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2025年6月

2025年6月28日 (土)

『臨床真理』『ミカエルの鼓動』

柚月裕子の作品を続けて二冊読みました。

臨床真理』柚月裕子著 角川文庫

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表紙裏の内容紹介から
人の感情が色でわかる「共感覚」を持つという不思議な青年ーー藤木司を担当することになった、臨床心理士の佐久間美帆。知的障害施設に入所していた司は、親しくしていた少女、彩を喪ったことで問題を起こしていた。彩は自殺ではないと主張する司に寄り添うように、美帆は友人の警官と死の真相を調べ始める。やがて浮かび上がってきたのは、恐るべき真実だった....。


知的障碍者施設の問題を扱っているのですが、おぞましい事件です。かなり以前老人施設で起こった事件を思い出しました。もの言えぬ人たちのいる施設に対する査察、配慮が徹底的になされないと、恐ろしくて老人ホームにお世話になることができません。  

 

『ミカエルの鼓動』柚月裕子著 文春文庫

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北中大病院の西條泰己は、手術支援ロボット「ミカエル」での心臓手術を成功させ、院内での地位を不動のものにした。しかいし病院長は、心臓手術の名手・真木一義をドイツから招聘。難病の少年の治療方針を巡り、最先端医療か従来の術式かで二人は激しく対立する。そんな中「ミカエル」にある問題が発覚してーー。

手術支援ロボットの話ってテレビドラマで見たことがあるような、、、。ダヴィンチというのは実際に使われているようですね。
手術と言えば昔は大きく躰を切るので血が流れることは当然、それが切り口は最小でより細かい作業ができるらしいです。
私の受けたカテーテル治療も昔はなかったでしょう。4年前は年齢制限ぎりぎり、ということでしたが、現在は80歳越えでもOK.通す管も昔より細くなっているそうでした。医学の進歩はありがたいものです。

ダビンチがどうかは知りませんが、こういう機械によるものは機械の不具合ということを考えなければいけない、ということがテーマの物語でした。
寡黙で淡々とこなす真木にたいして野心家で院長の椅子もねらおうという西條という人物を配して進んでいく物語。最後はちょっと甘い気がしましたが。

二冊とも巻を置くあたわずの面白さでした。

2025年6月23日 (月)

「帰れない山」

読む本もないままに、アマゾンプライムからこれを探し出しました。

映画「帰れない山」良かったです。

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都会育ちで繊細な少年ピエトロは、山を愛する両親と山麓の小さな村で休暇を過ごしていた。そこで出会ったのが、牛飼いをする同い年のたくましい少年ブルーノ。まるで対照的な2人は、共に大自然の中を駆け回り、濃密な時間を過ごすうちに友情を深めてゆく。だが思春期を迎えたピエトロは父親に反発し、家族や山からも距離を置くようになってしまう。時は流れ、父の悲報を受けて村に戻ったピエトロはブルーノと再会を果たすが

場所はモンテ・ローザが出てくるので、イタリア北部トリノから真北に行ってもうスイスというところのようです。ツエルマットが一瞬写っていました。
12歳のピエトロはトリノに住むピエトロは山好きの父に連れられて毎夏ブルーノの住む村に別荘を借りてきていました。
同い年の二人は無邪気にの山をかけまわって戯れていたのですが、やがてブルーのは出稼ぎ労働者となっていなくなります。 

其の後学校を卒業したピエトロは父とは合わず着きたい仕事もないのではリュックをしょって放浪の旅に。
31歳の時、父が亡くなり、山の村の別荘を訪れるのですが、そこでブルーのに再会し二人で山小屋を建てます。(上写真)

男同士の友情物語とくくってしまうとそれだけみたいですが、外に出ていくピエトロと山と一体化したようなブル-ノ、二つの世界が次のような言葉で表現されていました。

この世界は八つの山とその外側に広がる八つの海から成っていて、八つの山の中心には、世界で最も高い山である須弥山(スメール山)がある、八つの山すべてに登った者と、須弥山に登った者、どちらがより多くのことを学んだと言えるだろうか。須弥山にいるのがブルーノで、八つの山を巡っているのがピエトロだと二人は同意するのです。

ラストもよかったです。

山の景色の美しさ!おすすめです。

2025年6月21日 (土)

『月下のサクラ』『朽ちないサクラ』

月曜日からちょっとした手術のために主人が入院したので火曜日から泊りがけで妹がきてくれています。

御土産は懐かしい京樽の茶巾寿司と一度あじわってみたいとおもっていた湘南「葦」のケーキです。
京樽は大学の正門前、この前写真を撮ったところの後ろの位置にお店がありました。

 葦のケーキ 

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両方味わいたくて半分づつ頂きました。ちょっと他ではないものでとっても美味しかったです!

