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2024年10月

2024年10月28日 (月)

『ウィンダム図書館の奇妙な事件簿』

読み始めてすぐ嬉しくなりました。こういう本が読みたかった!と。
このところスーザン・イーリア・マクニールのマギー・ホープシリーズ(7冊)を読みふけっていました。
『スパイ学校の新人教官』を含むシリーズです。面白くはあったのですが、どうも主人公のキャラクターが好きになれなかったのです。私が私がと出てくるところ。本人はイギリス人だかアメリカ人だかよくわからない、というようなことを言っていますが、ヤンキー娘。

今回の本ではケンブリッジ生まれのケンブリッジ育ち、正真正銘のイギリス人女性が主人公です。

ウィンダム図書館の奇妙な事件』 ジル・ペイトン・ウォルシュ著 創元推理文庫

作者がジル・ペイトン・ウォルシュ、聞いたことがある名前です。そう、昔娘が中学か高校時代に、親の私も夢中になって読んだ『夏の終わりに』や『海鳴りの丘』の作者です!イギリス、コーンウォールのセントアイブズが舞台でバージニア・ウルフの『灯台へ』もスカイ島ではなくここで書かれたようなのです。セントアイブズには2006年に行きました。
横道にそれました。
ジル・ペイトン・ウォルシュがミステリーも書いていたとは驚きです。Am〇zonでみつけて早速購入。

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イモージェン・クワイは医師になりたくて医学部にいたのですが、資金の関係で結局保健師になってセント・アガサカレッジで学寮付き保健師(カレッジ・ナース)として働いています。
落ち着いた思慮深い女性のようです。

このカレッジにはウィンダム図書館という古書ばかり集めたおかしな規約を持つ図書館があるのですが、そこで死体が発見されます。殆ど人が訪れることはない図書館なのですが。
  
イモージェンは仕事柄、体の病気だけでなく心の病というか心配事の相談にも学生たち(教授たちも)は訪れます。そういった事情から学内の人々のことはよく知っています。

死体の様子から事故死ではなく殺人だと見て取ったイモージェンは推理をし始めます。

亡くなったのですからお葬式はあります。こでの牧師さんのお説教も書かれていました。信者でなくてもこういうお話は心にしみるものがあります。物語の内容に奥行が与えられていました。

彼女を取り巻く人たち、三十路をすぎた独身の彼女ですが、なんとなく心を寄せていると思われる人たちもいます。彼らと インにお食事に行ったり、また何かというとお茶を入れてビスケット。まさにイギリスです。

ケンブリッジは昔行ったことがあります。懐かしさも加わって楽しい読書でした。

さらなる死体も出てきたりでストーリーも面白かったのですが、それよりイギリスらしい雰囲気が良かったのです。

シリーズものです。2冊目も手に入れました。

2024年10月26日 (土)

ブッラータチーズ

kikuko様のblogにお食事にいらして、ブッラータチーズを召し上がられた記事がありました。あら、懐かしい!

ブッラータチーズはイタリア・プーリア地方のチーズです。2017年の南イタリアロマネスクの旅で初めていただきました。
旅から帰って駒込のプーリア料理のお店でお話していると、夜しかださないのですが、それでは作りましょうか、とすぐ作って出していただきました。モッツアレラチーズを伸ばして中に生クリームとモッツアレラをいれればできるらしいです。
其の後は デパートの北海道fairか何かでお目にかかったくらいで、手に入りにくいものと思い込んでいました。
でももしかしたらKA〇DIならあるかもしれない、と調べてみるとありました!主人が横浜駅まででかけたので買ってきてもらいました。
冷凍でしたのでまる24時間かけて冷蔵庫内でゆっくり解凍。

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生ハムサラダとあわせるのもいいらしいのですが、ちょうどあった柿と合わせてみました。

柿はいい熟し具合だったのですが、すべるので上手に並べられませんでした。でも色の取り合わせはいいです。

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きってもクリームがトローリというわけにはいきませんでした。

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塩・胡椒、柿の甘味とあって美味しくいただけました。もう一つ冷凍庫で 眠っています。(楽しみ!)
125gは二人分でも大きくてもう少し小さいサイズがあればいいのに、とも思いました。

2024年10月14日 (月)

『大使とその妻』水村美苗著

水村美苗さんの新作が出たことを新聞広告で知って早速注文しました。

ここのとところミステリーばかりで、いわゆる文芸書というのでしょうか、そういったジャンルのものにこれは?というものをみつけられなかったものですから飛びついたというわけです。

