何かいい本ないかしら?と クレスト・ブックスから探し出した小説です。
フィンランドの作家、というところに惹かれました。
フィンランド、シベリウスの国です。1994年、北欧四か国ツアーでヘルシンキでの自由時間を利用して、初めて海外で一人で列車に乗ってシベリウスの家が記念館になっているアイノラにでかけたことを思い出します。館野泉さんがテレビで紹介されたこともある所です。
素敵な国です。深い森、そして数多くの湖沼。
この小説には全く関係がないのですが、ツアーで行った古い教会をのことを少しだけ書いておきます。
シルバーラインという船で川を遡っていったのですが、2時間ほどいったところにあるハットラという村で下船し、すぐ近くの古い教会に行きました。
教会home pageから借用した写真。
Kuvia Pyhän Ristin kirkosta - Hattulan seurakunta
ここで壁画がみられます。中世絵画です。これで古い教会に対する関心が芽生え、翌年からロマネスク教会巡りをするようになったのです。ここはゴシック時代でしたけれど。
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この小説、当たりでした。よかったです。
『四人の交差点』 トンミ・キンヌネン著 新潮クレスト・ブックス
1895年から1996年に至るある一家の三世代、100年の物語です。
フィンランドは西側はボスニア湾とスゥエーデンに、東側はロシアに接する南北に長い国です。ボスニア湾の奥にオウルという町があります。舞台になる村はそのオウルから少し離れた山奥のようです。
序章
1996年、病院で死の床にある女性の話から始まります。彼女は母をおもいだしますが、取り分け強く思い出しているのは夫だった亡くなった男のことです。愛していたのに振り向いてくれなかった男オンニ、彼に戻って来て、といいながら亡くなるのです。その手をにぎっているのは息子のヨハンネスと嫁のカーリナ。
この物語はこの女性ラハヤとその母マリア、嫁のカーリナ、夫のオンニの4人の話で構成されています。交差点とは彼らの住んでいる家です。
マリアの章
1890年に助産師の資格を得たマリアの物語です。徐々に認められてきた彼女は1904年にこの村にやってきます。未婚の子をおなかに宿して。最初は小さな家を買ったのですが、それを少しずつ増築して大きくしていきます。助産師として広く認められていきます。
ラハヤの章
マリアの娘、ラハヤは偉大な母を持ち、何とか自分も立派な仕事をしたいと、もがきます。
その一方恋愛をして子供をえますが、相手には逃げられます。
やがて、写真師という仕事を見つけ、家の一部を写真館にして仕事をします。そうしてオンニという美男に出会い33年に結婚。 彼は特に職業をもっているわけではないのですが、この家にやって来て大工仕事を引き受けます。家をますます大きくし、そうして家具も器用に作ります。
子供も二人、それにラハヤの最初の未婚の子、この三人をオンニはとてもかわいがります。
しかし 幼い頃高熱を出し娘のヘレンは盲目となります。
戦争がはじまり、オンニは兵士となって出征。帰ってからオンニは月に一度何かと口実をもうけてはオウルに行くようになります。ラハヤはいよいよ頑固になります。
カーリナの章
ラハヤの息子ヨハンネスの妻
ヨハンネスはおとなしい子で目立たず、学校でも行こうと思うなら中学には行ける、とはいわれたのですが、家で母親の写真館の手伝いをしています。
カーリナは気難しい義母にひたすらつかえています。子供たちとの楽しいひと時も書かれています。
物語ではもっと古い時代ですが、オンニが作った夏の家の話しが出てきます。
フィンランド旅行の際、船で川を遡った時に、こういう夏の家をいくつも見かけました。
川?湖で洗濯
ここでは団らんもあるのですが、大きな家で一族が暮らしていてもどこか風がとおりぬけていくような、、、。多分、マリア、ラハヤという字がの強い人を寄せ付けないような性格がもたらしているのでしょう。孤独感が漂います。
オンニの章
非常につらい話でした。ここを書いてしまうと、これからお読みになる方に申し訳ないので書きません。
背景として、フィンランドはルター派の厳しい掟に縛られた民の国だということがあるようです。
最期にラハヤも亡くなった後、ヨハンネスとカーリナは過去のものを整理しやっと自分たちだけのものになった家でこれからは始まる生活に心を弾ませるところで終わります。
4人それぞれの気持ち、心のうめきが聞こえるような描写すばらしかったです。
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