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2025年3月

2025年3月30日 (日)

『水の葬送』『空の幻像』

〈久しぶりにアン・クリーヴスを読みました。

『シェトランド四重奏』シリーズにつづくもので新たなシェトランド・シリーズです。

シェトランド諸島、イギリスの北の果てが舞台です。
地図ではShetlandはシェットランドとなっていて私もシェットランドと思ってきましたが、本書はシェトランドになっていますのでそれに従います。

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Googleストリートビューをしてみましたが、お天気の悪い日に撮影されたのでしょうか?作品からしてもどんよりした曇り日が多いらしいのですが、陰鬱で哀しくなるような風景が広がっていました。

おなじみのペレス警部が出てきます。
インヴァネス署の管轄になるので、インヴァネス署からウィロー・リーヴズ警部もかけつけます。 
インヴァネス、30年以上も前のイギリス一周旅行で行きました。エルキンまで北上して西に向かいました。一泊してそこからネッシー(現在は怪獣がいないことが確認されたようですが)のいるというネス湖を経てスカイ島へいったのです。懐かしい!

水の葬送』 アン・クリーヴズ著 創元推理文庫

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表紙裏の内容紹介から
シェトランゴ諸島の地方検察官ローナは、小船にのせられ外海へ出ようとしていた死体の発見者となる。被害者は地元出身の若い新聞記者だった。本土から派遣された女性警部がサンディ刑事たちと進める捜査に、病気休暇中のペレス警部も参加し、島特融の人間関係とエネルギー産業問題も絡む難事件に挑む。

空の幻像

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表紙裏の内容説明から
「浜辺で踊る白い副の女の子を見た」そう話した翌日、女性はシェトランドのアンスト島で失踪し、ペレス警部たちが捜索を開始してまもなく死体で発見された。
彼女テレビ番組制作者で、親友の結婚式のため夫や友人と島を訪れていた最中の悲劇だった。彼女のいう`少女‘と事件の関わりは?
この小説ラスト、私は気にいりませんでした。

シェトランド諸島は人口2万人くらい。島の人たちは姻戚関係その他で殆どが顔見知りです。
この人の小説、人物描写が丁寧です。
島の人たちはイングランドから来た人たちに少し警戒感もあるようです。そうして親は子が大事、それが時に行き過ぎて暴走することもあるのです。 

シリーズの次作も買ってあります。それも読みたくてうずうずしていますので、感想なしです。

今日の紅茶は シャンパン・スーパーノヴァ
主人が先日山下公園近くのラ・ティエールまで買いに行ってきて、おなじみの横浜デュエットなどとともに新しいものもいくつか求めてきたのです。
何といえばいいのでしょか、この香り。美味しい。「シンプルな茶葉をベースにストロベリーとシャンパンの様な華やかなフレーバーをプラス。エルダーベリー、ドライのブラックベリーをブレンドした口当たりも優しいフレーバードティー」という説明です。

イギリスの小説にはやはり紅茶とビスケットです。

2025年3月25日 (火)

『誘拐犯』シャルロッテ・リンク

今朝目覚めたときなんだかとても悲しい気持ちでした。理由は読みかけていた本でした。私はわりに見たドラマや読んだ本に影響されやすくて夢見が悪かったりするのです。
上巻を読んで、下巻に入ったところでやめて続きを今日読んだ本は

誘拐犯』シャルロッテ・リンク著 創元推理文庫

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シャルロッテ・リンクの小説は以前にも読んだことがあります。面白いはず。

