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2024年11月

2024年11月29日 (金)

『とるに足りない細部』 アダニーヤ・シブリー著

読み終わっておおきく息をついて、声も出ませんでした。よかったです。

とるに足りない細部』 アダニーヤ・シブリー著 河出書房新社

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第一部と第二部に分かれています。
 ネタバレありです。

第一部
イスラエル南部のネゲブ砂漠、ガザ地区のすぐ外側、エジプトに近いイスラエル軍宿営地で起きた事件が語られます。
将校と少数の兵士からなる一団はエジプトとの境界線を画定し境界侵犯を防ぐこととアラブ人の残党を一掃することが使命です。植林し、農業や工業のプロジェクトを実現させるそのために有害な敵を倒すのです。
ネゲブを旱魃の犠牲や、アラブ人とその動物たちに無駄遣いさせてはならない!のです。 
1949年8月9日から数日間のできごとです。
見つけたアラブ人たちを銃撃します。そこに少女が一人いたのですが殺さず宿営地に連れ帰ります。
将校が強く命じたにもかかわらず兵士たちは順に少女を犯したうえ結局殺してしまいます。
虫に刺されて強い痛みがあり、また腹痛にも悩まされ意識ももうろうとなるなか、将校になすすべはなかったようです。 

第二部
現代。新聞でこの記事を読んだパレスティナ人の女性は、このレイプの日の25年後が自分の誕生日であることに気づきます。痛ましいとしか思われないような事件の細部より、この日付の一致といったとるに足りない細部のほうが彼女をこの事件にひきつけたのです。
その縁にひかれるように、現地へ向かうのです。
病的に神経質と思われるこの女性は境界線に非常にこだわりがあります。

ここでは物事の間に多くの境界線が引かれていて、その線を意識しながら、それに沿って動くことに意義がある。そうすれば、手痛い結果を防ぐことができるし、何はともあれ安心感を得られる。
イスラエルはA地区、B地区などとわかれていて、簡単には他の地区にはいけないらしいです。それで別の地区の女性に身分証を借りてでかけます。境界線が怖くて震えながら。

砂漠、このあたりは礫漠でしょう。山を隔てた向こうヨルダンの景色を思い出しながら読みました。

どちらにもキリストノイバラという木が出てきます。その葉でキリストのいばらの冠がつくられたということになっているそうですが、この名前は暗示的です。

ラストに声もでませんでした。

著者はパレスティナ人で現在はベルリンに拠点を置いて著作活動をおこなっているそうです。イスラエル南部をさまよう女性は、かの地に置いてきた自分なのでは?という気もしました。

例によって中途半端な紹介ですが、
薄い本で数時間で一気読みしてしまいました。
でも心は重いです。
暫く他のものは読みたくない気持ちです。次の本はもう届いているのですけれどね。

2024年11月28日 (木)

『告発者』 ジョン・グリシャム著

ジョン・グリシャム、リーガル・サスペンスで有名な作家です。「ペリカン文書」など映画化されたものもありますが、最近ずっとご無沙汰です。それでおもいついて読んでみました。

告発者』ジョン・グリシャム著 新潮文庫

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 とりあえず 表紙裏の内容紹介から
判事の不正を調べる「司法審査会」。フロリダ州司法審査会にマクドゥーヴァーという判事がマフィアと組んで、無実の人間に死刑判決を下したという情報が寄せられた。不当判決はほかにもあり、見返りとして多額の賄賂を受け取っているという。この告発は真実か?調査官のレイシーが審査を進めていくと、先住民が経営するカジノとの関係が見えてくる。(上巻)

マクドゥーヴァー判事と結託しているマフィアのボス、デュボーズ。彼は先住民のカジノから上納金を巻き上げ、金と暴力で部下を支配していた。邪魔者は躊躇なく始末し、海外企業を使って、身を隠しているため、正体は誰にも知られていない。デュボーズの罠により瀕死の重傷を負ったレイシーだが、件名な捜査を続け、、、。(下巻)

手練れの作家の作だけあって、なめらかに読み進められました(訳がいいのかもしれません)。と言っても中身はなめらかではありません。
フロリダって富豪や退職者の住むリゾート地、という認識しかありませんでしたが、原住民(インディアン)も居留地もあるのですね。そうして全米で初めて印でインディアン部族による高額賭率の「インディアン・カジノ」が発祥した場所でもあるそうです。
カジノっていやですよね。風紀が乱れそうで。横浜市でもIRが話題になりましたが、反対の方が市長に当選できたので反故になって良かったと思っています。

