『紫式部と藤原道長』 倉本一宏著
今年の大河ドラマ、華やかな王朝絵巻、と期待して予習にと杉本苑子著『散華』なども読んで視聴し始めましたが、最初から???
紫式部はまひろ、という名になっていますが、まひろと道長が河原で知り合って、、、。身持ちの悪さ(こういう設定)にあきてれてしばらく観るのをやめていましたが、kikuko様のブログを拝見してやはり観ることにしました(シリーズ録画に設定してあるので遡って観ることはできます)。
それにしても賢子が道長の子とは。
そこで読んでみたのが
『紫式部と藤原道長』 倉本一宏著 講談社現代叢書
一昨年朝〇カルチャーセンターで倉本先生の古代史講座をオンライン受講しましたので、これを選びました。
もっとも最後の3月平安時代の講はご病気で休講になってしまいましたが。
まず、驚いたのは
後世「紫式部」と称されることになる女性は、確実に実在した、という所から始まることです。
ああ、学者とはこうなのだな、という感がしました。
大河でいつも大きな目をむいて何やら正論をぼとぼと言いながら、いつも何か書いている人は藤原実資。書いていたのは『小右記』と呼ばれる日記で982年から1032年までが実在し、この時代の第一級資料。
ここに「藤原為時の娘」として出てくるのでその実在性が確認できるのだそうです。
さらに驚いたことには『源氏物語』には中世以降の写本しか存在せず、原文が分からない、全編、紫式部が書いたのかどうか、という問題まであるそうです。
この本では道長(と朝廷の動き)、紫式部について時系列に沿って交互に述べられていきます。当然、テレビドラマのような二人の間の交流関係はありません。しかし、これらは省いて
源氏物語に絞って二人のことを考えると、
*この膨大な物語を書くには大量の料紙が必要。
当時紙は市販されていたわけではなく、又非常に高価なものでした。→いずれかから大量の料紙を提供されそれに『源氏物語』を書き記すことを依頼されたのではないか?そうしてその依頼主が藤原道長。
内容と宮廷政治史との関連、→出仕後の見聞による宮廷社会の姿の繁栄
*道長はこの物語を一条天皇に見せることにより彰子への寵愛つなげることであったろう。
道長なくして『源氏物語』は生まれず『源氏物語』なくしては道長の栄華もなかった、ということになるのです。
その他、実資と彰子の間をとりついでいたのは紫式部だったと、この本では推察していましす。
源氏物語と当時の朝廷とを関連づけているところもあり、昔買ったけれど読まずに本棚の一番上でホコリをかぶっている『源氏物語』読もうかな、という気分になってきました。
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kikuko様
私は高校時代、日本史の先生が嫌いで、受験も世界史と地理で受験しましたから、日本史で習ったことは殆どおぼえていません。
参考書として数年前、山川の日本史の教科書を買いました。
ずいぶん細かく教えているのですね。(こんなに覚えなくてはいけないなんて、テスト勉強大変!)
御堂関白記や権記もこの本で初めて知ったような。
現在なら、 書いていらっしゃる「やまと絵」の展覧会にも出かけて 『御堂関白記』拝見も拝見したのに、と少し残念に思っております。
投稿: yk | 2024年8月 8日 (木) 22時40分
最近は歴史も古文もご無沙汰で、新しい学説は疎いのですが、ドラマに刺激されて、興味がわいてきました。ドラマの時代考証を担当していらっしゃる倉本一宏氏は『小右記』の研究では第一人者なんですね。高校の日本史の教科書は、「藤原氏の栄華」の項では、いずれも『小右記』に出てくる「この世をば・・・」という道長の歌を取り上げていて、私なりの実資のイメージがありましたので、最初はギャップに戸惑いました。
余談ですけど、「次の授業は藤原氏の栄華です」と予告したら、当日、教室が空っぽ。藤原氏の映画が見られると思って、視聴覚教室に行ってしまったというトンデモを思い出しました。
このころに書かれたもので原本が残っているのは、道長の日記14巻だけだそうです。昨年の秋に東博で開催された特別展「やまと絵」には、『小右記』や『栄花物語』の写本とともに『御堂関白記』の道長自筆本も出展されていました。行成の日記『権記』に出てくる「倭絵四尺屏風」が「やまと絵」という言葉が文献上確かめられる最古の例で、道長が彰子入内に際して四尺屏風を用意させた様子を記した記録として、上記の四つの文献の当該記事を拝見したので、「光る君へ」の四尺屏風にまつわる場面は感慨深いものがありました。近衛家に伝えられた『御堂関白記』は現存する世界最古の自筆日記で、国宝に指定されていますから、めったに見られないものを拝見できて幸運でした。
投稿: kikuko | 2024年8月 7日 (水) 16時31分