『リスボン日和』
むごたらしい殺人事件でなく心なごやかになりたくて、この本を選んでみました。『リスボンのブックスパイ』を読んでリスボンに惹かれた、というところもあります。
『リスボン日和』イム・キョンソン著 マガジンハウス

裏表紙も

韓国人の書いた作品は以前、在日韓国人が書いた『ジニのパズル』を読んだだけです。北朝鮮がテポドンを発射したりして在日韓国人たちは肩身の狭い想いをしていた頃の話です。それでもしや、暗いところもあるのでは?とも思いましたが、全くそういうことはありません。
著者はおとう様を亡くして半年、喪失の哀しみに閉ざれている時期でした。突然10歳の時に両親と過ごした町リスボンに行こう、と心に決めます。両親と三人で過ごしたリスボンの一年間ほど平穏かつ幸福だったことはなかったのです。ちょうどその時の自分と同じ10歳の娘を連れて。
これはそういった意味で一種、センチメンタルジャーニーともいえると思いますが、リスボンの気配を感じられてなかなかよかったです。
名所、旧跡を訪ねる旅ではありません。昔の記憶をたぐりよせながら、街から街へ、又記憶にある建物のドアをそっと開けてみるといった、旅というより歩きながらリスボンに浸る、空気を感じるという滞在記です。
美術評論家であり小説家でもあるジョン・バーニーはリスボンのことを「亡者たちの特別な停車場」であり、ここではほかの都市でよりもさらに果敢にその姿を現す」という言葉を残したらしいが、こうして母のことをしきりに思い出すところをみるとその言葉はあたっているかもしれない、、心地よい風の感触や、目の前に広がる柔らかな色合いの夕日、漠然心の中にしまっていたある想念を解き放ったこと、それによって胸の片隅に感じた痛みといった感覚を鮮明に思い出しながら、折なく思うだろう。
ちょっとグーグルマップでストリートビューをしてみました。リスボンという町、コンクリートとガラスで出来た近代的な建物ではなく昔ながらのどっしりした4階建てくらいの石造りの趣のある建物が並んでいる街でした。
私はポルトガルには行ったことがありません。ああ、こういう街並みを歩いてみたかった、と少し残念な思いがしました。
原題は『やさしい救い』これでは意味がわからないと、このタイトルになさったそうですが、読み終わると原題の方が適切だったかもしれない、と思わされました。
名所・旧跡巡りだけでなく、このように町の空気に浸る旅もしてみたかった、と我が旅をおもいだして少し残念な気がしました。
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aiai様
本のご紹介ありがとうございます。『ほんのささやかなこと』は朝日の書評にでていので、すでに注文済み、コルムトビーンを注文しました。読むのが楽しみです。『喉に棲む、、、』も注文するつもりです。
コルムビートンって 『ブルックリン』の作者だったのですね。
旅行は ロマネスク中心になってしまって、 ポルトガルも北部スペイン国境近くには Romanesque教会があり、そこへ行くtourはあったのですが、そうはいってもまずはポルトガル全体をみるべきでは、と躊躇しているうちに、旅行不可能状態になってしまいました。残念です。
投稿: yk | 2024年12月22日 (日) 11時46分
ゆったりとした気持ちで読めそうな本ですね。10年ほど前にポルトガル国内をツアーで巡ったことがあります。あまり刺激のないのんびりとした国の印象がありました。不思議なことに、行っていた時は感激が少なかったのですが、後から「あー懐かしいな」と思ってしまった経験があります。もう行けることは無いと思うのですが、また行きたい所です。アイルランドの小説、2点。「ほんのささやかなこと」、「喉に棲むあるひとりの幽霊」です。前者は、とても薄い短い小説です。後者は、まだアマ〇ンから届いていません。コルムトビーンの「母たちと息子たち」も今読んでますが、これは厚くて中編が沢山入っています。
投稿: aiai | 2024年12月22日 (日) 09時30分