『朝と夕』
ノルウェーの作家による作品を読みました。
北欧!森と湖、フィヨルドそして氷の国に憧れて北欧4か国の旅に行ったことがあります。
30日年以上前のことです。いくつかのフィヨルドを船に乗っていきました。
ノルウェーはシベリウスの国。シベリウスの家もお墓も見ました。
でもノルウェーの作家の作品って初めてのような気がします。
お恥ずかしいことに私は知らなかったのですが、ヨン・フォッセは「言葉で表せないものに声を与える革新的な戯曲と散文」により2023年ノーベル文学賞を受賞しています。
『朝と夕』 ヨン・フォッセ作 国書刊行会
朝と夕、とはここでは人の生と死という意味でした。
第一部 誕生
ノルウェー、フィヨルドの辺の家、息子の誕生を待つオーライ。生まれた子はオーライの父親と同じヨハネスと名付けられ、やがて漁師となる。
第二部 死
コーヒーを沸かしパンに山羊のチーズをのせる、、、老いたヨハネスの、すべてが同じでまったく異なる一日がはじまる、、、
フィヨルドの風景に誕生の日と死の一日を描きだした神秘的で神話的な幻想譚。
第一部 オーライはそわそわと息子(と確信している)の誕生を待ちながら、神はいる、信じている、と思っています。 知っていることを言葉にするのは難しい、それは言葉より哀しみに近いものだから、ヨハネスと名付けられた元気な男の子の誕生
短い20ページほどの 第一部
第二部
七人もの子に恵まれ、数え切らないほどの孫がいて幸せな人生を送ったヨハネス。しかし今は妻に先立たれ一人暮らし。勿論近くに住む娘がいつも様子を見には来てくれています。
今朝も躰の節々が強張って痛み、そのまま寝台の中に居たいと思いながら起きてみると躰はとても軽い、
そこで起きてみる、
そうして出かけるがどこかおかしい。
もう亡くなったはずの友人ペーテルがいたが、薄くなった白髪が長く伸びやせ細っている。
一緒に町へ行ってみるが誰もいない、、、。あそこに行く若い女性二人連れは?
そうして迎えに来たペーテルと船に乗って二人で旅立ちます。
特に何をなしたというわけでもない一人の漁師の話が心を打つのです。
いつもならすぐグーグルマップを開いて場所探しをするのですが、この作品はそういう気をおこさせません。
現実感が薄いからでしょうか。神話的、神秘的と評されるゆえんからかもしれません。
文章の特徴として読点(、)はあっても句点(。)はありません。
暮れにクレア・キーガンの『ほんのささやかなこと』を読んでこれがベスト、当分これを超える作品には出会えないだろうとおもっていましたが、出会えました。クレア・キーガンとは別種の感動です。
持ち時間が少なくなったと感じるせいではないのですが、暫く他の本は読みたくないと思わせられるほど心にしみる作品でした。
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aiai様
本当に出会えたことが心の底から喜ばしく思える作品でしたね。
『彼女を見守る』早速 注文しました。お教えくださりありがとうございました。
投稿: yk | 2025年5月23日 (金) 20時08分
私も昨年に読みました。寡聞にしてノーベル賞作家とは知らずに買いました。短くて静かな物語ですが、心に沁みました。やはり、人生の最終章が始まっている私のような人間にとっては、何か深く訴えてくるものがありました。今、フランスのゴンクール賞を取ったとかの「彼女を見守る」を読み終えるところですが、不思議な運命を感じる小説です。
投稿: aiai | 2025年5月23日 (金) 16時16分