やはりここでもカジノによるお金に目のくらんだ判事の情報を得て調査をし、危ない目にもあうのですが、脇役として登場する人物としてレイシーの兄なる人がちょっと面白い。不動産取引で破産も何度か経験している人だけれど、妹を愛していると時々やってきます。迷惑がられているけれど、力にもなる存在。最初の情報提供者はボート住まい。いかにもフロリダ。

ちょっとグーグルマップでストリートビューもしてみました。まばゆいばかりの美しく明るいビーチ。でも遊び場には悪い人もいるのですね。こわいこと。

小説は面白くて一気読み。グリシャムもまた読むつもりです。

2024年11月25日 (月)

『終結者たち』 マイクル・コナリー著

外出もままならないまま、相変わらず手あたり次第本を読みあさっております。最近読んだこの本、これもアマゾ〇さんからのご推薦だったような、、、。この小説の主人公ボッシュのシリーズは当代最高のハードボイルドだそうです。

終結者たち』マイクル・コナリー著 講談社文庫

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表紙裏の紹介から
3年間の私立探偵稼業を経てロス市警へ復職したボッシュ。エリート部署である未解決事件班に配属された彼は、17年前に起きた少女殺人事件の再捜査にあたる。調べを進めるうち、当時の市警上層部からの圧力で迷宮入りとなっていた事実が判明。意外な背後関係を見せる難事件にボッシュはどう立ち向かうのか。(上巻)

ボッシュと相棒のライダー刑事は、少女殺人事件に関与していると思しき人物を突き止める。マスコミに捜査状況を流すことで、ふたりは容疑者の動きを探る作戦にでるが、、、。難航する操作、さらに警察内部から高まる批判。ボッシュに逆転の一手はあるか。(下巻)

少々甘いと思いますが、本部長は未解決事件のことを思うと「忘れられた声が奏でるコーラス」という言葉を思い出す、と言います。

ボッシュがとりあげた事件は17年前の少女殺害事件。

DNA、指紋、条痕比較。どの分野をとっても現在は当時より実質三倍も進化しています。それらを駆使して再捜査せよ、というわけです。

娘が殺されて犯人が分からないままになっていると家族には哀しみの持っていき場がありません。
このケース、レベッカ
殺害事件でも犯人が分からないまま、結局両親は離婚。家庭崩壊が起こっているのです。
レストラン経営者でシェフでもあった父親はホームレスの仲間入り。

母親は娘が出て行った当時のまゝに娘の部屋を保っているのですが、それが一つ解決のポイントになっています。

ミステリーですから詳細は省略。

引き込まれて読んでしまいました。この作家の作品はもう少し読んでみたいと思っています。

 

2024年11月21日 (木)

『掌侍・大江大江荇子の宮中事件簿』

時折アマゾ〇さんから時々「この本はいかがでしょうか」と本のお知らせが届きます。それでこれを読んでみました。
表紙を観て「これは、少女漫画?」とおもいましたが、楽しいお話だったので結局全6冊買ってしまいました。

掌侍・大江大江荇子の宮中事件簿』小田菜摘著 集英社オレンジ文庫
オレンジ文庫というのは高校生対象の文庫らしいです。

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主人公掌侍・大江荇子(こうこ)は21歳、内裏女房としてすでに8年。
母親はなく継母につらくあたられ、父は母の言いなり、そのため大和の祖母の家で過ごし裳着を終えるとすぐ宮仕えを始めています。親のこともあって生涯結婚はせず女房として最後まで勤め上げ給料を蓄えて自力で暮らそうと心に決めています。
内裏女房です。女房グループは他に中宮、二人の女御にもあり、なかが悪くてささいなことで争いになったりもします。
いうなればこれは平安朝版オフィス小説です。

内裏女房とは主上≪天皇»に仕える女房たちです。
荇子は文丈博士の娘で能書家です。それで天皇にもその書は知られています。
あるきっかけで天皇とも親しく接するようになっています。
少納言として主上に仕える五位の藤原征礼(まさゆき)は同い年、受領の息子で大和に父親が赴任していたため、幼い頃一緒に野山を駆け巡った友です。