この小説は少女ハナが2013年11月、ハルでスカボロー行の列車を逃したところから始まります。
スカボロー、スカボローフェアの歌があります。イギリス中部のヨークシャー東海岸にある町です。昔ウイットビーに行った帰りバスでスカボローに行き列車でヨークに行ったことを思い出しました。ほんの少しでも知っている土地だと小説を読むのもより興味深く読めます。その時は夏でしたから、ヨークシャーの丘は一面赤紫のヒースの花で覆われていました。しかしこの小説は10月から11月、寒くて寂しい季節の話です。
ハナはケヴィン・ベントの車に乗った後姿を消したのです。ハナの母親リンダはハナが小さい時家を出て行って行方知れず、厳しい父親が育てています。
現在は2017年、B&B経営者の娘で問題児アメリ-が姿を消します。アメリーは母親を嫌っています。2016年にはサスキアという少女が消え、ムーアで遺体が発見されます。
母親に虐待されていた少女マンディも姿を消します。
連続少女誘拐事件?
前に読んだ『裏切り』でも出てきたロンドン警視庁刑事でスカボロー近くに父親の残した家があるケイト・リンヴィル刑事がこのB&Bに泊まっていた関係で、かかわりを持つことになり、またスカボロー警察のケイレブ・ヘイル警部も捜査します。
ミステリーですからストーリーは省略します。

アメリーやマンディの家庭の様子、アメリーは一度助けられるのですが、助けようとした二人の男、怪しくないか?多彩な人物模様、引き込まれて読みました。
ケイト・リンヴィルのことにもページをさかれていました。私は、気の毒な面もあると思いながらもなんとおバカさん、とおもってしまいましたけれど。

面白かったのですが、かなり私は怖かったです。でもこのシリーズ、また読んでしまいそうです。

 

2025年3月22日 (土)

体調のことなど

昨日(21日)大学病院の診察日で行ってきました。
自覚的にはまだつらいところはあるのですが、心電図も問題なし、ということで、これで去年の夏、救急車で入院して以来の一連の治療・診察は終了ということになりました。
気温も急に高くなり、いいお天気で少し心が晴れやかになりました。
四月には旅行に出かけられそうです。

関係ないのですが、ショソン・エシレ関連から主人に成城〇井でエシレバターを買ってきてもらいました。
「高い!」と目をむいていましたが。

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早速今朝トーストに塗ってみました。塩味はあまりなく(表示にDEMI-SELとあります。有塩だけれど強くはないということですね)柔らかいかんじがしました。いつもの生活クラブのと比べてみました。味にとがったところがなく(こういう表現が適切かどうか、、、)クリーミーで品のいいかんじでした。お値段を考えるといつもこれ、というわけにはいかないのですが、少し贅沢したいときにまた買ってもいいかな。
Charents-Poitouという生産地名をみていると、最後のフランス旅行をおもいだして懐かしさでいっぱいになってきました。

2025年3月18日 (火)

『灰色のミツバチ』

aiai様お薦めの『灰色のミツバチ』を読み始めました。お薦めでありましたが、私も気になっていた本でもあります。 

灰色のミツバチ』 アンドレイ・クルコフ著 左右社

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帯の内容紹介から
夏はミツバチのブンブンいう音、冬は静寂と平穏、白い雪原と不動の灰色の空を楽しむ。
こんなふうに一生生きていけたらいいと思っていたのにー。
仕事を辞め、妻に去られ、養蜂家になったセルゲーイチと、
いまは何をしているのかわからない、犬猿の仲だった幼馴染パーシャ。
狙撃兵と地雷に囲まれ、誰もいなくなったグレーゾーンの村に暮らし続ける中年男ふたり。
激化してゆく紛争下のドンバス地方を舞台に、飄々としたユーモアで描く。

 ウクライナとロシアの戦いは現在進行形でこの小説の舞台はその現地ですので、残念ながらといえばいいのか、新聞紙上でおなじみの地域です。

早期退職してダーチャで年金暮らしのセルゲイ・セルゲーイチと小学校以来の宿敵パーシャの二人だけが村に残っています。宿敵となったのは村の小学校に入った時女生徒は7人、男生徒はこの二人だけだったからです。パーシャは嘘つきでセルゲイはそれを承知でうまくつきあっています。現在49歳、養蜂家でロシア語を話すウクライナ人。

物語が始まった時は冬。 
一面の雪景色に見入っていると、白のざわめきが聞こえてくるようになるー冷たい手で魂を摑まれ、長いこと放してもれない。遠くで砲撃音 という状況です。

