ウクライナやガザのことを思い浮かべながらこの本を注文してみました。
難民って身近な存在ではありません。シリア難民、ボートで地中海を渡って遭難したなどという痛ましい話があったことは記憶にありますが、日本からは遠い話なのでそれっきりで深く考えはしませんでした。
本書を読んで知りましたが、日本は殆ど難民を受け入れていないと、言っていいような状態だそうです。
この本は直接、ウクライナやガザの人々のことを書いているのではなく、難民の定義や受け入れなどについて書かれているものでした。(考えてみればガザの人たち外に出られないですよね)
『なぜ難民を受け入れるのか』橋本直子著 岩波新書
表紙裏から
世界であいつぐ迫害や人権侵害。「自国第一」を掲げるポピュリズムの台頭。状況が年ごとに複雑になるなか、国際社会は葛藤を抱えつつも難民保護の取り組みを続けてきている。各国はいかなる論理と方法で受け入れをおこなってきたのか。日本の課題は何か。政策研究の知見と実務経験をふまえ、多角的な視点で難民「問題」を考える。

本書は難民に関する定義、制度、その問題点、各国の事情などがとても厳密に記述されていて、簡単に要約することは困難です。また厳密性を期し想定されることを全て盛り込むためか、私には文章が回りくどい感じがして専門家の文章はこういうものかと思いながら読みました。
章立てはこのようになっています。
第一章 難民とは誰のことか
第二章 自力で他国にたどり着いた難民を世界がどう保護してきたか
第三章 まだ他国に入る難民を連れてきて保護する方式について
第四章 日本がいかに難民をうけいれてきたか
第五章 難民受け入れの懸念としてあげられる治安悪化と財政負担について
第六章 極右政党が台頭する北欧諸国がなぜ脆弱な難民をまだ積極的に受け入れているのか
「難民」とは 、人種、宗教、国籍もしくは特定の社会集団の構成員であることまたは政治的意見を理由に迫害を受けるおそれがあるという十分に理由のある恐怖を有するために、国籍国の外にいる者であって、その国籍国の保護を受けることができない者またはそのような恐怖を有するためにその国籍国の保護を受けることを望まない者及びこれらの事件の結果として常居所を有していた国の外にいる無国籍者であって、当該常居所を有していた国に帰ることができない者またはそのような恐怖を有するために当該常居所を有していた国に帰ることを望まない者。(難民条約第一条の定義)後にさらに適応範囲は広げられる。「暴力が一般化・常態化した状況」、「内戦」「重大な人権侵害」など。
政治的意見を理由による迫害その国の政府による救済に差別的な側面がないか、ということ。難民該当性にはこれが重要なポイントでウクライナ難民に関してもこれが問題になった。
日本人の殆どは宗教に関して無頓着と言えると思いますが、宗教に関してある映画を思い出しました。
「約束の旅路」イスラエルでは1984~1985年にかけてエチオピアに住むユダヤ教徒をイスラエルに連れてくるモーセ作戦というのがありました。
その時、亡くなったユダヤ教徒の少年の身代わりとして難民キャンプにいたキリスト教徒の少年がイスラエルに送りだされ、宗教的アイデンティティに苦しむという内容でした。
難民を受け入れるとは、迫害を恐れて庇護を求めてきた外国人に安定した法的地位を与え、地元民と同等の権利を保障し、隣人として一緒に社会を構成することである。
日本は海外にいる難民の「支援」。つまり財政拠出を通じて、海外にいる難民の衣食住や教育、医療、インフラの整備などを間接的に支えることを得意としてきた。(日本はトップクラスのドナー国)
しかしながら難民の受け入れ数は非常に少なく「難民鎖国」といわれるそうだそうです。第三国定住経由での難民受け入れは年間60人、日本社会への適応力と就職の見込みのある者だけです。
第三国定住とはとりあえず国を出て一時的に庇護され(難民の8割は途上国で庇護されている)そこから第三の国に定住するということ。例年10万人程度しか認定されていません(必要の10%しか満たしていない)。日本はその10万人のうち60人だけ。
以下は私が特に目についたことの一部を簡単に記します。
ウクライナ(避)難民は半年余りで2000人を超えています。それも迅速、寛大に住居、医療、職業相談など多岐に渡る支援がなされたました。一方アフガニスタンがタリバンに制圧され各国の政府関係機関は退去を余儀なくされたとき、日本では現地職員の退避にさいして申請の条件を厳しくして来日をできる限り阻止する意思があったと思われ、さらに来た者に対しては早く帰るよう促されたといいます(帰れば身の危険があるというのに)。
支援の寛容さ、迅速さ、柔軟さなど、これは「無差別原則」に抵触するおそれまであるのです。
難民保護に関しては「ノン・ルフールマン原則」という原則が国際的に確立しているが、これは迫害にあう可能性がある国に強制送還してはいけないという原則です。
ともかくウクライナ避難民2000人余り(差別の要件を満たすかどうかも定かではないようですが)を受け入れた、ということはその程度までは受け入れ能力がある、ということの証左にもなっています。
移民が増えると犯罪が増えるという懸念については データ上からははっきり指摘することはできないようです。
財政負担に関しても、子どもが学校を出て就職して税金を払うようになるので最初に支援費用が必要であっても日本の国益に反することにはならないそうです。
北欧について
これまで福祉大国と言われ移民を多く受け入れてきたスエーデン(スエーデンでは2017年時点で移民の全人口に占める割合は33%)、フィンランドでも政策を転換して現在はお金を払ってでも移民は出ていってもらう、という方針になっています。
デンマークは国際法違反ぎりぎりの難民排除政策をとっています。
そういう中でノルウエイは近年、年間3000人前後と設定して移民を受け入れています。
脆弱なものに対して優先度が高いが純粋な人道性だけでなく実利的な要素も加えられています。技能、言語能力、学歴など。これらは国全体の長期投資になると考えられるからです。王室も熱心な難民保護推進派です。
世界で約一億八百四十万人(2022年末段階)が何らかの理由で強制的に家を追われている(これには国内避難民も含む)そうです。
この本の最初に「生まれの偶然性」ということが書かれています。このことに思いをいたすなら、他人事として素通りすることはできません。ではどうすれば、、、?結局寄付することしかできなさそうです。
とても勉強になる本でした。
最近のコメント