天皇になるのは必ずしも長幼の順ではなくバックにつく人の力によるものです。
今上の母は女王だったので左大臣の娘などという権力バックの女性の子と比べて帝になるチャンスはほぼなく異母弟であった先帝の一時的東宮だったのですが、思いがけなく天皇は早世。急遽天皇になったので取り巻き大臣などはいません。征礼は東宮時代から仕えていたので、今も一番本心を打ち明けられる人間です。   

宮中というのは、江戸時代の大奥とは違って男子禁制、というわけではなく、幼馴染ということもあってよく征礼は荇子を訪ねてきておしゃべりをして情報もあたえられます。→ロマンスの要素あり。(主上もからかいながら暖かく見守っている)

上臈の藤原如子は内大臣の娘で冷たい感じのする美人で頭も切れます。本来なら女房になるのではなくお妃がねですが、親を10年前に亡くしているので、女房として働いています。本人はこの方がお給料はいただけて変な気遣いもしなくて済む、とさばさばしています。
この4人が主要メンバーで宮中のちょっとした事件にかかわり解決(おもに荇子が)していく話が各巻3,4編ずつ入っています。
謎解きなので詳細は書けませんが、 第一話だけ
雀が死んでいた事件。女御間のいやがらせとされて喧嘩になるのですが、それがおしろいを食べたことによることと、見抜いたのは荇子。
おしろいは如子が女御から賜ったものです。如子が窮地にたたされたわけですが、、、。
下々が使用するものには使われていないが女御・中宮などのおしろいには鉛白がつかわれているのです。これは顔に塗るには問題はないけれど口に入れば毒。

これをきっかけに冷たい美人できつい言葉を言う如子と親しくなります。 

このようにちょっとした、ちょっとどころではない事件を描きながら宮中のに人間模様、行事などが書かれていて他愛ないといえば他愛ないのですが、面白く読め、体調不良をかこつ身にはいい気晴らしになりました。 

2024年11月 6日 (水)

『リスボンのブックスパイ』

創元推理文庫にはさまっていた小さな案内から見つけました。Amazonでも☆四つ半のおすすめです。即購入。
読み始めてすぐ、当たり!と思いました。面白くまた読みでがありました。

リスボンのブックスパイ』 アラン・フラド著 東京創元社

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とりあえず表紙袖の内容紹介を
1942年、第二次世界大戦下。ニューヨーク公共図書館で働く司書のマリアは、大統領令に基づく任務を帯び、ポルトガルのリスボンに旅立つことになった。その任務とは、身分を偽り、戦略分析のために枢軸国の刊行物を収集すること。
報道写真家の母をスペイン内乱で亡くしたマリアは、危険を冒してでも戦争を終わらせたいという強い想いを抱いていたのだ。

同時期、リスボン。書店を営む青年ティアゴは、書類偽造の天才であるローザともに、迫害から逃れようとするユダヤ人避難民を命懸けで援助していた。マリアは街で本や新聞を集めるうちにふたりと出会い、戦争を終わらせるためのさらなる任務に臨むことにーーーー

この小説は1941年から44年の出来事でこの時代ポルトガルの首相サラザール(この政権はその後も長く続いた)は反共の独裁者。秘密警察を使って国民を監視していました。ポルトガルのことはよく知らないのですが、このことは映画〈リスボンに誘われて〉などで少しだけ知っていました。
リスボンに誘われて を観て: 緑の風

『リスボンへの夜行列車』: 緑の風

位置的にはリスボンはヨーロッパの西の果て。当時は殆ど船旅でしたから、新大陸への出発点の町でした。

戦争中って日本の一般市民はどう考えていたのでしょうか。お国のために役に立ちたい?それよりひたすら早く終わることを願うのみだったのでは?という気がするのですが。

ナチスドイツは焚書を行い政府にとって都合の悪い書物は焼いていました。そのようなことによって貴重な書物失われることのないようアメリカでは写真に撮ってマイクロフィルムに保存する、という仕事をしていました。
今ヨーロッパで手に入れられる枢軸国の書物をマイクロフィルムにおさめる仕事をマリアはしています。

マリアは父親がポルトガル人、既に亡くなっている母親はドイツ人の報道写真家でした。スペイン内乱中に母を失ったマリアは〈どんな犠牲をはらってでも戦時協力に貢献できる方法を探す〉という決意をいだいていたのです。
それでかなり強引な方法でリスボンでの仕事を手にいれました。