ウクライナとロシアの戦いは2022年に初めて始まったわけではなくそれ以前からあったのですね。
(1991年ソヴィエト連邦解体、ウクライナは独立したが、其の後も両者との関係は良好とは言えない。)

小説の始まりは2014年から3年たった冬という時点のことのようです。
二人が住んでいる村はウクライナとロシアの間のグレーゾーン。遠くに砲弾の飛び交う音が聞こえています。村ではロシアへの編入を求める分離主義者と、ウクラウナ軍に登録する人がいたが、権力は何の関係もない、自分たちの生計が大事なだけだとセルゲイは思っています。

離婚した妻から絵葉書が届き、返事を書くことを思いついたとき、もうすぐ国際女性デー、タイミングよく妻ヴィタリーナにお祝いの言葉が送れる。という一文がありました。

私は2017年3月にイタリアに行って初めてミモザの日(国際女性デー)があるということを知ったのですが、ヨーロッパ(大陸というべきか)では普通に祝われている日だったのですね。
 マンションの広場のミモザも満開です。

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長い冬が終わりに近づいたある日、セルゲイはミツバチのために花を求めて旅に出ます。愛車ラーダの後ろに巣箱を積んだトレーラーを引いて。

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信心深いところもあるようで、奇蹟者ニコライのダンボール製肖像画を飾っています。旅の途中でも、亡くなった兵士(この物語の中に出てくる)とアフガン戦争の戦士、二人はセルゲイの中で合体していて、この二人に対して神のご加護をと祈ったりしています。
途中で食料を求めるために立ち寄った店の女性ガーリャとしばらく過ごしたり何度も検問所で止められたりしながら南下してクリミア半島まで行きます。 

私がクリミアで知っていることはヤルタ会談が行われたこと、それと風光明媚な保養地であるということくらいです。
昔、海外旅行先のひとつにロシアを考えたことがありその時はこのクリミア半島もはいっていたのですが、行きそこないました。今はもう残念に思う気力も失せていますが。

セルゲイがクリミアに行くことにした理由は以前養蜂大会で会ったアフタイというタタール人の住所を持っていたからです。そういえばタタール人って西進してこのあたりにも落ち着いたのでした。

クリミアは今ウクライナが権利を主張していますが、ロシアに組み込まれていて、ウクライナ人は滞在日数が制限されています。 

アフタイの家族には会えたのですが、アフタイは既に亡くなっていました。政治情勢、タタール人であることなどが関係しているようです。

複雑な政治情勢の中、陽の光は、今日という日のためにもう二時間近くもこの生活を温めていた。またゆっくり 自分の家へと戻っていきます。

帰り道 メリトポリに向かう途中 ひまわり畑で昼寝。大きな灰色のミツバチが飛ぶ出ていく夢を見たりしながら。

悠揚迫らぬ(と表現すればいいのでしょうか?)中年男の彷徨記。
この地域の現在に想いを寄せながら読みました。

2025年3月11日 (火)

ショソン・エシレ

私は情報にうといのですが、巷ではショソン・エシレなるパイ菓子が有名らしいです。
エシレバターはフランス産の発酵バターで成城石井などでも手に入ります(買ったことはありませんが)。それを使ってあるのです。

昨日、横浜駅に用事で出かけた主人に高島屋で買ってきてもらいました。ここでしか買えません。2年ほど前の売り出し当時は早朝から行列ができるほどだったらしいのですが、今は平日お昼前なら手にはいるようです。
10時15分ごろ着いて少し並んだけれど無事ゲットしてきました。 

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お皿から分かっていただけると思いますが、かなり大きめ。二人でわけてちょうどよかったです。ただ高さがあるので口に入れにくく、すぐパラパラとほぐれてしまいます。

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なんだか歯をむいているみたいです。

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クリームが甘く柔らかくて絶品!!
こがしバターが使ってあるそうで少しパイ生地に苦味があります。
まあ、一度頂けばそれでいいかな、という感じでした。