本、何かないかしら?以前読んで面白かった本の著者名から探し出しました。

月下のサクラ』柚月裕子著 徳間文庫

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裏表紙の内容紹介から

 念願かない警察広報職員から刑事となった森口泉。記憶力や語学力を買われ、希望していた機動分析係へ配属された。自分の能力を最大限に発揮し、事件を解決に導くーーー。だが配属当日、会計課の金庫から一億円が盗まれていることが発覚。メンバー総出で捜査を開始するが、内部の者の犯行である線が濃厚だった。混乱する中、さらに殺人事件が発生して.....。
組織の闇に泉の正義が揺れる。

米崎市という東北地方の海に面した架空の町が舞台です。
黒瀬警部と組んで事件解決にあたるのですが、面白くて一気読み。

もう一冊
朽ちないサクラ』 柚月裕子著 

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警察不祥事のスクープ生地。新聞記者である親友に裏切られたーーー。口止めした森口泉は愕然とする。情報漏洩の犯人探しで県警内部が揺れる中、親友が遺体となって発見された。警察広報職員の泉は、警察学校同期の磯川刑事と独自に調査を始める。次第に確信に迫る二人の前にちらつく新たな不審の影。事件の裏には思いも寄らぬ醜い闇が潜んでいた。

実はこちらの方を先に読むべきでした。
ミステリーですからストーリー紹介はこれ以上しません。

ミステリーは読みたいけれどむごたらしい描写は読みたくなかったのでその点でも良かったです。

森口泉刑事、黒瀬警部のコンビで続編が書かれることが期待されます。 

私の体は相変わらず半病人状態です。動くとすぐ息苦しくなりますが、座って本を読んだりパソコンで何か書いたり観たり(テレビ付きなので)することはできます。
何とかもう少し元気になりたいのですが。

 

2025年6月16日 (月)

父の日

っとうしいお天気、紫陽花の季節です。マンションのお庭にも紫陽花の花が咲き誇っています。

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昨日は父の日。一昨日、息子夫婦がお菓子の大箱を持ってやってきました。

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クッキーとゼリーの詰め合わせ

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矢張りフォション、なめらかさが違う感じがしました。

本はその後も読みましたが、 書きたくなるほどのものは読んでいません。

2025年6月15日 (日)

『水曜生まれの子』

イーユン・リーの短編集を読みました。

水曜生まれの子』 イーユン・リー著 河出書房新社

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帯を撮取った写真
 北欧神話に出てくるイグドラシル(世界樹)が描かれています。

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ワルキューレの岩」で、第一のノルン(運命の女神)が「一人の大胆な神が水を飲みに泉にやって来て 永遠の叡智を得た代償に片方の目を差し出しました そして世界樹のトネリコの木から枝を一本折り その枝から槍の柄(つか)を作りました 長い年月とともに その枝の傷は 森のような大樹を弱らせました 葉が黄ばんで落ち 木はついに枯れてしまいました」と歌う。(WIKより)
世界樹は片目をもらったけれど、折られた枝の傷によって枯れてしまいます。
著者その人を暗示しているように思ってしまいました。

短編集なので気軽に読めるかと思ったのですが、そういうわけにはいきませんでした。
各タイトルといくつかについては感想めいたものを書き留めてみました。

表題作「水曜生まれの子」 が第一作目です。
前の晩これを読みました。次の作品を続けて読む気になれなくて二度読みました。
翌朝とても悲しい気持ちで目が覚めました。

イーユン・リーという作家は2017年、16歳の長男を自死により亡くしていることは知っていました。 
この作品のロザリーも娘を自死により失くしています。自死により子をなくす、これほど両親にとってつらいことがあるでしょうか。
マザーグースに月曜生まれの子は、、、と曜日ごとに生まれた子の運命をうたう歌があるそうです。
それによると、「、、、水曜日生まれの子は悲哀がいっぱい、木曜日生まれの子は長い道のり、、」となっています。
ロザリーの子マーシーは水曜日に生まれ、15年1ヵ月後の木曜日になくなったのです。
何年かのち、ロザリーは列車内でマーシーと心の中で話しながらオランダからベルギーへ旅をします。その列車内の出来事が語られていきます。
短編小説は終わり方ががポイント。よかったです。

「かくまわれた女」

誰かのことをわかるとその人はいつまでも離れていかなくなるけれど、わかっていなくたって同じ結果になるんだ。死は死んだ人を連れさらないからね。その人を一掃深く心に根づかせるだけ。

