えてほしいものです。住民があまりにも気の毒です。

2023年8月 8日 (火)

『ウクライナ戦争の嘘』 

どこまで続くぬかるみぞ、と嘆かわしく思っている人は多いでしょう。ロシアによるウクライナ侵攻が始まってそろそろ1年半になろうというのに、一向に戦闘が終わる気配が見えてきません。殆どの人が戦争は嫌、戦争のない世界になってほしいと思っているはずです。しかし現状はウクライナにより強力な武器が投与されまだまだ続きそうです。ロシア対ウクライナというより、ロシア対西側連合になっています。気がかりです。長引けば長引くほどど国土は荒れ、人が殺されます。また食料、エネルギー問題など影響は世界規模に広がっています。
突如攻め込んだプーチンは絶対許せませんが、だからといって、いつまでも押されたら押し返すの状態では土地も民も疲弊するばかりです。何とか早く終わらせられないものか?色々知りたいと思いつつ、たまに新聞を読み、日曜討論など視聴しても、どこかまどろっこしく感じるだけです。 

ふと目についた(新聞の今週読まれた本10冊に入っていたので)この本とあともう一冊を読んでみました。
知らなかった驚くようなことや、やっぱりねというようなことも書かれ、色々納得しました。


しかし私はもともとしっかり新聞も読まず、ニュースにきちんと耳を傾けていたわけでもないので書かれていることに対してコメントすることは全くできせん。ざっと要約してみました。

ウクライナ戦争の嘘』米ロ中北の打算・野望・本音 佐藤優・手嶋龍一 著 中公新書ラクレ 
あとがきの日付は23年4月13日になっていますから、その時点までの情勢による判断と言えます。
お二人の対談形式で書かれています。

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二人の基本的な立場、大前提は プーチン大統領は恣意的解釈で国連憲章を破り、世界の秩序を破壊した、そんなロシアのふるまいは決して許されるものではない、です。この立場に立ちながらロシアの言い分も聞いていこう、それに対する西側、特にアメリカのやり方はどうなのか?というのが本書です。

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第1章 アメリカはウクライナ戦争の «管理人» 

非はプーチンにあるのは確かだが、その不正義をただすために領土を奪還すべく戦い続けることがいいことなのか?その果てに核戦争がおこっていいのか?
善悪はカッコに入れて、ウクライナ戦争の本質はを見ていく。

ロシアがウクライに侵攻した直接の目的は、ウクライナ東部に属するルハンスク州、ドネツク州の住民の擁護であり、非軍事化。この地方の人々は帝政ロシア時代、ソ連時代を通じてロシア語を話し、ロシア正教を信じている。
プーチンは侵攻直前2月21日 「ルガンスク人民共和国」「ドネツク人民共和国」の独立を認める大統領令に署名。 

その直後「友好協力相互援助条約」にも署名。ウクライナが不法占拠している国土をロシア軍が「解放」する、という大義名分を整え正規軍を派遣することを可能にした。

他方、国連憲章では侵略に対する集団自衛権も認められている。加盟国が侵略を受けた際、国連が解決のための措置を決定するまでの間、侵略された国を助けることができる。
アメリカのバイデン政権はウクライナとの間には安全保障上の盟約がないため、アメリカ軍を含むNATO軍は戦域に投入しないし、攻撃的な兵器も提供しない。としていたが、当初の建前は崩れていってハイマース砲や新鋭戦車の供与を決め、インストラクターとして西側の元軍人をウクライナに送り込んでいる。 

22年秋のエネルギー関連施設をはじめとする民間のインフラに標準を合わせて、徹底的な破壊を実行。そのきっかけを作ったのは10月上旬のウクライナ特殊部隊によるクリミア大橋の破壊。クリミア半島に兵員や軍需物資を送り込む「大動脈」を断ち切ったこと。もう一つはダリア・ドゥーギン (若手論客として知られ、プーチンの強力な支持者)の爆殺。 

 このウクライナ戦争でメディアが依拠している情報源はアメリカの戦争研究所(ISW)と英国国防省。
ISWはネオコン系で主な運営資金は防衛請負業者からの寄付による。ISWの政治的立場は、戦車や兵器システムの製造にかかわる資金提供者の利益と一致する傾向にある。ここからくる情報をうのみにしていいか、ということになる。
日本のテレビに登場する防衛研究所のスタッフは極秘や秘密指定の公電には接することができない。
よって「ロシアは苦戦している」などの戦争報道にはこころせよ、ということになる。 

ロシアの当初の目標は達成した、ここで和平に持ち込めばゼレンスキー政権は倒れる。ゼレンスキーは当初の地域のみならずクリミアまでも奪還しようとしている。戦争が続くことによりロシアはザポリージャ州、ヘルソン州まで占領地域を広げることができた。

