『行成想歌』『海の百万石』
体調は少し上向きになってきておりますが、まだ半人前状態です。
体調のよくない時には日本のものの方が優しい感じがしてこの二冊を読みました。
『行成想歌』佐藤雫著 光文社
帯に書かれている紹介から
我が蔵人頭は、優しいが頼りない。しかし、私の目に狂いはなかった。幼いころに父を失った藤原行成は、平安貴族としての官位栄達を諦めていた。しかし、行成の姿を見ていた一条天皇は、彼を側近である蔵人頭に任ずる。その行成は、一条天皇の自制と苦悩に満ちた生涯を目の当たりにすることとなった。筆の名手「三蹟」の一人として知られる行成とその妻、一条天皇と中宮定子、そして清少納言。互いを信じて想い合う姿には愛があふれていた。
紛れもなく 帝 。だが一人の孤独な少年だった。
大河がらみで読んだものです。行成とは藤原行成、達筆で最後道長が亡くなった時、ヨロヨロっと倒れたあの人物です。
大河ドラマでは道長を慕っていたような感じでしかおぼえていないのですが、彼が想いを寄せていたのは一条天皇です。といってもヘンな意味ではなくちゃんと奥様はいらして仲睦まじく暮らしているのですが。
昔、一度少女のころの定子と話す機会を得たことがある行成は内裏にあがるようになり、蔵人頭となって一条帝のお側近くに仕えるようになります。
内裏勤めは結構忙しくて家に帰れない日も多かったようです。そういう日常や人間関係が綴られた物語でした。
内裏の様子が興味深くはあったのですが、パンチがきいていない、というか少しものたりなかったです。
『海の百万石』 平野他美著 文芸社文庫
表紙裏の内容紹介から
江戸後期、回船問屋として加賀国で名を揚げた豪商・銭屋五兵衛。代々続いた家業に加え、志高く海運業を興した五兵衛は、功を成して加賀藩の財政を度々救う。ところが晩年、藩や地域のためと進めていた潟湖の埋め立て工事で冤罪をかけられ、無念の最期を遂げた。隆盛期には「海の百万石」と称された銭屋五兵衛と一家を支え、共に生きた女たちー母のやす、妻のまさ、長男の嫁のきわ、孫娘の千賀。一家への謂れなき罪を背負い、銭屋再建のためそれぞれが必死に尽力した姿を、4代の女たちの視点から描いた壮大な歴史ロマン。
もとは醤油醸造と質屋を営んでいた銭屋。それが、船を持って置きに出たいと願うようになって、女たちの心配事は増えます。その家で待つ女たちの年代記。特に冤罪で捕らえられた父との代牢願いを持って門前に座り込む体の弱い千賀の話が印象に残りました。
私は結婚前、戸籍上は金沢人でした。河北潟というのは多分見たことはないと思いますが、よく耳にしました。そういうわけで一種懐かしさもおぼえました。
加賀は百万石。御殿様は屈指の大大名です。海の百万石となると、お殿様に匹敵するほどの大財閥ということになります。
その金沢出身であることは誇りでもあります。しかし戸籍上だけの金沢人の情けなさ、きっとホンモノ金沢人なら銭谷五兵衛という人物を知っているのでしょうけれど、私はこの本で初めて知り興味深く読みました。
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