伊藤恵リサイタル と ヴァチカン教皇庁図書館展
昨日(29日)は ピアノコンサートと 展覧会に出かけました。
10日ほど前に 伊藤恵さんのコンサートの記事が でていたので、 直ぐネットで調べて何とか、 この席ならというのをみつけて即予約 しました。
そうして その前から気になっていた、 凸版ビルにある印刷博物館の展覧会、 ここは行きにくい場所なのでためらっていたのですが、四ツ谷まで行くのだから、飯田橋に足をのばさないてはないと、ダブルスケジュールを組みました。
伊藤恵さん 有賀先生のお弟子さんとしてお名前は以前から知っていたのですが、多分聴いたことはないような、、。8年連続の 春を運ぶコンサート 最終回、ということで記事になっていたのだったと思います。
ところでプログラムはシューベルト最後の三つのソナタ。
全曲ベートーヴェン とか ショパン とかはよくありますがシューベルトだけのプログラムはこれまで経験したことがありません。三曲とも40分くらいかかる長大な曲なのです。ちょっと気持ちがくじけそうになりました。
印刷博物館に先に行くべきか、でも図録を買って重い本をぶらさげていくのも、、。
朝ぐずぐずしていたので選択の余地なく 先に 四ツ谷 です。
上智大学の横 ソフィア通りというらしいのでしが、もう葉桜で 代わってツツジが満開でした。
伊藤 恵 ピアノ・リサイタル
チラシの裏には
8年は長いようで短く、人生も長いようで短い。
この儚さを音楽で伝えてくれたのがシューベルト
淡い夢のように過ぎてゆく時を止めることは誰にもできないけれど、
彼の世界の悲しみ、孤独、諦観と共に、音楽をさすらうと、その果てしない道の先には、
安らぎ、優しさ、温かい愛に包まれた永遠の時が待っている。
真っ白なドレスで舞台に
19番、20番 を弾いたあとで休憩
きれいな曲、 どちらも 二楽章が単調でやるせない感じのすてきなメロディです。
弾き始めて直ぐ 音がきれい、と思いました。 しっかりしているけれど固くはないのです。 柔らかくて、くせのないきれいな演奏だと思いました。
この方のもつ音、なのだと思いますが、ホールもいいと思いました。
シューボックス型で私の席は後方右手、大きなホールではない(800席)ので 音はバランスよく聞こえます。 ピアノはこのくらいのホールが丁度いい。
19,20,21番のソナタは シューベルトが亡くなる直前(たった31歳で亡くなったのです)の2か月に書いた作品なのです。
これほどの長大な曲を死の直前によくかけたものと、感心してしまいます。 聴く方は 音楽に身を委ねてゐればいいのですが、 演奏者は 大変、終わってヨロヨロという感じで立ちあがっていらっしゃいました。 それでも 休憩に入る前に マイクをもって
「やっと二つの山を登りました。」とおっしゃっていらっしゃいました。
ところで 演奏者の横に譜めくり者用の椅子がおいてあったのです。 長い曲なので、楽譜を見乍ら演奏されるのかしら、とおもっていましたが、楽譜なしでした。
このことについては 後で 「この椅子はたんにまちがえておいてあっただけで、休憩の時に引っこめましょうか、と言われたのですが、誰か座っているかもしれないからそのままにしましょう」 ということになったそうで、後半も置かれたままでした。
一体 誰が座っていたのでしょう。想像がむくらみます。 いいです、こういうの。
お話ようもやさしく上品で とても感じのよい方でした。
前半2曲で 80分かかっています!!20分休憩の後
21番
前の2曲もよかったのですが、これがもうとても素晴らしかったのです。(あくまでも素人の感想です、以下も)
別に一曲目から固くなっているとはおもいませんでしたが、この時はもうすう-っと音楽にはいりこんでいる感じで のっている、というより 一体になっている感じで聴く方も 音楽にとけこむことができました。まさに
淡い夢のように過ぎてゆく時を止めることは誰にもできないけれど、
彼の世界の悲しみ、孤独、諦観と共に、音楽をさすらうと、その果てしない道の先には、
安らぎ、優しさ、温かい愛に包まれた永遠の時が待っている。
まさにこの世界です。
帰ってからも頭の中でこの曲がきこえていました。