大使とその妻』水村美苗著 新潮社

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ケヴィンという日本に住むアメリカ人男性が語り手です。
裕福な家庭に育ち祖父の信託財産があるため、生活のために働く必要がない人間だそうです。
家族の中で違和感を持ち日本文学専攻であったため日本に暮らすようになっています。
普段は東京に住んでいますが、夏を過ごすために信州追分に小屋と称する小さな家を持っています。
かなり人里離れた場所で、まわりには他に別荘などない場所ですが、小川をへだてたところに一軒だけあります。
昨今の事情(熊・強盗)からするとちょっと危険な気がしますが、そういう心配はないのか一人で付近を歩き回っています)。
唯一の隣家に住人夫婦がやってきます。鬱陶しい気持をもってはいたものの気になって覗きに行ってしまいます。

その家には月見台というべきテラスがあり、そこで和服姿の夫人が笛を吹き、能を舞う姿をみて惹かれて行ったのです。
姿勢が良くほっそりして美しい夫人に惹かれて
いますが、ケヴィンは同性愛者(露わな表現で好きではないのですが、本書ではこう書かれています)ですから夫がいないときでも家を訪ねていくようになっていきます。

その佇まいから京都の旧家の出かと推察していたのですが、ブラジル出身、つまり日系ブラジル人であることを知ります。 
そうして数奇ともいえる彼女の半生が語られます。

ブラジルって昔日本から移住していった人が多かった国だということは知っていましたが、移民という言葉が一種差別用語であるとは知りませんでした。暮らしが立ち行かなくなり海を渡った人達、ということだからでしょうか。

後に夫人,貴子を育てることになる山根夫婦は妻も元教員で底辺の人ではないけれど現状に安住してはいられない性格から、船に乗ったのが1933年。その船に同じ島根県出身で12歳の健吾が叔父とともに乗っていて話をするようになります。
その縁で後ブラジルで娘の貴子を山根夫婦に預けることになります。
当時の日本人社会を揺るがしたある事件にかかわることになったため娘を手元においておくことができなくなったからです。 美しい気品のある娘でした。その娘を「ちゃんと
した日本人に育ててほしい」と頼んでいったのです。
健吾はいうなれば「口減らし」として少年の頃ブラジル行の船に乗せられたわけですが、日本に対して憧憬の念のようなものを抱いていたのでしょうか?
 当時のスター、原節子のような美しく気品のある女性に娘が育ってほしかったのです。

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私は知りませんでしたが、お能を習わせる、ということはかなり一般的なことだったようです。
修理工をしながら健吾も山根夫婦に預ける前から貴子にお能を習わせていました。
主人の両親は能を舞ったりしていました。主人の会社ではテニスクラブがあるようにお能のクラブもあったそうです。主人も入ろうと思ったのですが、流派が違う(宝生流ではなく会社は金春流)ので入らなかったとか。
私の両親は加賀金沢(加賀宝生流というのがあるそうです)の出身ですが、特に父は昔流が嫌いでいち早く(当時社宅では一番早かった)ピアノを買って列車で一時間かかる町までピアノを習わせに行かせていたくらいでしたから、私はお能とは無縁に育ちましたので、ちょっと奇異に感じました。

出てきたので、あらっと思ったのは飲んでいるウイスキーがブッシュミルズとグレンフィディックだったことです。
グレンフィディックはスコットランドのウイスキーでイギリスツアーで醸造所に行ったことがあります。懐かしいー。
ブッシュミルズはアイルランドのウイスキー。北のはて、ジャイアンツコーズウエーの近くに醸造所があります。日本ではあまり手に入らないウイスキーです。あっても10年物、10年ではさほどではないそうですが、19年となると実に美味しいそうです。海外旅行のお土産に買って大事に抱えて帰ったことがあります(私はウイスキーのような強いお酒は飲めません)。

作者は言葉にはとても気を使っていらっしゃる方だと思いますが、一つ、それでもって、という言葉を使っているところがあって気になりました。(どの文脈で誰が、ということは覚えていないのですが)女学校時代この言葉を使っている方が一人いらしたことを思い出したのです。おうちはお商売をなさっていらっしゃる方でした。それで下町言葉?東京方言?という認識があったのです。私は使ったことがありません。

貴子たちの山荘を蓬生と名付けていること、その周辺の景色、ところどころに挟まれている和歌などなかなか雰囲気がってよかったです。私も人生の最期をこのようなコンクリートの箱ではなく自然に囲まれてくらせたら、と思いました。まあ病気を考えると、今のところがいいのでしょうけれど。

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