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紅茶は最近和紅茶が気に入っています。ほんのり甘味があって、優しい感じで香りはあまり強くありません。

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2025年3月10日 (月)

『パレスチナのこと』

現在一番気になるのはパレスチナとウクライナです。
外野から勝手に「住民をシリヤかどこかに移してガザをリゾートにしよう」なぞという御仁の声も聞こえてきましたが。

中学生から知りたい パレスチナのこと』 岡真理・小山哲。藤原辰史著 ミシマ社

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帯裏には三人の著者の言葉
今、必要なのは、近代500年の歴史を通して形成された「歴史の地脈」によって、この現代世界を理解するための『グローバル・ヒストリー』です」岡

西洋史研究者の「自分はなぜ、ヨーロッパの問題であるパレスチナの問題を、研究領域の外にあるかのように感じてしまっていたのか」小山

力を振るってきた側ではなく、力を振るわれてきた側の目線から書かれた世界史が存在しなかったことが、強国の横暴を拡大させたひとつの要因であるならば、現状に対するする人文学者責任はとても重いのです」藤原

細かく章立てされていてタイトルだけでもかなり内容を察することができるので目次と、ところどころ要点を書いておきます。(数値などは資料によって違いはあるとは思いますが、この本のそのページでの値です)

Ⅰ 私たちの問題としてのパレスチナ問題
 岡真理 「ヨーロッパ問題としてのパレスチナ問題--ガザのジェノサイドと近代五百年の植民地主義」
*「ユダヤ人のパレスチナ追放による離散」は史実にはない
 十字軍に支配された一時期、エルサレム入場を禁じられたが、パレスチナからユダヤ教徒の住民すべてが追放されて、世界に離散した事実はない。
*ジェノサイドが終わるだけでは不十分
 今ガザで生起していることはジェノサイドに他ならない。パレスチナの人々が自分の人生と自分たちのあり方を自ら決定し、自由に平等に尊厳を持って生きることになるようになること、これを奪っている問題の根源にこそ目をむけるべき
*ハマスの攻撃は脱植民地化を求める抵抗
*イスラエル政府の発表をうのみにしてはいけない
*ジェノサイドはいかなるシステムによって可能になったのか
 国連の安保理事会は拒否権を持つ。イスラエルの国際法違反に対するアメリカの拒否権行使のため「イスラエル不処罰」とされてしまう
*人文学=ヒューマニティーズから考える
*ガザを見たとき、日本は自国の植民地主義を想起できているか
 ナチスドイツ時代ユダヤ人と名指されれば何をしてもよいといわれるのと同義語。百年前の日本ではそれは「朝鮮人」だった。台湾における霧社事件、これは私も初めて知ったことですが、台湾でも植民地化のために多くの人を殺してきた。
*壁一枚を隔て、安楽な生活を享受する者
*「人種」はヨーロッパ植民地主義が「発明」したもの
 まずヨ-ロッパキリスト教社会には歴史的なユダヤ人差別があった。それが近代になって人種すなわち「血の問題」にすりかえられた。信仰が人種化された。「人種」という概念はヨーロッパ植民地主義が発明したもの
 人種という概念そのものが似非科学、ユダヤ教徒を信仰を理由に「別の人種」とみなすことそれ自体がレイシズム。
*シオニズム運動ー反セム主義に対する反応
 シオニズムを支援したのが大英帝国。ユダヤ人が出て行ってくれるのは大歓迎。
*国家維持のためにホロコーストの記憶を利用する
ホロコーストが特権化(イスラエルはパレスチナ人の民族浄化という暴力の上に建国された)例外化され、ひたすらパレスチナ人に犠牲を強いることによってその贖罪がおこなっわれることで、パレスチナ占領の正当化、永続化が進行している。→
10月7日のハマス・テロは真空状態で起きたわけではない。「パレスチナは半世紀以上にわたりイスラエルに占領されている」といった国連のグテーレス事務総長の発言に対してイスラエルの国連大使は罷免要求。
*近代学問に内包されるレイシズム
 西洋は普遍的人権を掲げながら、他方で世界を植民地支配し、今なおその構造に立脚した差別、収奪の暴力を行使している。exナミビア 