マイクロフィルムってすごいのですね。100年たっても劣化せず読めるらしいです。
司書であってスパイではないのだから、本の写真をとる意外のことはしないように、と強く言われていたのですが、、、、。

本屋のティアゴとの出会い、スイスの銀行家との危ない付き合い。

波乱万丈というのはおおげさかもしれませんが、面白いし、中立国の戦時下、特にティアゴはユダヤ人を海外に逃れさせる仕事をしていることからも厚みのある作品でした。

2024年11月 4日 (月)

『貧乏カレッジの困った遺産』

ジル・ペイトン・ウォルシュによる〈イモージェン・クワイ〉シリーズの三冊目は10月31日発売。予約注文をしていたので当日届きました。早速ワクワクしながら読みました。

イモージェンはケンブリッジ大学セント・アガサ・カレッジの学寮付き保健師、落ち着いた思慮深い女性で私は好きです。
ちょっとググってみましたら、作者のウオルシュさんはオックスフォード大学のご出身でした。

貧乏カレッジの困った遺産』 ジル・ペイトン・ウォルシュ著 創元推理文庫

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1冊目は主にカレッジ内が舞台、2冊目はイモージェンの家が舞台でしたが、今回は家やカレッジだけでなくあちこち動きます。
カレッジの食堂でのディナーではイモージェンもその一員である上級職員はハイテーブルに座る権利があります。いつも気楽な家で夕食をとることが多いのですが、学寮長に頼まれて卒業生の大富豪が出席するテーブルにイモージェンも着きます。
本人にその自覚はないようですが、イモージェンは美しい方のようで早速富豪は言いよって、というか「私のところに来ないか」と誘いかけます。
大富豪のお供は昔イモージェンがつきあっていた(ここで彼女は現在35歳ということが書かれていました)アンドルー。

ところがその大富豪サー・ジュリアス・ファランが其の後ほどなくして崖から落ちて亡くなったという報が入ります。
腑に落ちないものを感じたイモージェンは現地に行き調べ始めます。
一方カレッジでは会計係が行方不明に、、、。どうやら不正にお金を使い込んだらしくてカレッジは危機に瀕します、、、。

今回はこれまでより少し複雑 読みでがありました。 次作は来年に翻訳が出るそうです。 待ち遠しい、、、。

2024年11月 1日 (金)

『ケンブリッジ大学の途切れた原稿の謎』

ジル・ペイトン・ウォルシュ〈イモージェン・クワイシリ-ズ〉の2冊目を読みました。

ケンブリッジ大学の途切れた原稿の謎』ジル・ペイトン・ウォルシュ著 創元推理文庫

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イモージェンは親から譲られたは大学近くの比較的広いテラスハウスに住んでいます。収入の足しにと、また一人暮らしは寂しいことから何人かの下宿人を置いています。
今回はこのイモージェンの住まいから始まります。

イモージェンはキルト作り愛好会にはいっていて、図案作りを仲間としています。
キルトって三角や四角、ひし形などの小さい布をはぎ合わせて作ります。でも小切れの形はそれ以外にもあるようです。(実はこれが伏線)

一方、下宿人の一人で大学院生のフランは奨学金だけでは足りないので仕事を探しています。院生ともなると指導教官が仕事を斡旋してくれることが多いらしのですが、彼女の指導教官はこの大学に来たばかりでコネはなさそうです。

ところがある日彼女がこの指導教官から仕事をもらったと嬉しそうに帰ってきました。
或る数学者の伝記を書く、という仕事です。
しかしその原稿にはある夏の記録がスッポリ抜け落ちています。

またその伝記を書くことになっていた前任者が亡くなっていたことが分かり、さらにその前の人も、、、と知って、ウェールズに調査に行ったフランの身をイモージェンは案じます。
心配でウェールズまででかけたフランを追って行ったイモージェンは彼女には会えなかったものの、そこで素晴らしいキルトを見つけます。
キルトの布のつなぎ方は一種幾何学的なところがあります。平面充填形、ということに関するようです。

数学上の発見と亡き数学者の妻の執念による、、、、。

ケンブリッジはオックスフォードなどと比べるとジェンダー意識が低かったようですが、そのこともポイントの一つです。 

グーグルマップでケンブリッジの町を散歩しながら楽しみました。

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