今年はアメリカ大統領選挙の年。共和党の指名争いではトランプ元大統領が圧倒的な強みを見せています。うーん。
そういう時新聞の読書欄にポピュリズムについての本の紹介がありました。そこで紹介された中で手軽そうな新書版の本を取り寄せました。手軽ではなかったです。
『ポピュリズムに揺れる欧州政党政治』 パスカル・ペリノー著 白水社「文庫クセジュ」
著者はフランスの右翼政党「国民戦線」(通称FN)研究の第一人者だそうです。
私にはこういう方面の知識がなく読解力もないせいだと思うのですが、翻訳が硬くて読みにくい本でした。
まずポピュリズムの定義ですが、カス・ミュデによると
社会というものは、、相対立するそれぞれ同質的な二つの集団ー純粋無垢の人民と堕落したエリートーに分けられるが、政治とは人民の一般意思の表現でならねばならないと主張するイデオロギーである
フランスのマリーヌ・ルペンの言動やドイツで極右ポピュリスト政党の存在については一応知っていましたが、この本によるとヨーロッパのいずれの国でもポピュリスト政党があり、2019年欧州議会選挙で獲得したポピュリスト諸政党の議席数は総議席751の内なんと230議席を占め、その殆どが急進右派なのです。まあ、アメリカのトランプ人気を考えれば納得かもしれませんが。
この現象について細かく章立てして歴史、左派、右派、ファシズムとの違いなど精緻に論じ、多元的な様相を示していますが、細かすぎて要約は難しいので全て省略、現代で問題になっていること、ここでは特にフランスにおける問題を扱っているのでそれだけを簡単に書いておきます。(他の国にもあてはまるところはあるように思われましたが)
経済的には脱工業化が進み、サービス経済がそれに代わった。そのため、産業資本主義では同質的な複数の階級からなる社会階層(労働者階級、農民、ブルジョワジー)イデオロギー(左派や右派)支持政党(共産党、社会民主党、キリスト教民主党、保守のブロック)などへの永続的帰属意識がひきおこされ強い忠誠心が再生産される、こういう時代は今や終わり、さらにグローバル化によっても見捨てられた、という意識だけが人々に残ったのです。
また彼らは雇用市場において外国人労働者との競争を余儀なくされます。→自国生まれ重視。移民の拒絶。
FNにとってEU は≪景気の後退、企業の国外への移転、各国人民の蔑視(EUを少数者からなる支配集団と見ている)ユーロ導入以来の価格高騰、我が国の農業の消滅、公共サービスの消失、大規模移民、ナショナル・アイデンティティの破壊»とうつっています。
ポピュリズムは、自分たちが仲介者を無視して直接に意思表示すべきだ→(燃料か買う高等に対して起きた)黄色いベスト運動もその一例。
筆者のみるところ、
民主主義は危機に瀕していると言えるが、彼らの観念は単純化されすぎている。
ポピュリズムの提起する問題
① 何事においてもますます即効性が求められる社会における人民主権
② 世界においてその克服がも求められる国家の地位
③ 不信感だけでは生き延びられない民主的システム内において、ますます一過性で変わりやすく、それでいて批判的な市民の自己表現
④ 個人主義的性格を強める大衆社会における集団帰属
⑤ 服従を受け入れようとしない社会における権威
⑥ エリートが語り、描く歴史の中でしばしば忘れられた人とも見える人民の地位、 など
そうして筆者は
われわれの民主主義は「短絡主義」や緊急事態優先からぬけださなくてはならない。今後の十年を目途に様々な政治プロジェクトが生み出され、それが雇用、成長、職業教育、さらには連帯などに関して、社会にとって大きな選択肢を提示するものになることが重要。
これからの数十年間、民主主義がもっとゆったり流れる時間を取り戻し、熟議、論証、意義付けのための余裕があたえられれば民主主義は生まれ変わるだろう。
と述べています。
詳細に検討されていて、この理由があるからこそ、と思われるところが殆どですが、そうなるとこの本全部丸写ししなければならないことにもなりそうですので、実に不十分ですがこのあたりで。
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