演奏が終わったのが 4時25分頃、 そこで また マイクをもってのご挨拶。 春を運ぶコンサートをつづけてこられて8年、その前も8年なさったそうで、無事やり終えた感慨が 演奏者にもあったのだとおもいますが、聴衆にも感謝のご挨拶でした。
印刷博物館に行きたいので、急いで外に出ました。
調べた結果、 飯田橋寄り江戸川橋に出た方が近そうなので、地下鉄の麹町駅に向かいました。
印刷博物館 到着 5時5分。6時までです。
高齢者はありがたいことに入場無料です(一般は 800円)。
地下におりて 入場すると、まず プロローグゾーン
前印刷(岩や骨などに記録された情報) ラスコーの壁画 死者の書、 岩絵など
印刷との出会い(印刷の黎明期)マンダラや護符など
こういう展示も面白くてじっくり見いのですが、ともかく時間がありません。 またの機会(次はいつになるかわかりませんが)ということにして。
おめあての
ヴァチカン教皇庁図書館展Ⅱ の会場へ
この博物館ができて間もない頃にもヴァチカン図書館展があり、それにも来ています。
(雨の日に飯田橋から延々歩いて、それも 高速道路の向こうに渡りそこねて 大分行きすぎてからやっと橋をわたったことを思い出します)
チラシ 文字は金でとてもピカピカきれいなのですが、、。
前回はきれいな 彩色写本が多かったような気がします。 今回は 少しジミです。 そうして 解説を読んでいきますと、活字の説明や印刷業者への言及などがあり、ああ、これは 古書の展示会ではなく 印刷について語ろうとしているのだな、 と気がつきました。 チラシの裏
この左のイタリア語の聖書ですが、版木の使い回しで1511年に出た聖書にも挿絵が流用されていることを二冊並べて展示して示していました。
他にも面白かったのは、 ダンテの『神曲』の 挿絵を サンドロ・ボッティチェリが描いたのだが それを銅版画(これは別の人の仕事)にするのに間に合わなかったらしく、 挿絵の部分が白いままのところがあったり、 また 異なった場面に同じ絵が使われている、というものの展示もありました。
以下もチラシ裏の写真
右上 島原もしくは 天草で 印刷されたものが ヴァチカンに保管されていたのです(日本には弾圧で殆ど残っていない)
キリシタン関係では 教皇パウロ5世からの励ましの手紙に対する奉答書(1621年)、というのもありました。
他に興味深かったのは ダンス・マカブルの挿絵 とか コスモグラフィアという天文・地理学の本に付録として 測量器具がつけられているもの。 まるで こどもの科学!
そうこうしているうちに 閉館五分前のアナウンス。 ナントカ ざっとみおわることができて、 ショップへ。
内容が地味なので 図録を買うかどうか迷った(3200円、 ちょっと高い!!)のですが 後で案外解説が役に立つことがあるので(それに入場料がタダでしたから、お礼の意味でも)買いました。
斜めにして撮ったのは作りが面白いからです。一見、箱入りかとおもったのですが、そうではなくて 上下(表・裏)に固い表紙がついていて背の部分は見返しと同じ紙を渡してあるのです。このためとても開きやすくなっています。
博物館のある トッパンビル
6時過ぎでも明るい。(実は到着したときの写真も帰りに撮ったのです)
疲れた足に飯田橋の駅までが遠かったです。 最後の駅前の陸橋が高いこと。 ふつうの倍あります。 家にたどり着いたのは8時少し前。
今日は 前回の図録もとりだして、前にblogに書いた 原田英代さんの シューベルト21番のCDを聴きながら ぼーっと過ごしました。
前回2002年のヴァチカン図書館展は 写本から印刷へ で 写本の部分が多く、図録監修、執筆が 辻佐保子さん。
改めてこの図録買っておいてよかった、 と しばし 楽しみました。
カルチャーでお話を何回か聴いた 安發先生 益田先生も執筆されていて、写本の絵についての美術史的説明があるのがいいです。今回の展示作品と同じものもいくつか載っていました。(全く記憶になくて、初めてみた、と思い込んでいた)
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