       *****

藤原辰史「ドイツ現代史研究の取り換えしのつかない過ちーパレスチナ問題はなぜ軽視されてきたか」
*ナチズム研究者はナチズムと向き合いきれていない
ナチスに殺害されたグループはユダヤ人にとどまらず、ロマも犠牲になったし「飢餓計画」により300万人犠牲にしていることにあまり目をむけていない。また抵抗した人をテロリストと名付けて思考停止している。研究者も自分のこととして考えてこなかった(反省)
*ドイツとイスラエルをつなぐ「賠償」
 戦後西ドイツはイスラエルに人道的な補償として30憶マルクを物資として支払った。工業製品として。それらにはデュアルユースとして軍事物資も含まれていた。それだけでなくアデナウアーはイスラエルに軍事支援を極秘に進めていた。脱塩施設のためといわれたが、核兵器開発に用いられた。西ドイツからの軍事物資でイスラエルはパレスチナ人の家を奪っって占領したわけだ。日本も東南アジアにたいして加害責任と向き合う形ではなく、技術移転(稲の品種改良、ダム建設)という日本にも利益の多い方に転換した。
*ふたつの歴史家論争
西ドイツで、ナチスのユダヤ人虐殺とソ連のラーゲリを比較検討する論があったが、これは絶対悪を歴史の文脈の中に位置づけて相対化してしまうことになる。
*誰のための「記憶文化」か
*ドイツは過去を克服した優等生なのか?
「ドイツは過去を克服した優等生である」「ドイツがイスラエルを支持するのにロビーは必要ない。ドイツの政治家は自発的に『親イスラエル』だと言うからだ。しかしそれはパレスチナ問題への軽視につながっている。(ドイツはパレスチナ難民への援助もしているが)
*「アウシュヴィッツは唯一無二の悪だ」
 だからと言ってイスラエルのパレスチナに対する暴力を正当化する論にまきこまれてはならない。ドイツではイスラエル批判すると逮捕される。
 ユダヤ人への軽蔑のまなざしが中東のアラブ人へのまなざしとかさなっている。

*奴隷制は終わっていない
リンカーンの奴隷解放によって奴隷制は終わったと考えてはいけない。低賃金労働あるいは農業奴隷にされるひとびと。
シオニズムも西欧植民地主義が結晶化したもの。(日本も満州国など作った)

「ユダヤ人の民族郷土の創出を意図すれば、パレスチナにおけるアラブ人住民の言語や文化の消滅や従属化がもたらされる」←アラブ代表団 
*経済の問題、労働の問題としてのナチズム
ナチスの親衛隊は収容所で軍需産業や採石、繊維やハーブティーなどたくさんの企業を運営し莫大な利益を得ていた。
ウクライナ戦争で、戦闘機などを作る会社だけでなく、穀物メジャーの株価も高騰。→ある場所で紛争が起きれば、特定の人たちがきちんと儲かるというシステムのなかに我々は生きている。

    *****

Ⅱ 小さなひとりの歴史から考える

小山哲「ある書店主の話ーウクライナとパレスチナをつなぐもの」
*ふたつの戦争のつながり

*長い尺度で問題を捉える
 ウクライナでの全面戦争は2024年2月24日にロシアが本格的軍事侵攻を行ったことに始まるが、もとをたどればウクライナの民族運動に対するロシアの抑圧は19世紀までさかのぼる。
 ガザについていえば2023年10月7日のハマスによる越境攻撃を起点として考えてしまうと問題の本質を見失う。イスラエルの建国の歴史的経緯からみなければならない。

