『ラスト・トライアル』ロバート・ベイリー著
何か面白い探偵小説はないかしら?と物色、少し前に読んだ『嘘と聖域』が面白かったことを思い出して同じ作者の小説を買ってみました。アタリ!で巻を置く能わずの面白さでした。
『ラスト・トライアル』ロバート・ベイリー著 小学館文庫
帯にあるようにこれはベイリーのプロフェッサーシリーズの3冊目。この前読んだのはそれに続くボー・シリーズ。順序が逆なうえ、この『ラスト・トライアル』はシリーズ3作目なので、前の事件を知っていることが前提ではあるのですが、無視して読みました。それでもとても楽しめました。
登場人物は『嘘と聖域』と重なっています。一番の違いは本作の弁護士役である、トム・マクマートリー元教授がまだ生きていて最後の事件だという所です。末期癌の痛みに耐えながら調査、弁護をすすめます。
舞台はアラバマ州、いわゆるディープサウスです。銃に執着が強く、自分でも銃を持ち、銃規制には断固反対しているところです。女性も自分用の銃を持っているのです。無法者が横行する町、といったイメージがあります。
船着き場で銃による死体が発見されます。そこにはウィルマ・ニュートンの指紋が付いた銃、それに衣服に唾液(鑑定の結果ウィルマのものと分かる)。ウィルマはもう犯人と決まったようなものです。
次の日、マクマートリーが事務所に戻ると女の子が待っています。ウィルマの娘、ローリー・アンです。母の弁護をして、と必死に頼む少女の目をみて、勝ちめはなさそうな事件だけれど、引き受けてしまいます。
殺されたジャック・ウィリーストーンはトラック運送会社の経営者。高額の死亡保険金が掛けられていました。その受取人は?現在の妻のほかに前妻とその自閉症の息子がいます。現在の妻キャサリンの父親も有力者ですが、、、。
保険金がかかわるからでしょうね。マクマートリー側は命を狙われます。ま、南部ですからね。ほんとにアメリカ的!って思ってしまいました。
マクマートリーは元アラバマ大学の法学教授でこのあたりの検事、判事たちは殆ど教え子。その人たちを相手取って裁判に挑むことになります。
マクマートリーは妻を亡くし「悲しみも人生の一部」と心のに痛みを負い、また自分自身の死もそう遠くないことを知りつつで渾身の力を振り絞って事件に当たります。帯にもあるように≪胸アツ»です。
まあ、色々ありますが、すべて省略。
結末の意外さにも驚かされます。そうして裁判って?弁護士は被疑者が犯人でないことを示すことができればいいのであって、犯人をあげる必要はないのですね。
面白かったです。次作を読みたかったのですが、次は怖そうなのでやめにしました。『嘘と聖域』の次の作の翻訳を待ちます。
それにしてもアメリカのミステリーってヨーロッパとはどこか雰囲気が違いますね。歴史からくる重みのなさでしょうか? 欠点とは思いません。これはこれで好きです。
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