「こんにちは、さようなら」
20年前カリフォルニア大学バークレー校の寮のルームメイトとして出会ったケイティとニーナの話。
かなり年上の暴力をふるうお金持と結婚したケイティは、ニーナになぜかと聞かれて「
いい人とは軽い気持ちで結婚できないから。」と答えます。
「こんにちは、悲しみ、さようなら、悲しみ」「何でもそんな風に簡単だったらいいのに」「「こんにちは、まちがった選択、さようなら、まちがった選択」 

「小さな炎」
著者はウイリアム・トレヴァーの作品が好きだということは知っていました。この作品はトレヴァーへの追悼の気持ちがこめられているそうです。 残念ながら手持ちのトレヴァー短編集何冊かには該当する作品はみつかりませんでした。 

「君住む街角」

「ごくありふれた人生」
一 たんぱく質

二 仮説

三 契約

「非の打ちどころのない沈黙」

「母親に疑わせて」

「ひとり」
これもつらい話ですが心に残るエピソードでした。
心中しようと決めた六人の少女たち、五人は死んだのにスーチェンは死ねなくて周りから非難されました。しかし五人の少女たちはいないがゆえにスーチェンの世界では存在感のある人たちだった、、、。

「幸せだった頃、私たちには別の名前があった」

「すべてはうまくいく」 
この中でジェームズ・ジョイスの『死者
たち』に出てくる、マイケル・フュアリーという少年に触れられていました。
映画を観て、本も読みました。(映画は非常に良かったです)
子どもを亡くしたことにより祖父(幼子をなくして自死した若い前妻の夫であった男として)を悼むことができた話。

考えに考えて紡がれた文章。心の襞の奥に分け入ってある意味たんたんと書かれていきます。
一気読みはできません。

私は脳細胞が摩耗してしまっているのでしょう。
若い頃とは違って感じ方も表面的になっていることを思い知らされた感じがしました。
しかしある意味それは生きていく知恵かもしれません。

書き留めたいことはいくつもあるのですが、まとまらないので一応ここまでにしておきます。

2015年8月にこの著者の 『千年の祈り』を読みました。
その時はこんなつらい思いはしませんでした。
それで
軽い気持ちでこの本を買ったのですが、、、重かったです。
著者自身は鬱病のとき自殺を図ったことがあり、その後次男も自死によりなくしています。

つら過ぎます。

今の私の体力、精神力ではもうこの作家の作品を読めそうにありません

2025年6月 3日 (火)

『彼女を見守る』

aiai様がお読みになっていらっしゃるということで購入しました。

彼女を見守る』 ジャン・バティスト・アンドレア著 早川書房

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一言で言えば≪壮大な愛の物語≫でしょうか。
読み終わって放心状態です。

表紙袖の内容紹介から
大戦間のイタリアの激動を生きた男女の絆の行方はーー
親元を離れ、石工の見習いになった少年ミモ。
彼が出会ったのは、この地を治める侯爵の令嬢、ヴィオラ。
科学を愛し、空を飛ぶことを夢見る少女だった。
同じ年、おなじ月日に生まれた二人を引き合わせた運命は、彼らを引き離しもした。
ミモが才能を発揮する一方、ヴィオラは時代の制約にからめとられてゆく。
やがてミモに決断の時が迫るーー 
彼が彫った聖母子はなにを語るのか?

ミモはフランスの貧しい石工の家に生まれ、石工修行のためにピエトラダルバの村にやってきたときは13歳。
そこの墓地で城館に住む侯爵令嬢のヴィオラと出会い、惹かれあい、惹かれあうゆえにあえて会わずにいたり、の年月。
このミモ、軟骨無形成症、といって大きくなれない人でした。身長140㎝、でも頭などは普通サイズなのでその姿は異様だったようです。顔は美男だったことになっています。
地を這うような生活から、制作依頼が何年分もあるような彫刻家へと波乱万丈の人生が描かれます。 
500ページもの長さですが、飽きさせません。

不思議な感動で胸がいっぱいになりました。

お薦めです!

読むきっかけを与えてくださったaiai様ありがとうございました。

この小説の最初と最後の場面はサクラ・ディ・サン・ミケーレ修道院になっています。
サクラ・ディ・サン・ミケーレ修道院!行ったことがあるのです。
旅路はるか~北イタリア、スイスの旅
(3日目 そのⅡ)
この小説では険しい山道、とありますが、バスでかなりのところまで行って、その後徒歩でゆるやかな坂道を30分ほどあがっていくだけでした。ピルキリアーノ山という岩山の山頂に岩山と一体化したように建っていました。
素晴らしい彫刻作品がみられました。
ウンベルト・エーコが『薔薇の名前』のインスピレーションを得た、と言われる場所でもあります。

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