*ポーランド書店 E・ノイシュタイン
ポーランド研究者である小山氏の利用している書店の話。
この書店主はウクライナ→ポーランド→テルアビブと所を移したが、このような東ヨーロッパ生まれのユダヤ人は多くいた。
*ウクライナーポーランド-イスラエルを結ぶ生涯
*イスラエルをリードした東ヨーロッパ出身者
 東ヨーロッパの多くのユダヤ人が反ユダヤ主義のため向かった先はアメリカだがイスラエルに向かった人々もいた。
 テルアビブは20世紀前半にユダヤ人入植のために新しく戦略的に造られた町。
 入植は土地の買い占めのような経済手段と住民の強制追放や集団虐殺によって実行された。
 ベン・グリオン(ポーランド生まれ)
 メナヒム・ベギン(ブレスク・リトウスク生まれ)ユダヤ人武装組織イルグンに加わり、デイル・ヤーシ村の住民100人以上を虐殺した事件にも関与したリクードの創始者。
 現在の党首がネタニヤフ(父親は現ポーランド出身)。
 歴代の首相の殆どが家系的に東欧とつながりがある。
(イスラエルでもっとも人口が多いのは東方系ユダヤ人(ミズラーヒム)でアシュケナージム(中・東欧出身者)は32%)

*「国家なき民族」の国歌
*シオニズム運動はドレフュス事件より前にはじまっていた
*民族運動の母体となった地域
 ロシアでもユダヤ人の住める地域は限られていた。リトアニアからウクライナに至る太い帯のような地域。1930年代から40年代にかけてソ連とナチスドイツの支配下・占領下に置かれた地域で夥しい数の命が奪われた。「流血地帯」という。ここで、ホロコーストにより、600万人のユダヤ人が犠牲になった。1930年代にはスターリンの飢餓政策により数百万人が犠牲になった。複数の強大な帝国によって分割支配され、さまざまな民族運動の母体となった地域でその一つがシオニズム。民族運動はその目的達成のために暴力を辞さない態度をとる。シオニズム運動やイスラエル国家に見られる暴力がここから受け継がれているのではないか。
*移住して国家を建設するという発想
 ポーランド民族運動もヨーロッパの植民主義的な発想から自由ではなかった。
*日本も「外部」ではない
 矢内原忠雄もシオニズム支持の論を書いている。ハルビンで日本統治下のユダヤ人を「保護」する政策を推進。世界中に植民地をつくった西ヨーロッパの列強、アメリカと同じ。
*「敵は制度、味方はすべての人間」

藤原辰史「食と農を通じた暴力ーードイツ、ロシア、そしてイスラエルを事例に」

*私たちの食卓の延長にある暴力
1941年ナチスがロシア人を意図的に飢えさせる「飢餓計画」を発動。300万人のロシア人捕虜が亡くなった。
今アメリカが中心に世界的農業構造の強化がなされちる。大規模合理的農業が巨大なが穀物商社、種子企業、化学企業主導でなされている。EU諸国は軍事費を賄うために農業への援助、ディーゼル燃料の補助金削減
*投機マネーがもたらす飢餓
 現在、食料は投機のために利用されることが増えている。「穀物メジャー」と呼ばれる大手多国籍企業によるもの。EX、カーギルは穀物価格高騰により経営者家族三人が世界の富裕層500人に仲間入りした。
*プーチンの農業政策は外交の武器
 2014年のクリミア侵攻以後国内農業増産を促進。いまや外交カードとして石油のみならず小麦も武器になっている。(エジプトへの穀物援助)
*ウクイライナの穀物を狙う米中
 近年ロシアは農業生産量をあげ、小麦は世界第三位、ウクライナも中国から融資を受けて穀物を増産安価な穀物を中東やアフリカに売っていた。アメリカの穀物メジャーもオデーサ近郊に穀物ターミナルを建設。ウクライナ侵攻により黒海が封鎖。東欧ルートにポーランド、ルーマニアが反対。自分たちの穀物が売れなくなるから。
*国際穀物都市オデーサ
 ロシアが「黒海穀物イニシアティヴ」から脱退した2日後(23年7月19日)オデーサを攻撃。約6万トンの穀物貯蔵施設が失われた。ロシアは欧米による食のグロ-バル支配に挑戦。こういう国際情勢にも関わらず日本の政治家や住民の農業や食料に対する感覚が鈍いことは問題。食料自給率を高めるべき。
*飢餓計画を主導したヘルベルト・バッケ
*ホロコーストの影に隠れる「入植と飢餓」
バッケ→巨大資本(ユダヤマネー)が世界中を支配しているため、ドイツの農業が破壊されている。
ナチスの最大使命はドイツ人を飢えさせないこと。
「劣等人種」であるスラヴ人、とくにロシア人にはわずかしか配給せず飢えさせて、その分をドイツ人にまわす。
*飢えてはならない人と、飢えていい人
1932~33年にソ連支配下のウクリナで大飢饉が起こり、400~800マ万人が食料を奪われて亡くなった。これをナチスはボルシェヴィキだから人々は飢えていくとした。また障害者安楽死計画もおこなっていた。
*イスラエルの食と水を通じた暴力
イスラエルのガザ地区への攻撃に除草剤散布攻撃がある。
イスラエルは入植者のためにパレスチナ人から土地を奪っただけでなく、ヨルダン川の水や地下水を囲い込み、壁を設けてパレスチナ人に農業をさせないようにしてきた。
*飢餓とは「低関心」による暴力
農地の意図的な汚染、水源の意図的な収奪、土地の意図的な接収、人間を意図的に飢えさせること、というイスラエルの暴力により、ガザ地区の57万6千人が飢餓一歩手前にある(2024年4月27日安保理事会)。こう
いうことを「知っている」で済ませている。