バイデンはゼレンスキーのクリミアまでも含めたすべての領土奪還の主張を支持。
しかし、ウクライナを本気で勝たせてしまえば、プーチンは核のボタンを押してしまう。ウクライナを勝たせることは構造的にできない。
アメリカが現地に送っているのは兵器のみで自らの将兵が血を流すことはない。兵器を送ってウクライナを戦わせることによって、ロシアを弱体化させることができる。
つまり「アメリカによりコントロールされた戦争」
次章でも述べられているが、でもこれはアメリカがこの戦争を望んだり、企てたりしたのではなくあくまでも結果として管理人となってきた。

これによってアメリカの古くなった武器の在庫一掃セール、
巨額の軍事支援は軍事複合体にとっては「特需」であり、資金提供しているアメリカの金融資本にとっても大儲けのチャンスになっている。

第2章 ロシアが侵攻に踏み切った真の理由

力と力の均衡から現在の状況をみる(シカゴ、ミアシャイマー教授)
一言でいうなら、プーチンはNATOの包囲網を恐れたから、ということになる。
91年のソヴィエト崩壊後、ワルシャワ条約機構も解体。この解体後NATOは東へ東へと拡大、バルト三国にも拡大した、ということは ロシアにとってはレッドライン超えたことになる。2008年、ジョージアに砲声が上がったが、その4か月前のNATO首脳会議で「NATOはウクライナ、ジョージアが将来的にNATOの一員となることに同意する」と述べたことが猛烈にプーチンの怒りを招いたからだ。

ここで この本はインテリジェンスの扱いのまずさについて言及している。言葉使いの微妙さで ずいぶん状況がちがってくることを例をあげて説明しているが、割愛。

第3章 ウクライナという国、ゼレンスキーという人物

ウクライナは91年に12月独立国家となった。 
*当時、5200万人だった人口は今回の開戦時は4400万人にまで減少。西欧などへ流出したことをうかがわせる。とりわけ高等教育を受けた労働人口の多くが、外国に活路を求めている。すでに「破綻国家」に近い様相を呈していた。
*ウクライナは、ロシアに近い東ウクライナ、首都キーウを中心とする中間地帯、反ロシア色が強いガリツィアの三つに分断されている。ガリツィアは第二次大戦後までロシアやウクライナに飲み込まれたことはほとんどない(13世紀、ダニーロの時リヴィウが建設されたが、1340年代,ポーランド、リトアニアに飲み込まれた)
後年、ロシアに組み込まれられなかったことによりリヴィウはウクライナ・ナショナリズムの拠点となった。
*軍の統制もとれていない。国防省傘下のものもあれば、アゾフ大隊のような内務省管轄のものもある。

ウクライナ東南部 19世紀末から急速な工業化が進む。工場労働者が増えるにしたがって、革命運動の拠点として知られるようになる。旧ソ連の軍事産業の拠点。ソ連の兵器廠だった。
2014年クリミア併合のころに、ここでも親ロシア派勢力とウクライナ政府軍が衝突。これが今回のウクライナ戦争の発火点になった。
この時ミンスク議定書という停戦合意が結ばれた。それにはウクライナ側がロシア派武装は勢力が実効支配する二つの州に「特別の統治体制」を認めて憲法改正を行うと、明記。(ウクライナ国家の枠内で高度な自治が確保されれば、自治地域の同意なしにNATOに加盟はできないと考えていた)

ゼレンスキー、
コメディアン。コメディ・ドラマで高校教師から大統領に抜擢される主人公を演じ、その余勢を駆って大統領選に勝ってしまった。当時のウクライナ経済はハイパーインフレで欧州の最貧国グループ
に甘んじ、政治の世界では汚職がはびこっていた。
腐敗まみれの政治を動かして結果を出すことは容易でなく、支持率も開戦時には20%まで落ちていた。
国民の不満をかわすにはナショナリズムを煽るのは政治の常套手段。
シア侵攻の4か月前 自爆型ドローンを使ってロシア派武装勢力に攻撃を仕掛けた。これは民間人を巻き添えにする恐れがあるため、非難された。
しかし、2月24日突如ロシア軍が国境を越えたことにより、正義はウクライナにあり、と一変。ゼレンスキーは侵略者に立ち向かう高潔な英雄、といイうメージを国際社会に植え付けること
に成功。

プーチン大統領は侵攻直前に8年前から事態が平和的・政治的手段によって解決されるようあらゆる手をつくしてきたが、徒労であった、とテレビで心情を吐露。
逆に言えば西側の対応いかんでは、ウクライナの戦争は回避できたということ。
ミンスク合意がポイント。ドンバスの二つの州に(特別の政治体制)を導入するためウクライナ憲法改正の条項が盛り込まれていた。しかしゼレンスキーはこれの履行を拒み続けた。マクロン大統領、ショルツ首相もミンスク合意をベースに両国を仲介しようとしたが、合意による解決にプーチンは同意、ゼレンスキーは態度を明確にしなかった。

ウクライナ主権の下で、この問題を軟着陸させる可能性を最終的に消し去ったのはウクライナ側だ。ゼレンスキー大統領に自国民を悲惨な戦争に巻き込んだ責任がないというのは、到底公正な評価とは思えない。

ウクライナは欧州最大の兵器生産国
兵器の取引は、各国の情報機関のサイド・ビジネスになっていることもあって、腐敗と汚職の温床ゼレンスキーが大統領になってもこの国の凄まじいばかりの汚職体質は容易に改まらない。
今回の戦争中も汚職があり、アメリカに強く注意されて幹部役員を解任している。

第4章 プーチン大統領はご乱心なのか

プーチンの精神状態は2022年のヴァルダイ会議の1時間にわたる講演と出席者との3時間にわたる討論から考えると、およそ心神喪失状態にある人とは思えない。この演説を誰が書いたかの先入観なしに読むとむしろ共感するのではないか、とエマニュエル・トッド氏も言っている。
ウクライナ侵攻に関して2022年3月以降、国連では4回決議が行わた。そこで言えるのは ロシアは孤立しているわけでは無い、ということ。ウクライナへのロシアの賠償請求なども賛成票は過半数に届いていない。(賛成に新興国が多いのでしょうけれど、私の独り言)「世界秩序の地殻変動」が起こりつつあるのであって「無謀な戦争に走ったロシアは孤立を深めている」という見方で凝り固まっていると、戦争が終わってみると地政学的に以前とは全く異なった景色がひろがっていることに愕然とするかもしれない。

しかし、マッドマンとしての要素がある。とくに、洗浄で国家のため、大義のために命を捧げるそんな局面でマッドマンとしての性格が仄見える。一人で煮詰まるプーチン。
プーチンが立脚するのは普遍主義的な考え方ではなく、ロシアはロシアの中国は中国の歴史発展がある。西側陣営があくまで 民主主義の旗を振って自分たちの価値を押し付けようとしたとき、眠っていた「マッドマン」の顔がのぞく危険性がある。 核のボタンを押すかもしれない。「ロシアのない世界は存在する意味がない」

第5章 ロシアが核を使うとき

考えられるのはウクライナ側が、ロシアにとっての核心的利益に通常兵器で攻撃を仕掛けるケース。モスクワやサンクトペテルブルグ、ロシアの核戦略の基地が考えられるが、忘れてならないのが、クリミア半島の要衝セヴァストポリ。ウクライナの勝利はクリミア半島の奪還なくしてないが、本当にそうすれば、核戦争に限りなく近づく。
ロシア側にも核使用についての制約がある。プーチンはウクライナ人も同胞だと思っている。他のヨーロッパ人とは違う、ウクライナを核で攻撃するというのは自国民を被爆させることになる。

ウクライナは兵器廠として核兵器の製造に携わっていたので、核兵器を造る能力がある。そのため、ロシアはすぐ原発を制圧した。たんにウクライナへの電力供給を制御するだけでなく「神の火」に手をかけた、と見るべき。

 

第6章 ウクライナ戦争と連動する台湾危機

22年9月 サマルカンドでプーチンと習近平は会談。習近平「互いの革新的利益にかかわる問題では強く支えあっていきたい」に対し、プーチン「我々は『一つの中国』という原則を厳守する」と応じた。共通の敵はアメリカ。

バイデン政権発足当時、当面の主敵は習近平の中国。持てる戦略資源のすべてを台湾海峡に向けようとしていた。ところがウクライナ戦争が起こり、そちらに戦費、武器を投入することになり、中国に対する抑止力は徐々にそがれつつある。

72年 ニクソン・毛沢東会談後の上海コミュニケ
:米国は両岸のすべての中国人が中国はただ一つの国であり、台湾は中国の一部であることを(acknowle
dge)つまり知りおいている。→認めるではなく、知りおいているとなっていることに着目
*米国は中国人による台湾問題の平和的解決に米国の関心を再確認する。→武力介入するかどうか曖昧にしている。
平和的枠組みが崩れれば介入する、と牽制していることになる。

これをバイデンは22年5月岸田首相との会談で「中国が台湾に侵攻した場合には、軍事的に関与するか?」にたいして イエスと言い切った。これは上海コミュニケを半分破ったことになる。