長くなりすぎましたし、疲れてもきましたので、要約はここまでです(上の内容にそっての鼎談です)。

Ⅲ 鼎談 「本当の意味での世界史」を学ぶために

*今の世界史は地域紙の寄せ集め

*「西」とはなんなのか?

*ナチズムは近代価値観の結晶

*「食を通じたイスラエルの暴力」に目が向かなかった反省

*私たちの生活が奴隷制に支えられている

*日本史、世界史、東洋史という区分は帝国時代のもの

*西洋史でパレスチナ研究をしたっていいはずなのに

*ポーランドのマダガスカル計画

*民族の悲哀を背負ったポーランドは、大国主義でもあった

*イスラエル問題ではなくパレスチナ問題

*イスラエルの暴力の起源は東欧に?

*今のイスラエルのやり方は異常

*押してはいけないボタン

*核の時代の世界史
イスラエルの軍事支援の圧倒的1位はアメリカ(トランプになってどうなるかは分かりませんが)だが2位はドイツ

*「反ユダヤ主義」という訳の誤り
 Antisemitism,これをドイツ現代史学者は「反ユダヤ主義」と訳したが、これではシオニストたちが、人種主義の思想を根拠にしてパレスチナに入植し国家を築いていったことがみえなくなってしまう。ナチスが重宝した「人種学
」という似非学問で用いられる「専門用語」はいつも「反セム主義」

イスラエルの建国者たちがつくろうとしたのは、ユダヤ教とは手を切った、新しいヘブライ人の国でした。だから、敬虔なユダヤ教徒たちは、シオニズムをずっと批判してきました。しかし、今は再び聖書に依拠して、パレスチナどころか、ナイル川からユーフラテス川まで神の与えた約束の地であり、ユダヤ人のものだと主張する宗教的ナショナリストの力が増しています。ネタニヤフ政権が連立を組んでいるのが、そうしたウルトラ極右の宗教政党なのです。

いちいち断りませんでしたが、文章の多くを本書から引用させていただきました。自分の言葉にいいかえると内容に正確さを欠くような気がしたからです。どうぞ本書を直接お読みになってください。

最近何冊かのガザについての本を読むまでは、映画「栄光への脱出」を中途半端におぼえていたせいか、かの地に上陸できたユダヤ人のことをよかった、としか思っていませんでした。実はその地にはずっとパレスチナ人がいて彼らを追い出して自分たちの国をつくったのだということに思い至らなかったのです。無知を恥じています。

私がナイーブすぎるのかもしれませんが、ふつふつと怒りをたぎらせながら読みました。

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