背景には、半導体が高めた台湾の地政学的な重要性がある。

中国は力をつけたが、台湾も力をつけている。台湾積体電路製造(TSMC)という会社は半導体を生産するファウンドリーの市場で60%のシェアを占めるばかりでなく、チップの集積度の高さでも他の追随を許さない。
現代産業のコメである半導体は、モノツクリに影響をあたえているだけでなく、国際政治た経済安全保障にもインパクトを与える戦略物資。
バイデンは持ち前の老人力(言い過ぎもボケて仕方がないと思わせる)を駆使しつつ台湾条項の見直しにあえて踏み込んだように思われる。

ただ明確な対中戦略は持ち合わせていないと思う。ペロシの訪台→習近平激怒→台湾を囲むように弾道ミサイル発射を招いた

台湾有事となると日本も無縁ではいられない→米軍基地

ウクライナ戦争でタガが外れた北朝鮮のミサイル発射
ロシアと中国は、
なんとかしてアメリカの力をそぎたい。この状況では北朝鮮の「火遊び」は不都合なものではない。

 

第7章 戦争終結の処方箋 日本のなすべきこと

ゼレンスキーは西側からの戦費と武器を支えにすべての領土を奪還すると譲る気は全くない。
戦争は兵糧が尽きれば続けることは難しい。
*23年春から夏にかけてのウクライナの食糧不足
*23年秋から冬にかけ、欧州各国がエネルギーの不足に見舞われウクライナ支援に支障がでるケース
この先も西側諸国が支持するならば、国家予算に「ウクライナ戦争税」といった別枠を設ける必要があるかもしれず、その請求書は日本にもまわってくる。
この二つの山をのりこえれば戦争は長期化、10年戦争にもなりうる。

批判されるべきは侵略者のロシアであり、奪われたすべての領土を奪還するまで戦う、というゼレンスキー大統領の無条件勝利の主張をいけない、言っているわけではない。が、ロシアに「開戦前の国境線まで撤退せよ」ましてや「クリミア半島も返せ」で無条件勝利を掲げて戦いを続ければ、停戦の機をつかむことは難しい。

停戦を実現させる方法を考えるべきだ。

手嶋:キーワードは「中立化」
ウクライナは現時点ではNATOに入っていないので中立だが、プーチンにとっては中立化とは事実上の属国化。外交とは 交わるはずのない平行線を交わったとする表現。中立化を誘い水に和平交渉のテーブルにひきよせる。

佐藤:和平の腹案
中立化という観点から言えば、ウクライナは歴史、宗教が異なる三つの地域からなっている。それぞれが分離・独立する。ロシアが支配しつつあるノヴォロシアについてはクリミア同様ロシアへの併合が固定されるかもしれない。キーウなどのマロロシアは中立国として独立する。ポーランドとの結びつきが非常に強いガリツィアは西側の一員となる。もともとガリツィアはこのあいだまで殆どロシアにくみこまれなかったし、ノヴォロシアとは水と油。分割といっても列強が分け合うのとは違う。

高坂正尭は『国際政治』で、〈国家間の関係は「価値の体系」「利益の体系」「力の体系」が複雑に絡み合ってなりたっている。〉と言っている。
日本は「価値の体系」では一貫してG7の国々と一体となりロシアを非難。しかし
「利益の体系」ではG7の中で唯一自国の領空の航行を許可している。またロシア上空を現在、旅客機は飛べないが貨物機は今も飛んでいる。サハリンのLNGの権益は手放していない(1日分で30から40憶円とみられる)。
ロシア産の水産物もスーパーにならんでいる。
「力の体系」日本は「防衛装備移転三原則」を定めたものの、紛争当事国への武器輸出は禁じられている。そのため不用品扱いで自衛隊の防弾チョッキを送り、追加でドローンを送っただけ。(40憶円分、F35戦闘機が1機150憶円ということからすると微々たるもの)
日本は口先だけだけで深入りはしていない。
岸田首相のキーウ電撃訪問も事前にクレムリンに通告していた。そのためロシア側の反応は非常に抑制されたものだった。
しかし、軍事的にほとんど何の貢献もしてこなかったことが功をそうして ウクライナの戦後処理に絡む外交的余地を残していたのが、これでだめになった。とはいえ日本は殺傷能力のある武器を提供していないのでまだロシアと外交ゲームする余地があると考えている(佐藤) (最後は)岸田首相しっかり仕事してください。

思うことがないわけではありませんが、今回は一応要約を書いた(恣意的で不完全だとは思いますが)だけにとどめます。
ウクライナの人、かわいそうだけでなく、ロシアの論理を知っておくことも必要だと思います。
それにしてもアメリカの戦争研究所のバイアスがかかったニュースを知らされているのかもしれない、と思うと
何を信頼していいのか。

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